タゴール著
ベンガル語本『ギーターンジャリ』
111番
み名をほこらしく唱えないのを わがこころの主(*注)は知りたまう
わが唇はあなたのみ名にふさわしいだろうか。
みながあざけり笑うとき わたしはなやむ
あなたの名はわが声にそぐわないのかと。
あなたから遠いことを
わたしがいつも忘れないように、
名をたたえる歌のふりが露わになるのをおそれ
こころひそかに恥ずかしくてならない。
傲りのための偽りからすくいたまえ
恵みもて わが居場所にわたしをおきたまえ。
人びとの視線から遠ざけて
あなたの慈しみの眼差しをあたえよ。
わが祈りは慈しみをえるため
だれかれの家で名誉をうけるためではない
またもや罪をくりかえし
あなたを呼ぶ 塵ほこりの上にすわって。
E.B.S.R.鉄道(東ベンガル鉄道)車中にて
ベンガル暦1317年アシャル月22日
内山眞理子試訳
*「わがこころの主」は antaryami がつかわれています。
antaryami は、こころの内の指導者であり、感情を抑制し調整する精神です。