オショロコマの森ブログ5

渓流の宝石オショロコマを軸に北海道の渓流魚たちと自然を美麗画像で紹介します、

米国で Non-native Fishes 移植放流でオショロコマ絶滅の危機

2014-03-03 18:21:01 | ニジマスによる被害
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米国で Non-native Fishes 移植放流でオショロコマ絶滅の危機

○指定外来魚A2ニジマス放流禁止、野生化ニジマス駆除。 その九。


ブルトラウトという魚をご存じでしょうか。ブルトラウト(Salvelinus confluentus )は北米大陸太平洋側( 米国、カナダ )の渓流に分布するオショロコマのそっくりさんといったイワナで、ドリーバーデンとも呼ばれ、北海道のオショロコマと同一種と考えられていました。1980年代からはオショロコマとは別種として扱われるようになっています。

基本的にでっかい魚釣りが好きなアメリカ人には、当初はほとんど注目されていなかったことは容易に想像できます。今は non-native fishes 移入による生態系破壊の犠牲者としての象徴的存在になっているようです。



Illustration by J.Tomalleri/US

たとえば、ワシントン州山岳部等の個体群はさしずめ北海道でいう河川残留型オショロコマとでもいうべきもので小型、北海道産オショロコマに大きさ外観がとても良く似ています。

この河川残留型個体群( Resident bull trout ; Resident mountain bull trout )は、北海道における河川残留型オショロコマ( Salvelinus malma )と極めてよく似た状況で、森林伐採、ダム建造などの生息環境の悪化、移植放流された移入種(ニジマス、カワマス、ブラウンなど ; non native fishes と表現されている。)との戦い( ニッチの争奪、捕食、交雑 など )に敗れるなどして、北米各地で生息数が激減、ないし消滅し、いまや絶滅危惧種とされています。

ワシントン州 Yakima川では特に移入種カワマスが源流域に至るまでオショロコマにとってかわった模様です。

私が調べた限りでは日本でとりわけ心配されているカワマスとの自然交雑F1のことは、ほとんど述べられておらず、もっぱら大型のカワマスが小型のブルトラウトを捕食するのが主たる原因のようです。北海道のニジマスとオショロコマの関係と酷似している印象をうけました。

ニジマス、カワマスは北米原産なので厳密には日本でいう外来魚とは、やや趣が違うが ブルトラウト(Resident bull trout)分布域にはもともと棲息せず、移植放流された場合は日本における外来魚放流と同じ振る舞いをすることになるが、ここではとりあえず移入種と呼んでおきます。我が国ではヤマトイワナ棲息水域にニッコウイワナ系養殖イワナを放流する場合など交雑による遺伝子攪乱が問題になっています。この場合、移植放流されるものを国内外来魚といった表現をされるようです。

米国ワシントン州では、ほぼ壊滅状態になったブルトラウト( Resident mountain bull trout )をなんとか復活させようとの取り組みをしているようですが、時すでに遅しで現実的には絶滅に近い状況のようです。

カリフォルニア州では1975年以降、ブルトラウトの記録がなく絶滅とされ、オレゴン州の個体群を移植しようとしましたが最終的に失敗しています。それでも、これらを復活させようとする努力は今も続けられているようです。

復活作戦としては巨費を投じての環境整備にかなり重きを置いているようですが supressin of non-native fishes も重要視しており、ブルトラウト壊滅の主役カワマス以外の外来魚駆除も当然ながら行われるようです。

このように、米国においてもブルトラウト河川残留型( Resident bull trout )が移植放流された移入種(ニジマス、カワマス、ブラウンなど)のために激減ないし消滅し、大きな問題となっている事実は、今現在の北海道でのニジマスとオショロコマの関係を考える上で特に参考にするべきと考えます。

米国との違いは、北海道ではいまだ多少のオショロコマが生き残っているためか、長年オショロコマを見てきた私たち以外は、まったく誰もこの異常事態に気づいていないことです。


かっての米国では、これまでの北海道のように、ひたすらでっかい魚を釣りたいばっかりに、行け行けどんどんで脳天気・無制限にニジマス・カワマスなどの移植放流を続けてきたところ、気がついたら、その辺にいくらでもいたはずの在来魚ブルトラウト(オショロコマ)やカットスロートが消えていたわけです。

今現在、北海道のオショロコマがニジマスのために同じような状況にあります。

貴重な在来種の棲息水域に侵入する恐れがあるところにニジマス等を放流することは、今の米国においてはとても信じられない悪行とされることは言うまでもありません。しかし、北海道ではいまだ、無配慮、無制限にそれが行われているのです。

米国では現在、消えてしまった、または激減した在来種の保護や復活に多額の予算を使い、とても苦労しているのが現状です。

北海道のオショロコマなどの在来魚がアメリカの二の舞にならないために、北海道環境局のニジマス対策は、いまや、まったなしの段階、北海道における生態系保護活動の歴史に残る正念場に入っていると言えます。

