プロメテウスの政治経済コラム

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改憲手続き法案   改憲突破のための非民主的で不公正な内容

2007-03-05 20:32:30 | 政治経済
安倍首相開き直りの背景には、全自民党議員の51%が改憲・翼賛右翼組織の日本会議と連携する日本会議国会議員懇談会に所属するという危険な現実がある。自民党の中川秀直幹事長は2月28日の会合のあいさつで、党内に改憲国民運動推進本部を新たに設置し、4月に大集会を開く計画を明らかにし、それまでに改憲手続き法案の成立を期す考えを示した。国民の中で一向に盛り上がらない改憲機運に業を煮やし、改憲国民大運動をブチ上げようというわけだ。これに対抗する「九条の会」の運動高揚がますます期待される。

改憲手続き法案は、改憲の国民投票のやり方や国会の発議の方法を決め、改憲に具体的に足を踏み出そうとするもの、端的に言えば、日本を海外で戦争する国につくり変える「憲法九条破壊を準備する法律」である。
憲法九条改定について、自民党は「新憲法草案」で、平和憲法の要である戦力の不保持、交戦権否認を定めた九条二項を削除し、自衛軍の保持と海外での武力行使を可能にする規定を明確に示した。公明党の新運動方針は、「加憲」の中身として「自衛隊の法的認知」、「平和への貢献」の名による海外派兵を打ち出した。民主党も「憲法提言」で「制約された自衛権」、武力行使を含む国連多国籍軍への参加を主張している。このように改憲勢力はいずれも、すべて明確に、九条破壊に狙いを定めた改憲の方向を示している。
改憲手続き法案は九条改憲とまさに地続きなのだ。
自公与党と民主党は、実務者レベルでは改憲手続き法案の「修正方向」で大筋で合意している。ただ民主党は、このまま審議を進めると「法案を選挙前に成立させ安倍首相に花をもたせること」になると逡巡しているだけだ。

改憲派にとっては、改憲手続き法案はハードルが低ければ低いほど都合がよい。「必勝不敗」の仕掛けでなければならないのだ。改憲手続き法案は今の国会情勢の下では、自ずから非民主的で不公正な内容とならざるをえない。

「必勝不敗」の仕掛けのひとつは改憲手続き法案には最低投票率の制度がないことである。憲法改正には有権者の何割の賛成が必要か国民的討議が必要だ。このままだと、40%の投票率で過半数ということは2割台の「賛成」で憲法が改定される危険がある。最高法規の憲法改定にしては、国民の意思があまりにも軽んじられていることにならないか。デンマークでは、憲法改正には「過半数の賛成」に加えて、有権者の40%以上の賛成という歯止めをかけている。

憲法を変えるかどうかを国民が決めるためには、個々の改正点について、賛成、反対いろんな情報に接して、自由に意見表明してその意思が結果に正確に反映されることが必要である。ところが改憲手続き法案は、護憲運動の中核を占めるであろう「国民投票運動」に対する重大な制限を持ち込んでいる。約400万の公務員と約130万人の教員にたいして「その地位を利用して国民投票運動をすることができない」というのだ。先生が教室で「平和憲法の値打ち」を語ったり、憲法学者が「憲法改正の問題点」を講演したら、どうなるのか。改憲派にとって都合の悪いインテリが憲法について話すこと、行動することのすべてが「運動」とみなされ、「地位利用」が乱用されるおそれが十分にある。

市民の国民投票運動には重大な規制を加えながら、一方で資金力に優れる改憲派の宣伝――有料CMは自由放任である。新聞もテレビも広告料がきわめて高く一般市民は近づけない。マスメディアが改憲賛成一色になる危険性が十分に予想されるのだ。改憲手続き法案は、改憲へのハードルを引き下げようとしたためほかにもいろいろ問題点だらけである。
世論調査でも改憲手続き法案の今国会成立を求める声は少数である。構造改革で疲弊し貧困化した人々の生活と精神を立て直すことこそいま政治が取り組むべき課題なのだ。

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