プロメテウスの政治経済コラム

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宇宙基本法(仮称) 日本も宇宙の軍事利用に道

2006-05-07 19:10:16 | 政治経済
自民党の宇宙開発特別委員会(小野晋也委員長)は、「宇宙基本法」(仮称)を議員立法で成立させることを目指し、連休明けから本格的な法案化作業を始めます。新法は、宇宙開発を平和目的に限定してきた国会決議の無力化がねらいで、アメリカの宇宙支配戦略への対応や宇宙の軍事利用に道を開くものです。

日本経団連は2004年6月「宇宙開発利用の早期再開と着実な推進を望む」と題する意見書を発表しました。これを受けて政府の総合科学技術会議(議長・小泉首相)は、04年9月に「我が国における宇宙開発利用の基本戦略」を発表、「平和利用のあり方について」各国の状況を念頭に「議論する必要がある」と、検討することを打ち出しました。「平和利用」といへば、国際的には、日本のような「非軍事」ではなく、「非侵略」であり、「防衛目的」の宇宙開発は進めるべきだという財界の要望を受け入れたかっこうです。

戦後の宇宙空間の開発は、空域に関する定義がなされないまま、覇権を巡る対立を反映して、米ソ両国によって競うように進められました。米ソ両国は、宇宙空間の軍事的重要性に着目し、この空間の開発は国際秩序のリーダーシップを獲得する上で不可欠のものとして、長距離の戦略ミサイル、軍事用の人工衛星や打ち上げロケットの開発にしのぎを削りました。
このような宇宙開発の進展に呼応して、従来の航空法とは異なる「宇宙法」の整備が必要となり、この宇宙法は、国際法の特殊な一分野として、整備されていくことになりました。
1966年12月「月その他の天体を含む宇宙空間の探査及び利用における国家活動を律する原則に関する条約」、通称「宇宙条約」が国連総会で採択されました(翌年10月10日発効)。この条約草案審議に際して宇宙空間の「平和的利用」の解釈を巡って米ソ間に争いがみられたが、「非侵略的利用」を意味するというアメリカの解釈(偵察衛星など自衛の範囲の軍事利用は可能とする解釈)が国際的に一般化しました。

日本では、宇宙の平和利用原則について、国会が1969年に決議。当時の科学技術庁長官がこれを「非軍事を指す」と国会答弁し、宇宙開発事業団法にも盛り込まれました。しかし85年2月、政府は「利用が一般化している衛星」については、「自衛隊による利用が認められる」との統一見解をだしました。後に「一般化理論」といわれる見解で、情報収集衛星(軍事偵察衛星)の打ち上げ(03年)の拡大解釈に使われてきましたが、一般に使われていない軍事用高解像度の衛星などはなお制限されると解釈されています。

宙開発特別委員会小委員会は、国際的には「非侵略」で「防衛目的」の宇宙利用は可能と解釈されているとして、新法は「自衛権の範囲内」での軍事利用を認める方針です。また、国防を含めた国家戦略が必要として宇宙戦略会議を内閣に設置、宇宙開発を推進・総括する特命大臣を設けることを確認しました。
新法が成立すれば「非軍事」で縛られていた自衛隊による衛星の打ち上げや、高性能の偵察衛星、弾道ミサイル探知の早期警戒衛星の保有に道を開くことになります。

宇宙が軍事利用されると、どんな障害がでてくるのか
平和利用は公開が原則なのに対し、軍事情報収集衛星では逆に公開しないのが原則になってきます。衛星の軌道や解像度は極秘。公表しなければ意味のない防災目的の衛星写真でさえ非公開となります。
情報衛星関係予算はこれまででも、約五千億円にのぼります。無駄な公共事業の典型といわれる諫早湾干拓事業の総事業費は二千五百億円。その二倍にのぼる巨額な金額です。しかし、使途の細目は国会議員にさえ非公開です。

宇宙の軍事利用は、中国やテロの脅威論をあおり「安心・安全」の安全保障のためだといって秘密の程度も予算金額も止めどなく膨らむ危険があります。政・官・財の癒着で宇宙開発予算が食い物にされる可能性が大いにあります。
さらに、日本はアメリカが推進する「ミサイル防衛戦略」に参加しています。「防衛目的」といったところで、宇宙空間を利用したアメリカ先制攻撃戦略にいっそう組み入れられるだけです。



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