全ての準備が完全に整ったのは、午後四時前だった。
管内ロボットに超高圧ホースを接続し、工事用分電盤から給電していたロボットシステムの電源も、発電機に接続し直した。
水処理ユニットの電源接続も完了し、全ての足並みが揃った。
水管橋内では、足場用単管パイプを二本、水平に突っ張り、そこにナイロンスリングとレバーロックを引っ掛け、管内ロボットを繋ぎ止める。
水管橋から奥に七メートルは、若干の下り勾配になっているので、ロボットが下り坂を暴走しない為の処置だ。
私は再びハスキーを始動させると、発電機のエンジンも始動し、大きな200V用のブレーカーを押し上げ、バキューム装置の起動スイッチを押した。
「シュォオオオオオン」
バキューム装置は一瞬静かに起動すると、一気にブロアーを回し始めた。
「ギュォオオオオオン!バシュっ、バシュっ!」
バキューム装置の吸い込みが開始され、オレンジ色のサクションホースがほんの少しだけ縮むような動きを見せる。
本来、バキューム装置はロボットのコントローラーで遠隔操作が可能なのだが、さすがに200メートルものケーブルを作成するのは不経済なので、今回は手動による起動方式で作業を行うことにしていた。
私は管内を小走りで200メートル走ると、小磯とハルに声を掛けた。
「全て準備オッケーです、さあ、行きましょう!」
「がははははは、さあ、やってみますか!」
「ひょひょひょひょ、本当に動くのよぉ?」
F社の大澤、三浦、協成の前山、W運輸機工の佐野、渋井、田代が、じっとベンツマーク型のロボットを見つめている。
小磯は慎重にスタート位置を決めると、ロボットの中央部にあるレバーを倒した。
「パコパコパコパコ」
若干、脱力する様な音を出しながら、エアシリンダーが伸張し始め、ベンツマークの頂点に逆さ向きに付いている、ハイドロキャット-Jを押し上げていく。
エアシリンダーの両脚に押し上げられ、ハイドロキャットは、管内面の天井部に、その吸盤を押し当てた。
「ブレイカーを閉鎖して下さい」
前山が小磯にアドバイスをする。
「ブレイカー?ああ、このボールバルブね」
小磯がφ75のボールバルブを閉鎖すると、
「キュぼぉうううう」
という音を出しながら、吸盤はぴったりと管内面に吸着した。
「おお、あの吸盤、結構行けそうですね」
私は大澤に声を掛けた。
「ええ、やっぱり補強用のワイヤーを無くした物を採用して、正解でしたね」
今回のキャット用の吸盤は、特注で作った吸着性の高い吸盤を使っていた。
「じゃ、ノズルを回しまーす!」
小磯がコントローラーのノズル回転ボタンを押し込む。
「木田君、ジェットを出すよ!」
小磯はジェット噴射用のボタンを押し、続いて前進用のレバーを倒した。
「きゅぅうういいいいん!」
管内ロボットは、機械音を出しながらモーターを駆動させ、ウレタン製のタイヤが動き出し、ベンツマークはゆっくりと回転を始めた。
ハイドロキャットのボディに付いている小さなマフラーは、
「シュシュシュシュ」
という音を出しながら、圧縮エアーの残圧を吹き出している。
全員の視線が、ロボットの吸盤が移動した場所に集中する。
「お!一応剥がれてるね!」
ハルが叫ぶ。
「いや、それ、剥離残しがありませんか?」
「あるなぁ、ちょっとパラメーターが大きいかなぁ」
小磯はコントローラーの小さなレバーを操作し、表示されている『周波数』を変更した。
「これでどうだ?」
管内の巨大ベンツマークは、円周上を進むスピードがゆっくりになり、ハイドロキャットの吸盤がが移動した部分は、綺麗に塗装が剥がれていた。
いよいよA用水K水管橋の塗装剥離工事が始まった。
管内ロボットに超高圧ホースを接続し、工事用分電盤から給電していたロボットシステムの電源も、発電機に接続し直した。
水処理ユニットの電源接続も完了し、全ての足並みが揃った。
水管橋内では、足場用単管パイプを二本、水平に突っ張り、そこにナイロンスリングとレバーロックを引っ掛け、管内ロボットを繋ぎ止める。
水管橋から奥に七メートルは、若干の下り勾配になっているので、ロボットが下り坂を暴走しない為の処置だ。
私は再びハスキーを始動させると、発電機のエンジンも始動し、大きな200V用のブレーカーを押し上げ、バキューム装置の起動スイッチを押した。
「シュォオオオオオン」
バキューム装置は一瞬静かに起動すると、一気にブロアーを回し始めた。
「ギュォオオオオオン!バシュっ、バシュっ!」
バキューム装置の吸い込みが開始され、オレンジ色のサクションホースがほんの少しだけ縮むような動きを見せる。
本来、バキューム装置はロボットのコントローラーで遠隔操作が可能なのだが、さすがに200メートルものケーブルを作成するのは不経済なので、今回は手動による起動方式で作業を行うことにしていた。
私は管内を小走りで200メートル走ると、小磯とハルに声を掛けた。
「全て準備オッケーです、さあ、行きましょう!」
「がははははは、さあ、やってみますか!」
「ひょひょひょひょ、本当に動くのよぉ?」
F社の大澤、三浦、協成の前山、W運輸機工の佐野、渋井、田代が、じっとベンツマーク型のロボットを見つめている。
小磯は慎重にスタート位置を決めると、ロボットの中央部にあるレバーを倒した。
「パコパコパコパコ」
若干、脱力する様な音を出しながら、エアシリンダーが伸張し始め、ベンツマークの頂点に逆さ向きに付いている、ハイドロキャット-Jを押し上げていく。
エアシリンダーの両脚に押し上げられ、ハイドロキャットは、管内面の天井部に、その吸盤を押し当てた。
「ブレイカーを閉鎖して下さい」
前山が小磯にアドバイスをする。
「ブレイカー?ああ、このボールバルブね」
小磯がφ75のボールバルブを閉鎖すると、
「キュぼぉうううう」
という音を出しながら、吸盤はぴったりと管内面に吸着した。
「おお、あの吸盤、結構行けそうですね」
私は大澤に声を掛けた。
「ええ、やっぱり補強用のワイヤーを無くした物を採用して、正解でしたね」
今回のキャット用の吸盤は、特注で作った吸着性の高い吸盤を使っていた。
「じゃ、ノズルを回しまーす!」
小磯がコントローラーのノズル回転ボタンを押し込む。
「木田君、ジェットを出すよ!」
小磯はジェット噴射用のボタンを押し、続いて前進用のレバーを倒した。
「きゅぅうういいいいん!」
管内ロボットは、機械音を出しながらモーターを駆動させ、ウレタン製のタイヤが動き出し、ベンツマークはゆっくりと回転を始めた。
ハイドロキャットのボディに付いている小さなマフラーは、
「シュシュシュシュ」
という音を出しながら、圧縮エアーの残圧を吹き出している。
全員の視線が、ロボットの吸盤が移動した場所に集中する。
「お!一応剥がれてるね!」
ハルが叫ぶ。
「いや、それ、剥離残しがありませんか?」
「あるなぁ、ちょっとパラメーターが大きいかなぁ」
小磯はコントローラーの小さなレバーを操作し、表示されている『周波数』を変更した。
「これでどうだ?」
管内の巨大ベンツマークは、円周上を進むスピードがゆっくりになり、ハイドロキャットの吸盤がが移動した部分は、綺麗に塗装が剥がれていた。
いよいよA用水K水管橋の塗装剥離工事が始まった。
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