プロメテウスの政治経済コラム

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米オバマ政権が始動  「変革」の深度を決めるのは米国民と世界の世論と運動 

2009-01-22 19:01:15 | 政治経済
オバマ米大統領は20日に就任式を終え、「変化」を求める米国民や世界の期待を受けていよいよ新政権がスタートした。オバマを大統領に押し上げたのは、史上最悪のブッシュ政権のチェンジ(変革)であった。貧困と格差が広がる新自由主義、戦争、医療保険がその焦点であった。アメリカの新自由主義の政治や一国覇権主義がどう変化するかを世界が注視している。アメリカ独占資本が支配する二大政党制のもとでオバマ政権がどこまで「変革」を成し遂げるかは、今後の米国民と世界の世論と運動にかかっている。

オバマ米大統領は21日、早速、国内景気対策やイラク駐留米軍の早期撤退の推進に向け、経済チームや安全保障関係閣僚らとの会合を開いた。新政権の高官がCNNに語ったところでは、大統領は22日、〈1〉グアンタナモの施設を1年以内に閉鎖〈2〉拷問の禁止〈3〉テロ容疑者拘束に関する政策見直し--を指示する三つの大統領令に署名する方針だ(「読売」1月22日11時56分配信)。
財務長官に指名されているティモシー・ガイトナー氏は、上院財政委員会の指名承認公聴会で証言し、景気対策について、数週間以内に包括案が示されるとの見通しを示した。オバマ政権の経済顧問は民主党主導の議会と8250億ドルの景気刺激策について協議している(「ロイター」1月22日11時39分配信)。

カタールの衛星テレビ・アルジャジーラの政治評論家マルワン・ビシャラ氏は、オバマ氏が就任演説で「イスラム世界に対し互いの利益と尊重に基づいた新しい道を模索する」と述べたことは、ブッシュ前米大統領の中東政策との相違を米国民に確信させるものであったと語った。一方、レバノンで活動する中東問題専門家のロバート・フィスク氏は、オバマ氏がパレスチナ問題や最近のイスラエルのガザ攻撃にふれなかったことを「不十分」と指摘。「中東域内の人々は、『オバマ氏はこの数日間、テレビを見ていなかったのか?』と疑問に思うことだろう」と述べた(「しんぶん赤旗」2009年1月22日)。

オバマ米新大統領に対し、中南米諸国は、対キューバ経済封鎖の解除や多国間主義の尊重などを求めている。アルゼンチンのフェルナンデス大統領は20日、訪問先のキューバで、「認めたくない人もいるかもしれないが、今では世界は決定的に変わっている」と語り、米国による対キューバ経済封鎖の解除を要求。ベネズエラのチャベス大統領は20日、カラカスで演説し、「だれも米国の新大統領に幻想を持たないように」と警告。大統領が交代しても「アメリカ帝国」には変わりないと強調。「オバマ新大統領が、新しい見方で民主主義を尊重し、中南米で進んでいる変革に向き合うことを望む」と語った(「しんぶん赤旗」同上)。

英国フィナンシャル・タイムズ20日付は、米新政権の経済対策について欧州諸国の期待と要求を分析。景気刺激策で米国の景気後退に歯止めをかけ、欧州経済を引っ張ってほしいとする一方、金融規制改革での協力を要求している。フランスやドイツは、ヘッジファンドの規制やタックスヘイブン(租税回避地)の制限などに米国が同意・参加することを期待している。欧州諸国はまた、オバマ政権に気候変動対策に本腰を入れて取り組むことを期待している(「しんぶん赤旗」同上)。

中国人民日報は13日付に「中・米協力は世界平和を促進する」との論評を掲げ、「地球規模の問題に対応する上で中・米のグローバルな関係が日増しに積極的役割を果たしている。問題が難しいほど中・米協力が必要だ」と強調。胡錦濤国家主席は12日、訪中したカーター元米大統領に述べる形で、「新世紀のグローバルな挑戦への共同対処」を米国に呼びかけた。楊潔篪(ようけつち)外相は共産党理論誌『求是』に寄せた論文で、対テロ、大量破壊兵器の不拡散、金融危機対策で米中協力を高く評価する一方、「両国は社会制度が違うことを認識しなければならない」と米側にクギを刺している(「しんぶん赤旗」同上)。

アメリカの中流以下層の国民の最大の関心事は、よく知られているように医療保険制度である。失業者や低所得者は、病院にかかることとその後の生活破綻の不安で毎日を過ごしている。オバマ政権が保険独占資本の抵抗を抑えて、どこまで国民皆保険制度を志向できるかどうかは、新自由主義手直しの最大の試金石である
外交面で、オバマ大統領がやるべきことは、ブッシュ前大統領が失墜させた国際的信用を取り戻すことである。オバマ大統領はこれを具体的な行動で示さなければならない。ヒラリー・クリントン国務長官はイラン強硬派である。オバマ自身、アフガン介入強化を強調している。駐日大使に内定しているジョセフ・ナイは、ほかでもなく日米同盟の再編=新ガイドライン体制の立役者である。

米国を盟主とする先進国の多国籍企業が、軍事力による市場秩序の維持を政治に求めることを自動的にやめることはない。オバマ政権がどこまで「変革」を成し遂げ、反自由主義型の世界を形成できるかは、今後の米国民と世界の世論と運動にかかっているのだ

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