プロメテウスの政治経済コラム

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沖縄ジュゴン訴訟判決  大手マスコミが取り上げないもう一つの辺野古基地建設問題

2009-12-17 19:08:12 | 政治経済
米海兵隊キャンプ・シュワブ(沖縄県名護市辺野古)沿岸部での新基地建設は米国内法に違反し、日本政府が建設を強行しても、米国の司法当局が取り消し・差し止めの措置を講ずる可能性がある――実はこの問題は昨年の1月、日米の自然保護団体が米国防総省を相手に提訴していた「沖縄ジュゴン訴訟」で勝訴したときからわかっていた。辺野古の問題でアメリカとの関係が壊れそうだと騒ぎ立てる本土の大手マスコミは、なぜかこの問題を無視してきた。グリーンピース・ジャパン事務局長の星川淳さんは、「環境運動とか環境派の弁護士など取るに足らないという差別感があるとしたら、世界を知らなすぎる」と批判している

 名護市辺野古に生息する国の天然記念物ジュゴンの保護を求め、日米の環境保護団体が米国で起こした訴訟に関し、原告側の日本環境法律家連盟=名古屋市=の籠橋(かごはし)隆明弁護士は12月10日、より執行力の高い米国の種の保存法(ESA)に基づく訴訟を新たに提起するため検討を進めていることを明らかにした。提訴の検討は、籠橋弁護士が同日の東京・千代田区の日本外国特派員協会で講演した際に明らかにした。米文化財保護法(NHPA)に基づく「ジュゴン訴訟」の昨年1月の中間判決は、米国防総省に対し、米軍普天間飛行場の移設に伴うジュゴンへの影響調査実施を求め、原告側の事実上の勝訴となったが、籠橋弁護士らは「ESAという、さらに強力な執行力のある法律で新たな提訴をしていきたい」と話した(琉球新報2009年12月11日)。

 昨年1月の米文化財保護法(NHPA)に基づく「ジュゴン訴訟」の中間判決とは次のような内容である。
普天間飛行場の名護市辺野古への移設に反対している日米の自然保護団体が米国防総省を相手に提訴していた「沖縄ジュゴン訴訟」で米国のサンフランシスコ連邦地方裁判所は2008年1月24日、米国防総省がジュゴンへの影響などを評価・検討していないことは米国文化財保護法(NHPA)に違反しているという判決を下した(日本側も現在、「環境アセス」を行っているが、今年9月、沖縄防衛局のずさんな準備書に対し批判が相次ぎ、実質的にやり直しの意見が出ている)。
「ジュゴン訴訟」の籠橋弁護士によれば、①シュワブ沿岸部が米軍に提供された場合、米政府の排他的な管理下に入り、日本政府による建設工事は、米国の許可が必要となる②仮に米政府がジュゴン保護に考慮を払わずに許可を出した場合、カリフォルニア州連邦地裁は米政府に対して許可の取り消し、差し止めなどの措置を講じることができる、ということだ(「しんぶん赤旗」2009年12月17日)。

 日本の天然記念物に指定されているジュゴンはいま、絶滅の瀬戸際にある。07年8月、環境省は国内の生息個体数が50頭以下であるとして、絶滅の恐れのある野生生物を分類したレッドリストに新たに追加し、絶滅危惧種として最もランクが高いIAに分類している。04年には、タイのバンコクで開かれた世界自然保護会議で、普天間移設をめぐるジュゴンなどの希少野生生物保護が勧告されている。これほど国際的にも注目されているのに、日本政府には保護への真剣さが感じられない。知事意見で求められたジュゴンの複数年調査を1年で終了させ、防衛省は予備調査で、ジュゴンがえさ場に入り込む通路にビデオカメラやソナー(水中音探査)などの機材を置き、ジュゴンを辺野古沿岸に近づきにくくしておいて、「ジュゴンは辺野古には生息していない」と決め付けるありさまである。県環境影響評価審査会(津嘉山正光会長)は、「2、3年調査することでジュゴンの遊泳・生息域が幅広く把握できる。生物学の世界では、動物の行動域の調査結果を1年で出すことはあり得ない。データの信ぴょう性が問われる」批判し、改めて正確な複数年調査を要求している。

 星川淳さんによれば今月2日、国会議員会館で「沖縄ジュゴン訴訟」(英語では提訴当時の国防長官名を残してDugong vs Rumsfeld caseと呼ばれている)の現状報告があった。
「核心部分だけ要約すると、すでに米国内法(ジュゴンを天然記念物に含む米国文化財保護法)に照らして建設を違法とする第一審(連邦地裁)中間判決が言い渡されており、現在は最終判決待ち。米政府/米軍に関係者と協議を尽くすよう命令する強い判決文が出るのは必須らしい。ここは、国策調査捕鯨の闇を暴こうとすると検察から裁判所まで事実の隠蔽を図る日本とは違い、行政府と互角に渡り合う独立した米国司法の醍醐味である」(星川淳「辺野古の基地建設は不可能・不必要!?」2009年12月6日)。

 ジュゴン訴訟原告団は、この許可問題をいざというときのために温存していたそうだが、鳩山政権が米側の圧力に屈しかねない山場と見て、これを発表した、という。驚いたのは、これほど重要な発表を、沖縄の2紙以外、他のメディアがまったく報道しないことだ。そして、もう一つ沖縄以外(「しんぶん赤旗」を除いて)報道されない問題がある。沖縄からグアムに移転する米海兵隊の部隊編成の詳細を隠していることである。米国側は、沖縄に駐留する米海兵隊のすべての主要部隊、普天間飛行場のヘリコプター部隊も含めてグアムに移転する計画を進めている。何のための辺野古新基地か?! 世論操作に騙されてはいけない
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2 コメント

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御礼 (K.I)
2010-01-14 09:52:47
有用な情報を提供していただき、ありがとうございます。
既に排他的管理下にある (MS)
2010-05-18 07:34:47
キャンプシュワブの沿岸部は、キャンプシュワブ水域として既に米軍の排他的管理下にあります。この点で「しんぶん赤旗」の記事は正確さを欠くものとなっています。

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