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日本国憲法 @森 達也

森達也と言えば1956年生まれの映画監督で、オウム真理教をあつかった「A」で有名な…程度の知識はあったが、実は、映画を見たこともなければ著作を読むのも初めて。
この本を手にしたきっかけも、たまたま見ていた図書館の新着図書の欄に出ていて、著者も前から関心があった森監督だったという次第。

森達也の仕事を知っている人には釈迦に説法だろうが、放送禁止歌や小人プロレスなどをテーマにしたドキュメンタリーなどが並んでいる。
そういった著者ゆえに構成も一風変っている。

第1章天皇
第2章戦争の放棄

第1章では、徹底して現行憲法の矛盾を突く。
憲法の最初の単語は? と聞かれて、私も思わず「前文」の出だしにある「日本国民は、正当に選挙された国会における…」の『日本国民』と思ったが実は×
正解は『朕』

天皇主権者とする旧憲法=大日本帝国憲法以来の「伝統」が、この「新」憲法の「公布文」に生きており、『朕』=天皇が裁可し交付したのが今の憲法と言う矛盾。

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第2章では戦争を巡る「左」「右」の軸のずれを暴く。

著者自身 本の中で述べているように、「いつからか左右の軸が、すっかりずれてしまっている。時代が右に大きく傾斜していることは事実だろう。だからポジションが変わらない人はどんどん左へ追いやられる」

かと思うと、「男たちの大和」を撮った東映の佐藤監督が、1946年第1次吉田内閣で憲法改正の論議をした際のこととして、紹介している挿話も興味深い。

曰く、戦後の共産党再建の立役者だった野坂参三が衆議院本会議で、憲法草案の9条を指して「侵略された国が自国を守るための戦争は正しいと思う」との趣旨で質問したのに対し、吉田茂は「近年の戦争の多くが国家防衛の名において行なわれたことは顕著なる事実であり、正当防衛や国家の防衛権にかかる戦争を認めるということは戦争を誘発する有害な考えである」と一蹴している。

共産党が「自衛のための戦争は正しい」として9条に疑義を示したことに、政権党が9条を護持するというパラドックスはさておき、記録によればこの首相の答弁に大きな拍手が響いたという。

第2次大戦を経験した世代は、「国を守る」ということが「戦争につながる」という意識をシッカリと持っていたことが感じられる。

自分の眼で 自分の頭で、シッカリと物事を見つめ 考えていかなければと考えさせられる好著。

2007年1月初版 太田出版
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