プロメテウスの政治経済コラム

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「チェルノブイリハート」 「フクシマハート」が心配だ カナダ医師会ジャーナルが日本政府を糾弾 

2011-12-25 20:35:19 | 政治経済

ドキュメンタリー映画「チェルノブイリ・ハート」を観た。86年4月26日に起こったチェルノブイリ原発事故から16年後に、マリアン・デレオ監督が周辺地域や病院を訪れた記録。2003年アカデミー短編ドキュメンタリー賞を受賞した。オスカーを受賞したバージョンに、5年後に再び原発周辺を訪れた記録を加え、デレオ監督が日本に向けて発信した最新のメッセージが挿入されていた。チェルノブイリ事故後、心臓に疾患のある子供の出生が目立ち始め、放射線による影響とみられた。変形した心臓が「チェルノブイリ・ハート」と呼ばれたことから、このタイトルが付けられた。主に心臓に穴が開くなどの症状があり、手術をしなければ子どもたちの多くは成人できないまま死亡してしまう。ベラルーシのゴメリ州の甲状腺がん発症率は、「事故後」の現在、1千倍に増加した。奇形児の出生率は「事故後」の現在、25倍に増加した。奇形児の様子は、劣化ウラン弾の影響と思われるイラク・ファルージャの病院の子どもたちとまったく同じである。フクシマでこんなことが起ってはならない。しかし、日本政府の対応を見ていると心配でたまらない。カナダ医師会ジャーナルは、「隠蔽の文化」と不十分な除染努力が「人倫にもとる」健康リスクをもたらしていると日本政府を激しく告発している(http://p.tl/7Ive)。

 

チェルノブイリ原発事故の影響で、生まれながらにして心臓に重度の障害がある子どものことを現地では「チェルノブイリ・ハート」と呼んでいる。病名は多くの場合、「心房中隔欠損症」とされ、映画では、心臓に2つの穴が開いている少女がたまたまアメリカ医師団によって手術を受けることができたケースが紹介されている。映画はまた、甲状腺治療で痛々しい首の傷跡ができ、声を出しづらいと訴えるベラルーシ・ミンスク市の子どもたちを映し出す。日本政府は、安定ヨウ素剤について、迅速な対応を一切取らなかった

「事故前」には存在しなかった遺棄乳児院の“ナンバーワン・ホーム”と呼ばれる施設が「事故後」につくられ、なかの様子が映し出された。まさに衝撃的である。重度の障害を抱え生まれて来る子どもたちが「事故後」に多発し、子どもたちが遺棄されるケースが多くなったため、こうした施設が必要になったのだという。映画は、脳が頭蓋骨に収まらない水頭症の少女、内臓がコブのようになって外に出ている姿など目を背けたくなる重度の障害を抱えた子どもたちの「いのち」の現実を映し出す。西谷文和さんや志葉玲さん、高遠菜穂子さんらから見せられたイラクの子どもたちの現実とまったく同じである。

旧ソ連邦のウクライナ、ベラルーシは事故後の追跡研究を十分に行い得る統計的整備を実行しなかった。その後のソ連崩壊による混乱がそれに拍車をかけた。だから、個々の症状に対して放射能の影響を特定することは難しいが、間違いなく因果関係はあるのだ

 

チェルノブイリと同じ世界最悪のレベル7となった福島原発事故。「チェルノブイリ・ハート」の現実は、五年後、十年後には「フクシマ・ハート」の現実となって立ち現れる可能性が高いと考えるのが自然だろう。非常に心配だ。広範囲の子どもたちの健康状態を長期に定期的に追跡でるような検診システムを国の責任で確立するべきだ。ところが、民主党政府はまったく出鱈目だ。

「カナダ医師会ジャーナル Canadian Medial Association Journal (CMAJ)」は告発する。

  • 日本政府は平気な顔をして嘘をついてきた
  • 日本政府は住民が十分に健康被害について判断できるような情報を出していない
  • 日本政府の対応は、チェルノブイリ事故でのソ連政府の対応にはるかに劣る
  • 一般公衆の年間被曝限度20ミリシーベルトは人倫にもとる、とんでもない基準で、こんなことを自国民に許した政府は過去数十年で世界にいない

1986年ウクライナのチェルノブイリ原子力発電所の事故後、「明確な目標値が定められ、年間5ミリシーベルト以上被曝すると予想される人々全員を、有無を言わせず避難させた」、とティルマン・ラフは説明する。被曝レベルが1ミリから5ミリシーベルトの地域では、放射性物質を体内に取り込むリスクを少なくするため、地元で作った食物の消費を禁止を含めた数々の方策が取られ、住民は移住するオプションを与えられた。被曝量が1ミリシーベルト以下の場所でも、監視が必要とされた。

それに引き換え、日本政府がやったのは人々に福島の農作物を買うように勧めるキャンペーンだった、とラフは付け加える。「(チェルノブイリでの)25年前の対応は、現在よりずっと技術的にも進歩しておらず、開かれた、民主的な状態ではなかったにもかかわらず、現在の日本で行われているものよりも公衆衛生の観点から見るとずっとはるかに責任を持った[信頼できる]対応だった。」


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