ベンガルのうた・内山眞理子 

内山眞理子の「ベンガルのうた」にようこそ。ここはエクタラ(歌びとバウルの一弦楽器)のひびく庭。どうぞ遊びにきてください。

タゴールについてメモ その5 矢代幸雄の記録

2015-03-21 | Weblog

 

矢代幸雄の『日本美術の恩人たち』より

 

「私は初めてタゴールさんが原家に到着した夏の夕方の光景を、今では美しい絵巻のように

思い出す。三溪園入口の紅蓮白蓮の咲き乱れた広い蓮池に沿うた道を、あの聖者のような、

背のすっきりと高い、清痩な姿、白髪まじりの長く巻いた美しい髪、その長髪と混じって頬を

覆うて垂れた長い鬚髯、そして物を奥まで見極めるような深い大きな眼、秀でた鼻、そういう

何ともいえない崇高な姿の偉丈夫タゴールさんは、三人の弟子達を従えて、しずしず進んで

来られた。まるで釈迦が佛弟子を従えて現れたようであった。・・・・・・」

 

注: 1916年、タゴールは初めて日本を訪れた。9月2日にアメリカヘ向けて出航するまでの約三か月間を日本に滞在した。

美術史家、矢代幸雄はこの時、東大を出て東京美術学校の講師になったばかり。タゴールと起居を共にし通訳をつとめた

 

 

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タゴールについてメモ その4 川端康成の記録

2015-03-21 | Weblog

 

川端康成のハワイ大学での公開講義『美の存在と発見』より

 

「わたくしはその年、まだ、旧い学校制度の中学生でしたが、この詩人のふさふさと長い髪、

長い口ひげ、長いあごひげ、そしてインド服をゆったりとまとって丈高く、目のかがやきの強く深い、

聖者のやうな風貌の写真が、大きく新聞に出たのを見て、今もおぼえてゐます。

白い髪は額の横にやはらかくひろがって流れ、もみあげの毛はあごひげのやうに長くのびて、

それが頬にも連なり生えて、あごひげに続いて、東洋古代の仙哲のやうな顔が、少年のわたくしに

印象を残したのでした。そして、タゴオルの詩文には、中学生にも読めるほどにやさしい英語のものも

ありましたので、わたくしは少し読んだものでした。」

 

タゴール初来日:1916年(大正5年)

 

 

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ギータ・アンジャリ 59番 いまこそ黙らせたまえ

2015-03-06 | Weblog

 

歌の捧げもの タゴール

ギータ・アンジャリ

59番

 

 

いまこそ 黙らせたまえ

あなたの多弁な詩人を。

その 心の笛をうばいとり

神秘の音色でかなでたまえ。

真夜中の深き調べに合わせて

笛の音を高らかにひびかせたまえ

その調べで

月も惑星も魅了せよ。

 

わがために

生に死にちらばるものすべてを

歌のながれで

あなたのみ足に集めさせよう。

……

 

ベンガル暦1316年チョイトロ月30日

 

抄訳

 

 

 

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ギータ・アンジャリ 58番 いのちがかれるとき

2015-03-06 | Weblog

 

タゴール

ギータ・アンジャリ

58番

 

 

いのちがかれるとき

慈しみの雨のなかに来たれ。

美が隠れて見えないとき

歌の甘露のなかに来たれ。

なすべき業(わざ)が四方(よも)に

たちふさがるなら、

声なき主よ、音なき、み足をふみ

心のふちに来たれ。

・・・・・・

 

ベンガル暦1316年チョイトロ月28日

抄訳

 

 

 

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ギータ・アンジャリ 57番 わたしを召したまえ

2015-03-05 | Weblog

 

歌の捧げもの タゴール

ギータ・アンジャリ

57番

 

 

いまこそ召したまえ、主よ、わたしを召したまえ。

いまこそ去ることなく-ー

心をとらえていてください。

あなたのいない過ぎ去りし時を

わたしはふりむいたりしない、

その日々は捨て去ろう。

いま 生(いのち)をあなたの光のなかにひらき

日ごと目ざめていよう。

・・・・・・

 

ベンガル暦1316年チョイトロ月28日

 

抄訳

 

 

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タゴールについてメモ その3: お隣の韓国でタゴールの訳書は?

