キティホーク最初の仕事は、レーダードーム部スポンソン(張り出し部)の上げ裏(上方に在る構造物の裏側)からだった。
「木田さぁん、これ、全部?」
ハルが上げ裏を見て、考え込んでいる。
「ええ、全部ですね」
そう答えながら、私も心の中で、
「全部は無理だよねぇ…」
と思っていた。上げ裏には、補強用のIビーム(アルファベットの『I』型の鋼材)が放射状にびっしりと入っている。
「この『I』の上面の所なんか、しっかりと錆が乗ってるけど、『5ジェット』じゃほとんど取れないよ?」
「うーん、『亀頭』ノズルでも使って見ます?」
「カメノズルねぇ…」
亀頭(カメ)ノズルとは、その外観が正に亀の頭にそっくりで、我々が勝手にそう呼んでいるノズルの事だ。ちなみにF社では常識的に「広角ノズル」と呼ばれている。
通常の5ジェットノズルの射角が五十度程度なのに対して、亀頭ノズルは九十度の射角で造られていて、5ジェットでは剥がし難い、コーナー部などに有効なノズルと言える。ただ、射角が広い分、扱いに注意をしないと、自分の体にジェットが接触する危険性があり、使い辛いノズルでもあった。
「あれ、平面で使うと剥離スピードが落ちるんだよね」
ハルは亀頭ノズルを使うことは、あまり気乗りしない様だった。
「じゃ、5ジェットでやります?」
「んー、ま、とりあえずカメちゃんでやってみっかね」
ハルはそういうと、私が用意した亀頭ノズルを持って、足場を下りて行った。
「木田君、ショートガンも用意しといてよ」
小礒がコンテナの作業台まで来て、私にガンを持つジェスチャーをした。
「ええ?もしかしてあのIビームの細かい部分を、『スーパーショートガン』でやるんですか?」
「そうだよ、普通のガンじゃあんな所は撃てないよ」
「それはそうですけど…」
私は躊躇した。確かにスーパーショートガンなら、かなり狭い部分でもノズルを突っ込むことが出来るが、危険度はどう見ても三倍増だ。
「小磯さん、ま、確かにあのガンは試験的に作りましたけど、お世辞にも安全度は低いと思いますけどねぇ」
「がははは、大丈夫だよ、俺だってまだ死にたく無いからね。ショートガンは俺しか使わないから、兎に角用意してよ」
「…分かりました」
幸い、今回の現場から、部品だけは四本目のガンを作成出来るだけのストックを密かに用意していたのだが、思わぬ所でそれが役に立つことになった。
私は、F社から買っておいた新品の部品を組み上げると、小磯と作った特性カバーを装着し、四本目のガンとなる『R社製スーパーショートガン』を完成させた。
これにより、小磯以外の三人で主な塗装を剥がし、細部の錆を小礒がスーパーショートガンで剥がすというローテーションが出来上がった。
「木田さぁん、これ、全部?」
ハルが上げ裏を見て、考え込んでいる。
「ええ、全部ですね」
そう答えながら、私も心の中で、
「全部は無理だよねぇ…」
と思っていた。上げ裏には、補強用のIビーム(アルファベットの『I』型の鋼材)が放射状にびっしりと入っている。
「この『I』の上面の所なんか、しっかりと錆が乗ってるけど、『5ジェット』じゃほとんど取れないよ?」
「うーん、『亀頭』ノズルでも使って見ます?」
「カメノズルねぇ…」
亀頭(カメ)ノズルとは、その外観が正に亀の頭にそっくりで、我々が勝手にそう呼んでいるノズルの事だ。ちなみにF社では常識的に「広角ノズル」と呼ばれている。
通常の5ジェットノズルの射角が五十度程度なのに対して、亀頭ノズルは九十度の射角で造られていて、5ジェットでは剥がし難い、コーナー部などに有効なノズルと言える。ただ、射角が広い分、扱いに注意をしないと、自分の体にジェットが接触する危険性があり、使い辛いノズルでもあった。
「あれ、平面で使うと剥離スピードが落ちるんだよね」
ハルは亀頭ノズルを使うことは、あまり気乗りしない様だった。
「じゃ、5ジェットでやります?」
「んー、ま、とりあえずカメちゃんでやってみっかね」
ハルはそういうと、私が用意した亀頭ノズルを持って、足場を下りて行った。
「木田君、ショートガンも用意しといてよ」
小礒がコンテナの作業台まで来て、私にガンを持つジェスチャーをした。
「ええ?もしかしてあのIビームの細かい部分を、『スーパーショートガン』でやるんですか?」
「そうだよ、普通のガンじゃあんな所は撃てないよ」
「それはそうですけど…」
私は躊躇した。確かにスーパーショートガンなら、かなり狭い部分でもノズルを突っ込むことが出来るが、危険度はどう見ても三倍増だ。
「小磯さん、ま、確かにあのガンは試験的に作りましたけど、お世辞にも安全度は低いと思いますけどねぇ」
「がははは、大丈夫だよ、俺だってまだ死にたく無いからね。ショートガンは俺しか使わないから、兎に角用意してよ」
「…分かりました」
幸い、今回の現場から、部品だけは四本目のガンを作成出来るだけのストックを密かに用意していたのだが、思わぬ所でそれが役に立つことになった。
私は、F社から買っておいた新品の部品を組み上げると、小磯と作った特性カバーを装着し、四本目のガンとなる『R社製スーパーショートガン』を完成させた。
これにより、小磯以外の三人で主な塗装を剥がし、細部の錆を小礒がスーパーショートガンで剥がすというローテーションが出来上がった。
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