プロメテウスの政治経済コラム

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「ストップ貧困」 厚労省統計でも毎年80~90人が餓死 機能しない「生活保護」

2007-07-23 19:02:29 | 政治経済
小泉―安倍政権が進める新自由主義構造改革によって、日本社会は貧困層が拡大し、最後のセーフティネットである生活保護を要する状態にある人(要保護者)が増えている。本来は「生活困窮者の要保護者化防止」が国や自治体の責任であるが、雇用の規制緩和、低い最賃制、貧弱な社会保障制度によって、多くの生活困窮者が生み出され、ちょとした躓きで要保護者に転落している。このような事態を前にして、厚労省は生活保護「適正化」の名で、生活保護費の総額管理を指導している。
生活保護の窓口となる自治体の福祉事務所が、財政負担増を恐れて「要保護者の被保護者化防止(生活保護からの排除)」に躍起になったら、どうなるか。餓死が増えて当然である。構造改革によって、生活困窮者が生み出され、、機能しない「生活保護」によって、容易に餓死が誘発される構図である

餓死者は95年を境に急増する。前年まで20人台だったのが、95年に61人となり、以後毎年80~90人が餓死している。05年まで11年間の餓死者は867人にのぼる。餓死者の数の増加は、90年代後半からの構造改革の本格化と相関関係にある。財界と自民党政府は、85年の派遣法の成立、96年の改悪などと労働法制を改悪、一方で大規模リストラを繰り返し、非正規雇用が急増、95年に1000万人を超え、06年には1677万人と増え続けている。完全失業率も、それまで2%台だったのが95年には3%台になり06年には4・1%となっている。ところが、厚労省は、生活困窮者の最後のセーフティーネットである生活保護について申請拒否や追い出しなど排除策をとり、予算も削減して各自治体を指導した。この結果、生活保護を必要とする人のうち生活保護をとっているのは二割前後(捕捉率)との試算もあり、大半が最低生活水準以下の生活を余儀なくさせられている。財界と政府が一体となってすすめてきた雇用・賃金破壊と棄民政治が多くの人々を餓死に追いやっているのだ(「しんぶん赤旗」同上)。

北九州市小倉北区で、生活保護を「辞退」した男性が自宅で孤独死した。北九州市は、生活保護の申請の段階で、受け付けない“水際作戦”で有名であった。しかし、昨年門司区で、男性が餓死した事件で批判を受け、申請拒否が表立ってできなくなり、三ヶ月だけ期限を切って生活保護を認め、それ以後排除して、生活保護費抑制の数値目標を達成する“ヤミ北”を続けているのだ。違法を合法に見せかけるため「自立支援」、「就労指導」に名をかりて、本人から「辞退届」を出させていた。打ち切りは本人からの申し出だというのだ。しかし、男性は、「働けないのに働けといわれた」という趣旨を日記に書いている。『辞退届』で保護打ち切りをする“ヤミ北”の背景には、厚労省の「適正化の手引き」があることはいうまでもない(「しんぶん赤旗」7月12日)。

生活保護受給者は、構造改革の進展とともに、10年余り前から増え続けている。95年度には60万世帯だったが、05年度には1.7倍にあたる104万世帯にまで膨らんだ。人数で言えば150万人に近い。このまま構造改革を進めたら、要保護者はもっと増えるだろう。そのためには、生活困窮者を生まない社会経済政策が必要だ。
いまの日本は、社会全体が豊かになるなかで格差が広がっている「格差社会」が問題となっているのではない。職があっても貧乏(ワーキングプア)、ネットカフェ難民、介護難民、医療難民…。別に怠けているわけではない普通の人々が、構造的に生活困窮者に転落する貧困問題が核心なのだ。共産党が「ストップ貧困」といっているのは、「貧困をなくすという意味と、貧困に落ち込む不安をなくす――貧困の方だけでなく、いまは貧困ではないが、いつ落ち込むか分からないという不安をなくす社会をつくりたい。それらをすべて含めて、『ストップ貧困』という言葉にこめた」(志位委員長)のである(「しんぶん赤旗」7月20日)。

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