校正には、エピソードがつきものです。
神田錦町のある印刷会社の廊下でした。Yシャツの腕まくりをした紳士が、職長に校正刷りの束を押し付けるようにして頭をさげている光景にぶつかりました。
見るともなしに見ると引き出し線や吹き出し囲みのなかに、赤字が踊っている上にペタッと1万円札がはってあり、
「なんとか、あんばいよう差し替えてや」「ハアッ」というふたりの会話が耳に入りました。
しかも、次に、後ろ手に持っていた日本酒の一升ビンを職長に押しつけています。なにしろ、校了日にわれわれが口に出来るのは梅割りやブドウ割の焼酎がやっとでしたし、1万円札なんてめったに拝めないときでした。
活版印刷時代、「校正」で赤字が入ったところを訂正する「差し替え」作業は大変でした。編集者も真っ赤になった校正刷りを「要再校」などと書き入れてもどすときは、ある種のウシロメタサを感じたものです。
件の紳士がある「経済誌」の社主であり、主筆であることをあとで知りました。
神田錦町のある印刷会社の廊下でした。Yシャツの腕まくりをした紳士が、職長に校正刷りの束を押し付けるようにして頭をさげている光景にぶつかりました。
見るともなしに見ると引き出し線や吹き出し囲みのなかに、赤字が踊っている上にペタッと1万円札がはってあり、
「なんとか、あんばいよう差し替えてや」「ハアッ」というふたりの会話が耳に入りました。
しかも、次に、後ろ手に持っていた日本酒の一升ビンを職長に押しつけています。なにしろ、校了日にわれわれが口に出来るのは梅割りやブドウ割の焼酎がやっとでしたし、1万円札なんてめったに拝めないときでした。
活版印刷時代、「校正」で赤字が入ったところを訂正する「差し替え」作業は大変でした。編集者も真っ赤になった校正刷りを「要再校」などと書き入れてもどすときは、ある種のウシロメタサを感じたものです。
件の紳士がある「経済誌」の社主であり、主筆であることをあとで知りました。
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