明日へのヒント by シキシマ博士

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「パンズ・ラビリンス」 現実から逃避しないために

2007年10月13日 02時44分43秒 | 明日のための映画
パンズ・ラビリンス
この手の映画が大好きな私は、大絶賛したい映画ですが、一般的にはどうなのでしょう?
かなりグロテスクなシーンもあるので、全ての人に認められはしないでしょうね。
カテゴリーで分けるとしたら、ファンタジーに振り分けられてしまうのでしょうけれど、実際に描かれているのは生々しい現実世界そのものです。
ファンタジーを取り入れたのは、現実世界をより鮮明に描くための手段と思ったほうが良いでしょう。

1944年。フランコ政権下のスペイン。
内戦で父を亡くした少女オフェリア(イバナ・バケロ)は、身重の母と共に山奥へと向かう。
そこには、母の再婚相手であるフランス軍大尉・ビダルが駐屯していた。
ここでは、内戦終結後もまだ、ファシズムに反抗するゲリラとの戦いが続いている。
独裁主義で残忍なビダル大尉をどうしても父として認められず、オフェリアは一人苦しむ。
そんな彼女の前に妖精が現れ、森の中の迷宮へといざなう。
そこには迷宮の守護神・パンが待っていた。
パンは、オフェリアが本当は、地下に在る魔法の王国の王女なのだと告げる。
そして、3つの試練を乗り越えたならば、王国へ帰還することができるのだと…。
(監督:ギレルモ・デル・トロ 制作:スペイン/メキシコ 119分)


いわゆるファンタジー映画とあきらかに違うのは、現実逃避のための物語ではないことです。
少女が迷宮の世界へ降りて行ったのは、そうせざるをえないほど現実世界が間違っていたからです。
少女のとった行動は逃避ではなく、ファシズムによって奪われた本来の自分が住む世界を取り戻すためにほかなりません。

ただ単に、少女が現実逃避のために作り出した虚構の世界であるとするのならば、もっと都合の良い世界を思い描けた筈です。
なのに彼女は2つ目の試練でミスを犯します。なぜでしょう?

「世の中は残酷。人生はおとぎ話じゃない」
母に聞かされたこの言葉を実感するからでしょう。
少女が虚構の世界に求めたのは、自分にとって都合の良い世界で楽をすることでは決して無く、ただ、耐えるだけの価値がある正当な試練なのだと思います。

だから、正当な試練に耐えた彼女だけが、最後に本来の世界へ行くことが出来るのです。
そして同時に、彼女が自らの命と引き換えに守った赤子に、この国を本来の世界へ導く希望は託されます。
この赤子の父親をビダル大尉に設定したのも凄いですね。
未来はファシズムの血を引いているということです。
少女が越えたのと同じように、未来の人たちにも越えなければならない試練があるということでしょう。

家政婦や医者などの登場人物の配置も見事で、この時代の人々の本心を伺い知ることができた気がします。

誰にでも受け入れられる作品ではないかも知れませんが、私にとっては文句無しの傑作です!


この作品をきっかけに、ギレルモ・デル・トロ監督の他の作品にも興味を持たれた方、こちらもどうぞ!

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4 コメント

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こんばんは。 (ジョー)
2007-10-13 23:10:04
ここまで社会派の映画だとは思いませんでした。
こういう形でファンタジー映画の技術が生かされていくと映画の可能性がひろがっていいですね。
>ジョーさん (シキシマ博士)
2007-10-14 21:49:06
本当にそうですね。
ファンタジーによって、現実の恐ろしさがよりリアルに伝わってきました。
ファンタジー映画でこれほどの問題提起をした作品を、私は他に知りません。
見本となる前例がほとんどないところから、いきなりこれだけの傑作を生み出したというだけでも絶賛に値すると思います。
観てから数日経つのに、まだ余韻が続いている感じです。
ファシズム (kimion20002000)
2007-10-15 02:01:29
TBありがとう。
ファシズムを少年の一形態のように表現していましたね。ビダル大尉と命を絶った父親との関係の中に、エディプスコンプレックスを暗示しており、そこからファシズムの潜在面を言い当てているような気がしました。
>kimion20002000さん (シキシマ博士)
2007-10-17 00:35:46
いやー、kimion20002000さんのレビュー読ませてもらいましたが、凄い分析ですね。
読み応えがありました。
「う~ん、なるほど」と思わずうなってしまいます。
もう一度観て、いろいろと確認したくなりました。

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