フォークリフトの運転席でイライラする私に、ハルが声を掛けて来た。
「木田さん、代わってもらったら?」
ハルの後ろには心配そうな顔をしたS社の職人がおり、じっと私の作業が終わるのを待っている。どうやら彼らもフォークリフトが必要らしい。そして待っているS社の職人は、S社の中では一番フォークリフトの運転が上手い人間だ。
「いや、ハルさん、自分たちの機械くらい自分たちでやらなきゃダメでしょ!」
私は完全に意地になっており、そろそろ理性を失いかけていた。
「だぁああああああああ!頭にキタぁあああああああ!」
私はついに頭に血が上り、無謀な最終手段に打って出た。
「ブロォおおおおん、シュゴぉおおおおおおおおお!」
フォークリフトの爪を上昇させ、バキューム装置の巨体を、一気に手摺を越える高さまで上昇させる。
「どうするんですか?」
堂本が運転席の脇から訊いて来る。
「ん?もう面倒くさくなったんだよ」
「え…?」
堂本がポカンとして私を見る。
「シュコぉおおおおお!」
私はさらに右方向にバキューム装置をサイドシフトさせた。
「き、木田さん、海に出てますよぉ!」
堂本が大声で叫ぶ。
「うわぁあああ!?」
須藤も大声を出す。
「出したんだよ!」
私は大声で返答する。
「うひゃひゃひゃ、ハミ出しちゃってんよぉ!」
ハルが爆笑している。
自重3tのバキューム装置は、底面がフライトデッキ(飛行甲板)の手摺を越える高さまで持ち上げられ、さらに右側が手摺の外にはみ出した状態になっている。手摺の外側は青い空、その約20m下にはドックの海面が広がり、さえぎる物は何も無い。おまけにこの機械、フォークの爪の差込口が無いので、実質は爪の上にチョコンと載っているだけなのだ。
「ヨッシー、正男ちゃん、マジで見てろよ!」
私はそう言うと、ゆっくりとバックを開始した。
「ピーッ、ピーッ、ピーッ、ピーッ!」
慎重にフォークリフトの車体をバックさせる。
ハンドルを握る手からジットリと汗が出る。
かなり高さのある運転席からは、手摺の外側の広い海原が良く見えている。このバキューム装置が今、何かの間違いで海側に落下すれば、一体どうなるのだろう。
「船体に当たって、それからドックの海中に沈むんだろうなぁ…、で、サルベージか…。船体の修理費だけでも億の金になったりしてな…」
一瞬そんな考えが頭を過ぎる。
「あとチョイです、ハイ変わったぁ!」
須藤が大声で叫ぶ。
私はゆっくりとブレーキを踏むと、慎重にサイドシフトレバーを倒し、バキューム装置を海側から船体の中に戻す。
「正男ちゃん!」
「こっちは大丈夫です!」
「ヨッシー!」
「こっちも大丈夫です!」
私はレバーを倒すとそろそろとバキューム装置を地上30cmほどの高さに戻し、そして息を吐いた。
「ふぅうううう…」
勢いでやったとは言え、二度とやりたくない作業だと私は思った。
さらに十五分後、全ての機材を作業位置に設置すると、私はS社の職人にフォークリフトの運転席を譲ったのだった。
「木田さん、代わってもらったら?」
ハルの後ろには心配そうな顔をしたS社の職人がおり、じっと私の作業が終わるのを待っている。どうやら彼らもフォークリフトが必要らしい。そして待っているS社の職人は、S社の中では一番フォークリフトの運転が上手い人間だ。
「いや、ハルさん、自分たちの機械くらい自分たちでやらなきゃダメでしょ!」
私は完全に意地になっており、そろそろ理性を失いかけていた。
「だぁああああああああ!頭にキタぁあああああああ!」
私はついに頭に血が上り、無謀な最終手段に打って出た。
「ブロォおおおおん、シュゴぉおおおおおおおおお!」
フォークリフトの爪を上昇させ、バキューム装置の巨体を、一気に手摺を越える高さまで上昇させる。
「どうするんですか?」
堂本が運転席の脇から訊いて来る。
「ん?もう面倒くさくなったんだよ」
「え…?」
堂本がポカンとして私を見る。
「シュコぉおおおおお!」
私はさらに右方向にバキューム装置をサイドシフトさせた。
「き、木田さん、海に出てますよぉ!」
堂本が大声で叫ぶ。
「うわぁあああ!?」
須藤も大声を出す。
「出したんだよ!」
私は大声で返答する。
「うひゃひゃひゃ、ハミ出しちゃってんよぉ!」
ハルが爆笑している。
自重3tのバキューム装置は、底面がフライトデッキ(飛行甲板)の手摺を越える高さまで持ち上げられ、さらに右側が手摺の外にはみ出した状態になっている。手摺の外側は青い空、その約20m下にはドックの海面が広がり、さえぎる物は何も無い。おまけにこの機械、フォークの爪の差込口が無いので、実質は爪の上にチョコンと載っているだけなのだ。
「ヨッシー、正男ちゃん、マジで見てろよ!」
私はそう言うと、ゆっくりとバックを開始した。
「ピーッ、ピーッ、ピーッ、ピーッ!」
慎重にフォークリフトの車体をバックさせる。
ハンドルを握る手からジットリと汗が出る。
かなり高さのある運転席からは、手摺の外側の広い海原が良く見えている。このバキューム装置が今、何かの間違いで海側に落下すれば、一体どうなるのだろう。
「船体に当たって、それからドックの海中に沈むんだろうなぁ…、で、サルベージか…。船体の修理費だけでも億の金になったりしてな…」
一瞬そんな考えが頭を過ぎる。
「あとチョイです、ハイ変わったぁ!」
須藤が大声で叫ぶ。
私はゆっくりとブレーキを踏むと、慎重にサイドシフトレバーを倒し、バキューム装置を海側から船体の中に戻す。
「正男ちゃん!」
「こっちは大丈夫です!」
「ヨッシー!」
「こっちも大丈夫です!」
私はレバーを倒すとそろそろとバキューム装置を地上30cmほどの高さに戻し、そして息を吐いた。
「ふぅうううう…」
勢いでやったとは言え、二度とやりたくない作業だと私は思った。
さらに十五分後、全ての機材を作業位置に設置すると、私はS社の職人にフォークリフトの運転席を譲ったのだった。
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