2015-03-05 | Weblog

 

タゴールについてメモ その3: お隣の韓国でタゴールの訳書は?

『もっとほんとうのこと タゴール寓話と短編』の韓国語訳

 

もうかれこれ10年近く前の話だが、拙訳書『もっとほんとうのこと タゴール寓話と短編』を

韓国語訳で出版したいという申し出があった。韓国の大手の翻訳エージェントから来たものだった。

日本語の堪能なスタッフから丁寧な日本語のEメールをいただき、そこに

『もっとほんとうのこと』のすばらしさを讃える一文もあって、それはとても喜ばしいメールではあった。

だが、ベンガル語→日本語→韓国語という流れになる、そのことがわたしには善いと思えなかった。

もしかすると、あるいは、日本語と韓国語は語彙が基本的に似ていて、日本語→韓国語翻訳は、

比較的簡単にできるのかもしれなかったが、そのあたりの知識はわたしには皆無だった。

で、ベンガル語のできる韓国の方の名を伝えることで、この申し出はお断りした。

その後どうなったのだろう。翻訳書は出たのだろうか。

韓国へ行くことはめったにないけれど、もしチャンスがあれば、書店をまわってみたいなと思ったりする。

「タゴールの本がありますか? タゴールは読まれていますか」と韓国の本屋さんの店先で訊いてみたいのである。

 

 

 

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ギータ・アンジャリ 56番 あなたの王座より

2015-03-04 | Weblog

 

歌の捧げもの タゴール

ギータ・アンジャリ

56番

 

 

あなたの 王座より

あなたは降りてきた、

わが さびしき門べに

主よ あなたは立ちどまった。

ひとりすわり わたしは

わがために歌をうたっていた、

あなたの耳にその調べがとどき

あなたは降りてきた、

わが さびしき門べに

主よ あなたは立ちどまった。

・・・・・・

 

ベンガル暦1316年チョイトロ月17日

抄訳

 

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ギータ・アンジャリ 54番 香にみちる風に

2015-03-04 | Weblog

 

歌の捧げもの タゴール

ギータ・アンジャリ

54番

 

 

きょう 香にみちる風にわたしは

だれを さがして森から森へめぐるのか。

きょう きつく照りかえす蒼い空に

かなしき泣き声がするのはなぜか。

遠き地平線のかなた あわれみ深き歌が

わが思いに 業(わざ)にひびく――

わたしは胸ぬちでだれをもとめるのか

香にみちる風に。

・・・・・・

 

ボルプルにて

ベンガル暦1316年ファルグン月

抄訳

 

 

 

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ギータ・アンジャリ 53番 こうべを垂れさせよ

2015-03-04 | Weblog

 

歌の捧げもの タゴール

ギータ・アンジャリ

53番

 

 

垂れさせよ わが頭(こうべ)を垂れさせよ

あなたのみ足もとに、

心をとかし、いのちを浮かべよ

目のなみだに。

わたしはひとり高ぶりの

峰にいる、

岩の座を力のかぎり壊し砕けよ、

塵となるまで。

垂れさせよ、わが頭を垂れさせよ

あなたのみ足もとに。

・・・・・・

 

ベンガル暦1316年マグ月

抄訳

 

 

 

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ギータ・アンジャリ 52番 あなたはわが身

2015-03-03 | Weblog

 

タゴール

ギータ・アンジャリ

52番

 

 

あなたはわが身、わたしとともにいたまう、

この言(こと)をいわせたまえ いわせたまえ。

あなたのなかにわが生(よ)の喜びすべてがある、

この言をいわせたまえ いわせたまえ。

 

わたしに 優美な調べをさずけよ、

わが言葉を 甘美なものにせよ、

あなたはわが最愛のひと、この言を

いわせたまえ いわせたまえ。

・・・・・・

 

ベンガル暦1316年マグ月

 

抄訳

 

 

 

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