プロメテウスの政治経済コラム

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敦賀1号機 保安院が廃炉計画から一転「運転継続」認可 「原子力立国」は狂っていないか

2009-09-04 21:07:57 | 政治経済
経済産業省原子力安全・保安院は9月3日、原子力委員会に対し、来年3月に運転開始から40年になる日本原子力発電敦賀原発1号機(福井県敦賀市)の運転継続を認める旨報告した。寿命が30年程度といわれていた原発で40年を超えて運転が認められたのは、日本で初めてである(「しんぶん赤旗」2009年9月4日)。原発の危険性の最大の問題点は、原子炉の中に装荷されているエネルギー量があまりにも大きくかつ放射能という危険な性質であり、大事故の被害がはかり知れないということである。原発利用の評価基準は、電力会社の経済性以前に危険性を事前に回避するものでなければならない。政府の原子力計画(2006年5月)は、「原子力発電を、安全の確保を大前提に核燃料サイクルを含め着実に推進していくことは、エネルギー安全保障の確立と地球環境問題との一体的な解決の要であり、我が国エネルギー政策の基軸をなす課題」というが、「安全の確保を大前提に・・」の常套句は単なるお題目となっていないか。「安全の確保を大前提に」の中身を問い直すべきときだ。

敦賀原発1号機(出力35万7000kW)は、1970年3月に運転を開始した、現在稼働中の原発としては最も古い原発である。81年4月に放射能漏れ事故を起こしていたことが発覚し、その後も老朽化に伴ってさまざまなトラブルが発生した。運転開始から30年を迎えた2000年に老朽化対策を実施したとして運転を継続。日本原電は02年に、1号機を来年末で廃炉にし、新たに出力153万8000kWの超大型原発2基を新設する計画を発表していた。ところが、新設が計画どおり進まないため、1号機の運転を継続する方針を決めたのだ。老朽化した原発が、どこでどのようなトラブルを発生させるかは、まったく未知の世界である。

今後数年のうちに運転開始から40年を迎える原発は全国各地にあり、老朽化・耐震補強と廃炉が核燃料サイクル問題とならんで、原発が抱える大問題となりつつある。
そんな中で2007年7月に新潟県中越沖地震が発生し、東電柏崎刈羽原発で放射能漏れ事故が発生した。この震災事故後、さすがに原子力安全委員会も従来のように、「原発は絶対安全」とは言わなくなった。想定外の未知の事故の可能性を否定できなくなったのだ。
最近では、8月11日に起きた駿河湾を震源とする地震によって、浜岡原発(静岡県御前崎市)では、燃料プール水の放射能濃度の上昇、制御棒駆動装置の故障、約20センチメートルの地盤隆起など、50件を超す異常が確認された。

柏崎刈羽原発の事故が明らかにしたことは、日本の原発の耐震設計が、いかに実際とかけ離れた心もとないものかということである。中越沖地震を引き起こした活断層は、原発からわずか9Kmの近さであったが、この断層で発生する地震の揺れは耐震設計では想定外となっていた。地震計が記録した揺れの加速度は2000ガルを超えていた。これは、設計震度の数倍にもなる猛烈なものである。浜岡原発5号機の一部でも、設計時の想定を上回る揺れを観測している。浜岡原発は、いつ起きてもおかしくないといわれる東海地震の震源域の真ん中に位置している。
活断層はかつて地殻が破壊された場所で周りよりも弱いため再び壊れて地震を引き起こす可能性が高い場所である。しかし、地殻が壊れる場所がすでに判明している活断層だけという保証はまったくない。日本中どこで大地震が発生しても不思議はないのだ。40年前に日本で原発をはじめて建設しようとしたときの耐震設計は、今日の地震学の水準からみれば極めてずさんなものであったが、そのまま現在に至っているのである

40年間超運転して老朽化した原子力発電所を解体して廃炉にするのも簡単ではない。一般のビルのように、爆破して解体とはいかない。放射線をたっぷり浴びたプラントを解体するには大変な時間と費用を要する。イギリスの試算例ではセラフィールド再生処理施設やウィンズケール原発など26基分で405億ポンド(約8兆円)もかかる。解体費用のほか、運転中に出た放射性廃棄物の処理費、使用済み燃料の搬出、汚染土壌の整地など数十年の時間と莫大な費用を要するのだ。

日本では、毎年4千数百億円の原子力関係予算が支出されている。1kWhあたり37銭負担する電源開発促進税が主な財源である。日本国民は電気を使用することで知らず知らずのうちに原発推進の費用を負担していることになる。
よく言われるように、原発立地地域は、交付金、寄付金、補助金など原発マネーの甘い罠に汚染されている。しかし、想定外の事故が発生したら金ではすまない。
原発推進の膨大な予算を、安全で再生可能なエネルギー源の開発・普及にこそ回すべきだろう。

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