プロメテウスの政治経済コラム

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緊急経済対策  国民にとっては最悪の事態となりそうだ

2013-01-12 21:09:42 | 政治経済

安倍政権が総額10・3兆円の「緊急経済対策」を閣議決定した。大企業支援策を中心に、事業費の総額は20・2兆円。政府は「これまでと次元の異なるレベル」と意義を強調するが、過去の自民党政権下で実施した景気浮揚策をさらに膨らませただけである(「毎日」2013年01月12日 02時32分)。

社会保障・税一体改革関連法は消費税率を来年4月に8%、再来年10月に10%に引き上げるとした。8%への引き上げの可否は、今年4~6月期の経済指標が判断材料になるため、第一四半期のGDP数値嵩上げが財界、増税談合勢力にとって至上命題なのだ。「対策」によって、大手のゼネコンなど一部の大企業が儲け、大型公共事業で財政を悪化させ、国民は、そのつけを消費税の増税で尻拭いさせられるという最悪の事態となりそうだ。消費税増税が襲い掛かれば、価格に転嫁できない中小企業の倒産は激増、個人消費が冷え込んで税収も落ち、国民生活も財政も危機的な状態に陥る。「アベノミクス」の真実は、日本経済をここまで落ち込ませた自民党流のやり方を、何倍もの規模で繰り返そうとするものであって、それが破綻したときの国民生活への影響は計り知れないものがある。

国の財政支出をいわゆる「真水」だけでも10兆円余にするということは、GDP数値を間違いなく嵩上げする。なぜか。GDPとは、一定期間(通常1年間)に、一国内の生産活動によって新たに生み出された財・サービスの付加価値額の合計をいう。付加価値の合計額すなわちGDPは、一定期間に国内で生産された最終生産物の合計額に等しい。最終生産物とは総生産物から中間消費(企業が生産するために必要な原料、燃料、輸送サービス、用紙類、その他の財・サービス)を差し引いたものであり、家計、政府によって購入される消費財・サービスや企業などによって購入される設備投資(固定資本)などがある。このように需要面、つまり家計、企業、政府(及び輸出部門)といった需要者の支出によって購入される最終生産物からみたGDPは、国内総支出(GDE)とも呼ばれる。内閣府の四半期別GDP統計速報(QE)では、推計資料上の理由からGDEがGDPとして公表されている。政府部門の支出を10兆円も増やせば、国内総支出(GDE)が引き上げられるのは当たり前である。

これを「経済状況の好転」と早合点し、国民が浮かれて、与党が参議院でも多数を占めれば、衆議院の絶対多数とあわせて、やりたい放題ということになる。今秋には確実に消費税の引き上げが決定され、国民生活はどん底に突き落とされる。半年ほどは「効果」が出たように見えるアベノミクスは、国民生活により深刻な結果をもたらすだろう。

現在、「アベノミクス」を拠り所とする円安や株高が進んでいる。デフレ脱却を最優先課題とし大胆な金融緩和を求める安倍政権の前のめりの姿勢を手掛かりに投機筋が円売りや株買い投機を加速させているのだ。すでに日本資産を保有している海外勢にとって円安は保有資産の目減りを意味するが、これから買おうとしている場合には、円安はどんどん価格を下げてくれることになる。海外勢の日本株買いに沸くマーケットだが、「円安は日本の資産価格を押し下げ、海外勢にとって日本のバーゲンセールが始まったことを意味する」(東海東京証券のチーフエコノミスト、斎藤満氏)。輸出型企業にとって円安は恩恵だが、残りのものにとっては原油高、商品高などコスト増につながる。賃金が上がらず、物価が上昇すれば、国民生活は悪化する一方だ。円安になれば全ての問題が解決するというのは誤った確信である。
安倍政権では、金融政策に過剰とも言える期待が目立つ。しかし、名目金利がゼロ近辺にまで低下してすでに久しい。金融政策に景気を後押しする力がほとんどないことは、バブル崩壊以降の実績が証明する通りだ。金融政策は長い紐のようなもので、引っ張ってブレーキコントロールができても、押してアクセルをふかすことはできないのだ。

 「「しんぶん赤旗」2013年1月7日(月)より

「家計消費支出と消費者物価」の図に見る通り、デフレ脱却を実現するためには、国民の所得を増やすことが不可欠だ。家計消費支出が減少した翌年に、消費者物価指数がマイナスに転じていることから明らかなように、「デフレ」最大の要因は家計消費支出が減少していることである。企業が目先の利益のために労働者の賃金を減らすと、労働者の物を買う力が弱くなり、家計消費支出は減少する。値段を下げてでも売ろうと労働者の賃金をさらに下げると、物はいっそう売れなくなる。ところが「アベノミクス」と称される安倍首相の経済政策には、賃上げを進める政策がない。それどころか、緊急経済対策は、「世界で一番企業が活動しやすい国」を目指すことを明記し、「研究開発プロジェクト」や「国際競争力強化に資するインフラ整備」を推進し、さらにいっそう大企業を応援するという。国民にとっては、まさに踏んだり蹴ったり、最悪だ。


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