どんぴ帳

チョモランマな内容

続・くみたてんちゅ(その11)

2010-04-25 22:58:33 | 組立人

 翌朝、どよんとした気分で目覚める。

 昨晩は鍋の終わり際に睡魔に襲われる有様だった。
 しかし今回の鍋には中華鍋奉行『ダン』の存在がなかったので、鍋の〆にしっかりと麺を投入して満足した記憶が残っている。
 もっとも新鍋奉行の赤城が汗にまみれた頭を掻きあげた両手で、麺を手づかみで入れるのだけは頂けなかったが…。

「うー、マジで身体が重いぞ…」
 ベッドから身体を起こすと体中の筋肉がパンパンに張っていて、悲鳴を上げている。
「運動不足とか、そういうレベルじゃないなこりゃ…」
 私は徐々に自分の身体の異変を認めるような気分になっていた。


朝から頻繁に表示されるNHKの画面
 色々と権利の制約があるらしく、音声のみで妄想を掻きたてて視聴するしかありません。


ホテルの朝食バイキング
 右の皿:ベーコン4枚と目玉焼き
 左の皿:サラミハム2枚、サラミ1枚、ソーセージ2本、豚足2つ、キャベツ炒め、春巻2本、プチトマト2個、キンカン3個
 左上の器:中華スープ
 右上の器:お粥にピータンとザーサイを投入
 中上のグラス:リンゴジュース

 非常に偏っています。圧倒的に肉類が多いのですが、自分の肉体がタンパク質を求めているみたいなので、素直に従います。
「食わなきゃ動けなくなる!」
 そんな言葉が頭をかすめて行きます。


今朝も発見
 高速道路掃除人…。真横をアウディが時速120km以上の速度で通過します。


ゴミ焼却
 他人が所有するであろう壁を、勝手に火で炙っています。

 この日、残りのパネルの設置作業に入った私は、思わぬ失態を犯します。

 それは天井パネルを設置していたお昼前のことでした。
「お、そろそろ昼飯か…」
 佐野が呟き、私は時計を見ました。
「もう12時か…」
 一瞬、集中力が切れかけます。
「よっしゃ、このパネルだけ入れるか!」
 佐野が天井クレーンでパネルをさらに吊り上げます。
「まだやるの!?」
 一瞬私はそう思いました。
「赤城ちゃん、コイツだけ入れちまうぞ!」
「ハイよ!」
 赤城は返事をして、私と一緒に機械の上でパネルの到着を待ち構えています。
「平行にしろよ、平行にすりゃあ下には落ちないからな!」
 佐野が指示を出します。
「ハイよぉ」
 赤城は返事をしながらも、なぜかパネルを斜めに下ろします。
「???」
 疑問に思いながらも赤城は本職なので、それに従います。
「なんでこんな危ない置き方をするんだ?佐野さんが言った平行って、俺の思ってる平行と違うのか?」
 私は集中力が切れかけた頭で考えます。目の前にはすでに二枚のパネルが入っていて、最後の三枚目を真ん中に落とし込むだけです。
 平行に置きさえすれば、たとえパネルが滑り落ちても、下に落下する事はあり得ません。しかし赤城は三枚目のパネルを見事に斜めに置いてしまいました。
「これって危なくない?」
 一体どうやってパネルを落とし込むつもりなのか、赤城からの指示を私はじっと待っていました。
「!」
 その時、いきなり赤城が無言のままパネルを動かし始めました。
「あっ!」
 私は条件反射的に手が出ました。
「パネルを平行にしなければ落下する!」
 そう思ったからでした。
「そっちはそのまま!」
 赤城が叫びますが、すでに手はパネルを押し出しています。
「ああっ!」
「うわっ!」
 現場に私と赤城の叫び声が響きます。
「ドドッ、ガガンっ!」

 無情にも重さ約20kgの天井パネルは、隙間から下へ落下しました。