プロメテウスの政治経済コラム

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空自が軍事裁判所の研究   目立つ自衛隊の発言力強化の動き

2008-05-13 19:00:26 | 政治経済
調達業者との癒着や漁船追突事故など不祥事が絶えない防衛省改革論議で自衛隊の発言力を増大させる議論が突出してすすんでいる。「自衛隊の憲法上の位置づけの明確化」を前提に、自衛隊の発言力をつよめるというものだ。「しんぶん赤旗」が独自入手した内部資料では、空自隊内で自衛隊裁判所制度の導入を研究していることがわかった。憲法改定を待たないで憲法秩序を空洞化させる動きが国民の知らないところで着々とすすんでいる。憲法を守り、広げ、生かす世論や運動をもう一回りも二回りも大きくすることが求められている

自民党の防衛省改革小委員会がまとめ、福田康夫首相に提出した「提言・防衛省改革」は、防衛省・自衛官出身者が首相秘書官になるとしている。首相に直接、軍事的進言を行うというのだ。憲法の平和原則や国際政治、外交関係などをふまえるべき首相に軍事的進言を行うというのだから、日本国憲法のもとでの国家のあり方と根本的に異なる。自衛官を国会説明員にするともいっている。制服の自衛官を答弁席に立たそうというものだ。自衛隊が政治の表舞台に参加し、政治に関与することに道を開くものだ。
自衛隊の発言力強化策は、政府が「専守防衛」も放棄して、防衛「庁」を「省」に昇格させ、「国際平和協力活動」(=米軍支援活動)と称して海外派兵の恒久化をめざしていることと軌を一にするものだ(「しんぶん赤旗」5月12日)。

名古屋高裁でイラク派兵の違憲判決をうけた航空自衛隊が、憲法の平和原則ではなく“軍の論理”を優先させる「自衛隊版軍事裁判所」設置の研究に着手していることが、12日までに「しんぶん赤旗」が独自に入手した内部資料でわかった「自衛隊裁判所の設置」構想は、航空自衛隊幕僚監部法務課が部内向けに発行している論文誌(非公開)の『法翼』(二十三号・二〇〇四年)に掲載された論文(「日本国憲法下における自衛隊裁判所制度の導入と可能性」」で具体的に検討されている(「しんぶん赤旗」5月13日)。

わが国では、自衛隊は軍と認められていないことから、軍事裁判所(軍法会議)はない。軍は武装集団であり、戦時には通常の倫理規範に反する行為(即ち破壊や人員の殺傷)が職務上要求されるという特殊性ゆえに、軍人の行動全般を軍の論理で規制する必要がある。一方、軍人だけではなく民間人に対しても、戦力を保持するために、軍紀の妨げになる行為を「固有の価値観」に照らして裁く必要があった。そこで生まれたのが、特別裁判所である軍法会議である。

法の支配・法治主義を徹底し、例外を認めないため、現憲法76条2項は、「特別裁判所」を禁止している。「愛媛丸」事件で急浮上した米潜水艦の艦長は、軍法会議で裁かれ、除隊処分を受けた。一方、軍法会議のない自衛隊の潜水艦「なだしお」と「第1富士丸」の衝突事故では、艦長・船長とも刑法の業務上過失致死傷、業務上過失往来妨害罪で起訴され、艦長は禁錮2年6カ月(執行猶予4年)に処せられた。
軍事裁判所ができれば、軍人の公務執行中の(あるいは公務を装った)行為は、軍法に照らし、軍事裁判所で裁判されることになる。軍人を裁くのは一般の法廷ではなく、“軍の論理”が優先する軍事法廷だというわけである

旧軍の軍法会議や自衛隊法に詳しい内藤功弁護士は次のように指摘する「自衛隊裁判所構想は改憲による軍法会議設置、軍刑法制定までのいわばつなぎ的な措置と言える。しかし自衛隊が内部でこうした研究に着手していることは見過ごせない。改憲で自衛隊を軍隊にするためには軍刑法、軍事裁判所(軍法会議)が欠かせない。自衛隊をいつでも海外派兵できる恒久法の流れとも重なる危険な動きだ」(「しんぶん赤旗」同上)。
自民党新憲法草案は76条3で”軍事裁判所を設置する”としている。憲法9条を空洞化する自衛隊の動きを軽くみることはできない。
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