活版印刷紀行

いまはほとんど姿を消した「活版印刷」ゆかりの地をゆっくり探訪したり、印刷がらみの話題を提供します。

AIが印刷技術のどこまで及ぶのか

2024-01-27 11:08:47 | 活版印刷のふるさと紀行

 大きな印刷会社には「出張校正室」があった時代があります。今のように著者のパソコン画面に印刷所から組まれたページが送られてきて、著者は自宅の書斎でゆうゆうと校正作業を進めるわけにはいかなかったのです。

 出版社別にズラリと校正室が並んで、印刷会社のその社の担当営業が、印刷現場で刷り上がった校正刷りを受け取ると出張校正室に駆け戻り「先生、次のゲラが出ました」といって、待機中の著者に手渡しして大急ぎで赤字を入れていただくのです。

 雑誌の場合が多かったと思いますが、刊行日の決まっている単行本の場合もありました。ヤル気まんまんの編集者や著名な作家大先生が相手ですから担当営業マンもお茶係のおばさんも大変でした。酔っ払った剣豪小説の大家のお相手に泣かされた新入社員もおりました。

 ところがどうでしょう。今やこの校正作業もその前の編集作業さえもAIが受け持ってくれるようになったのです。それどころか、生成AIかなんか私は知りませんが、その前の原稿作成や挿絵づくりまでやってくれるようになりつつあるというではありませんか。

 私が昨年、2023年に興味をもったもう一つがこのAIでした、印刷は長い間、人間の頭が、目が、手が介在しないと成り立たない産業でした。Chat  Gptなどにご厄介なる時代がこようとは思いませんでした。

 でも、まだ、入口です。製版や印刷や検査や配本過程まででどこまでAIとドッキングできるか私はそれを知りたいのです。

 

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社名から「印刷」をとる

2024-01-17 17:11:06 | 活版印刷のふるさと紀行

 昨年、私が興味を持ったことに二つがあります。

ひとつは社名から印刷をとったトッパンの入念な事前告知のコマーシャルでした。まさに大英断だと思います。大手印刷会社が印刷以外の領域に進出し始めたのは1960年代のはじめだったでしょうか。

社名から印刷を取らない大日本印刷の卒業生の私ですが、その当時「拡印刷」というスローガンで従来の印刷技術を骨子にした異領域への進出には目を見張るものがありました。テレビのブラウン管に使用するシャドーマスクを筆頭にフォトマスクなどマスクなど半導体部門やクレジットカードなどのカード部門から医療システムなど「もう、印刷会社ではないですね」といわれるほどでした。

DNPなどという別表記を考えて、田中一光さんにデザイン依頼をした思い出があります。市谷の外堀通りにDNPの斜めの看板を作ったのは1980年ごろだったと記憶しております。

 脱線しましたが、私は卒業生の一人として社名に「印刷」は残してほしいと思います。なぜなら、「印刷」にはあらゆる分野とかかわりを持ち、いわば「印刷文化」をもたらす歴史的役割をはたしてくれているからで、AIとむすびついてまだまだ新領域をもたらすに違いないときたいするからです。

 

 

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究めたい「印刷」と「文化」

2024-01-14 18:31:14 | 活版印刷のふるさと紀行

 日本で「封緘紙」、シールが包装によく使われたのは大正期から昭和の中頃だそうです。そういえば、私も子どものころ、お客様の持ってきてくださったお土産の包装をとくのに、シールをはがすのに苦闘して、母親に「もっと、丁寧に、ゆっくりと」といわれたものです。

 上ケ島さんによると正方形や長方形が主流だったシールが円や楕円系になったり、中身の商品の形になって色もカラーになったりしたのは型抜きや印刷の技術の進歩によるとされているのです。

 封緘紙、今ふうに言えばシールのような身近で、あまり人が気にしない印刷物の変化にめをとめられた上ケ島さんに敬意を表しますが、明治初期から今日まで「印刷技術」の向上がいろいろな分野で文化に貢献したいううなれば「印刷文化」に、今年はこのブログで目を向けたいと思います。

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正月の新聞から「シール」の話

2024-01-14 17:49:04 | Weblog

 2024年の幕開き。元旦に能登半島の大地震と津波と大火災。そして翌2日には羽田空港の大事故。なんとなく先行きが思いやられる年の初めでしたが、今年は少しマメにこのブログ《活版印刷紀行》と向き合うことにしました。どうぞ、よろしく、おねがいいたします。 

 さて、1月9日の日経新聞朝刊の文化欄、「封緘紙」のあせない魅力に大変興味を抱きました。封緘紙とは包装紙や袋などの閉じ口を留める小さなシール

のことです。執筆者の上ケ島オサムさんはこの「封緘紙」の蒐集歴20年、色やジャンル別にコレクションの数は1万枚に及ぶといいます。

 

 私がとくに興味を持ったのは上ケ島さんが文中で大正から昭和へ封緘紙のデザインや形、色などが大きく変わってきたのは印刷技術ほ発展-向上と深いかかわりがあるとかいておられる点でした。(以下は次回)

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