プロメテウスの政治経済コラム

プロメテウスは人間存在について深く洞察し、最高神ゼウスに逆らってまで人間に生きる知恵と技能を授けました。

オバマ大統領 アフガン増派を命令  和平に背を向ける米新大統領

2009-02-19 18:48:36 | 政治経済
オバマ米大統領は17日、アフガニスタンへの約1万7千人の増派を命令した。海兵隊8千人、陸軍4千人、補給部隊5千人を今春後半から夏の半ばにかけて派兵する。オバマ大統領は、経済面や軍事外交面で失敗した前ブッシュ政権の一国覇権主義から脱却することを意味する「変化(チェンジ)」という標語を掲げて当選した。しかしすでに、いくつかの点で、ブッシュ政権の悪しき政策を継承しており、意外と「変化」に乏しい、人々を失望させる政権になるのかも知れない。とりわけアメリカを盟主とし、日本を従える「日米同盟」 の強化や中東和平政策は、世界の平和の潮流に真っ向から背を向けるものである。

“オバマ米新政権は中国重視に傾いて日本を軽視するのではないか”―。一時期、日本国内で流布した「ジャパン・パッシング(通過)」論はうそのようだった。クリントン米国務長官は16日から18日までの外交日程を精力的にこなし、次の訪問国インドネシアへ向かった。初外遊先として日本を選び、24日の日米首脳会談という「サプライズ」まで実現。麻生太郎首相は、オバマ大統領からホワイトハウスに招待された最初の外国首脳となった。就任前から軍事力に加え外交を中心とした「スマートパワー」を強調し、ブッシュ前政権の軍事偏重路線との違いを打ち出したクリントン氏だったが、今回の訪日から読み取れるのは、たとえ自民党政権が崩壊しても、ブッシュ政権時代に異常に強化された日米同盟を今後も維持し、さらに強化を図るという米国の強い意思であった。アメリカを盟主とし、日本を従える「日米同盟重視」の姿勢は、歴代米政権と何ら変わらない

アフガニスタンに米軍を増派することを命令したオバマ大統領は、声明の中で増派に踏み切った理由として、「アフガン、パキスタンの状況は迅速な行動が求められている。イスラム原理主義勢力タリバンはアフガンで復活し、国際テロ組織アルカーイダはパキスタンとの国境沿いから武装勢力を支援し、米国に脅威を与えている」と説明した。大統領は声明で同盟国に貢献を要求していく方針も強調した。今後北大西洋条約機構(NATO)加盟国をはじめ各国に一層の貢献を求めるとみられる。日本に対しても、医療、経済、教育など非軍事の分野や軍の後方支援を求めてくるのだろう。
アフガニスタンの治安は悪化の一方をたどっており、オバマ大統領の増派作戦が事態の改善につながる保証はない。民間人の犠牲は急増しており、世論調査によるとアフガン国民の間で、外国駐留軍の増派を支持する人は18%にとどまっている(「しんぶん赤旗」2009年2月19日)。
国連アフガニスタン支援派遣団(UNAMA)は17日、2008年にアフガンでの武力紛争で死亡した民間人が07年の1523人から約40%増えて2118人に達したとする年次報告書を公表した。2001年の米軍の侵攻以来の最悪の記録である。アフガン治安軍や駐留外国軍の軍事行動による死者は828人と全体の39%を占めた。07年の629人から31%の増加。うち64%の552人が空爆によるもので、民間人死者全体の26%に当たる(「しんぶん赤旗」同上)。
2月15日は、ソ連のアフガニスタン完全撤退から20年である。ソ連のアフガン侵攻は約10年に及んだ。総兵力60万人以上を投入したが、結局勝つことはできなかった。アフガン侵攻はソ連社会に断絶と国力の衰退をもたらし、結果としてソ連崩壊を早める役割を果たした。かつてのアフガンを知るソ連の元兵士の間では、かの地で復活したイスラム原理主義勢力タリバンの掃討作戦を進める米国に対し、「米国はアフガンで勝利することはできない。ソ連の教訓を学ぶべきだ」といった声がもっぱらである。そのアフガンでの「テロとの戦い」を、オバマ米政権は最重要課題のひとつに挙げ、夏までに約1万7千人を増派するというのだ。ブッシュ政権とどこが違うというのか!

昨年末から今年初めにかけて、米国とイスラエルによるパレスチナ・ガザ侵攻の残虐行為が繰り返されている間、オバマは黙り込んでいた。1月22日、正式に大統領に就任したとき、一応「イスラレル人とパレスチナ人の間に、またイスラレルとアラブの隣人たちの間に、永続的な平和が訪れることを積極的に、強く、求めていく。それが、わが政権の政策だ」と述べ、平和的解決に対する熱心な姿勢を示した。しかしオバマは今後の政策を明白に示さず、ある特定の呼びかけをした。「今こそアラブ諸国は、その約束にもとづいた行動をとるべきだろう。つまりアッバース議長とファイヤド首相が率いる、パレスチナの政府を支援するべきだ。過激主義には立ち向かうべきだ」アッバースとファイヤドしか認めないオバマの主張はなにを意味するか。選挙で選ばれたパレスチナの政府、ハマスを無視するオバマの主張は、パレスチナの和平を拒み続ける従来の米国の姿勢と変わらない。米国の主張する極端な条件に従うものでない限り、和平は認められないとうのだ。米国とイスラエルが何十年にもわたり、世界から孤立しているパレスチナの和平問題でもオバマの「変化(チェンジ)」は見られない。

最新の画像もっと見る

コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。