Resident bull trout とはやや趣が異なりますが、カナダの BC(ブリテッシュコロンビア州) , ユーコン準州、アルバータ州等に分布する個体群は 大型・獰猛 で知られています。米国のブログ写真等で大型ブルトラウトを、どや顔で抱えた写真をよく見ますが、その多くはこの個体群です。カナダアルバータ州では個体数が激減し、現在は保護対象魚にされているといいます。

BCでも個体数激減のため キャッチアンドリリース対象魚とされているようです。これら降海して汽水域、淡水域を行き来し、海から遡上してくる個体( Sea-run bull trout と呼ばれる)は40~60cm の大きさで大型化しやすく最大91cmの記録があるといいます。銀色に輝く魚体は知床の一部渓流でごく稀に釣れる大型遡上型オショロコマに良く似ています。

面白いもので、最近では放流魚などのデカトラウト釣りに飽きた米国のアングラーやフライフィッシャーたちの間で魚体の大きさにはこだわらず、もっぱら希少な在来種を狙う Native trout fishing といったジャンルが台頭してきている気配が感じられます。もちろん、この際、本格的なキャッチアンドリリースが徹底されています。

日本でも、そのうち偽自然のなかでのモンスター、デカニジマス釣りやブラウントラウト釣りに飽き、それら外来魚に、ある種の強い違和感を感じるようになってくれば( 釣り人が正気にもどれば )、次は本物の自然に強く憧れてゆくだろうことはごく一般的な成り行きとおもわれます。何しろ、人間はとにかく無い物ねだりですから。

私自身、無い物ねだりの権化みたいになって、世界中の辺境をまわってきました。しかし、年齢的なものか、本物の青い鳥は、ごく身近なところにいることを最近になってしみじみと実感しています。

北海道のアメマス(エゾイワナ)には各渓流毎に実に趣深い変異があります。離島のエゾイワナは迫力があります。さらにオショロコマの変異のもの凄さには、いつも驚かされます。真狩のアカハラオショロコマを釣ってみたいとか、渚滑川の虎虎オショロコマを撮影してみたいとか、遡上型銀ピカオショロコマを釣りたいとか、降海型オショロコマを釣ってみたいとか、北限や南限の希少オショロコマや、幻の根室半島のオショロコマを釣ってみたいとか、いまだ記録のなかった川の特殊な斑紋パターンのオショロコマを狙うといった Native trout fishing に憧れる時代がくるかも知れません。

私ごとですが、最近ではニジマスのいない渓流では、えもいわれぬ安らぎ、不思議な癒しの気分にひたれることに気づきました。

とりつかれたように、ひとしきりニジマス釣りに狂い、デカニジマス釣りを死ぬほど経験した結果、少しは正気にもどってきたのかも知れません。

最近ではデカニジマス釣りは、とても健全な自然の中での釣りとはいえないが、あくまで遊園地での刺激的なお遊びと自分に強く言い聞かせて割り切って楽しんでいます。

先日、そのような意味での遊園地代表、阿寒川でのニジマス釣りを You tube でみました。

釣り人たちは喜々として外来魚ニジマスを釣り上げますが、最も気にしていることは、このニジマスは native ??? か、それとも先ほど養魚場から持ってきて放流されたもの(成魚放流)かといった点でした。後者なら管理釣り場や釣り堀と同じで面白くないといったところでしょうか。

外来魚ニジマス一色の阿寒川にはもうひとつの外来種筆頭横綱ウチダザリガニが繁殖しています。阿寒川はもはやその美しい自然風景とは裏腹に、どうみても健全な自然環境とは言えません。本来の生態系は完全に破壊された川と言って良いでしょう。

釣り人たちが大きなウチダザリガニを発見して、喜び、興奮している様子も興味深く拝見させていただきましたが、ちょっと複雑な気持ちにもなってしまいました。

以前、茨城県の大きな管理釣り場を見学したとき、北海道と異なりニジマスが非常に軽々しく扱われているのに心底驚いたことがあります。みなさん、ニジマスがヒットしたことがわかるとチッと舌打ち、ぞんざいにリリース、イワナ(所謂養殖イワナですが)だと喜んでキープするといった感じでした。北海道でニジマスがもてはやされるのは、ひとえに本州と異なり野生化しているからです。一方、そのために在来種オショロコマなどに、いつのまにか甚大な被害がおよんでいるわけです。

ところで、北海道において、ここまでニジマスによる被害が明らかになった状況下では、

具体的には 1.ニジマス放流可能水域の設定、 2.ニジマス放流ライセンス制・報告制 しか スポーツフィシング?? としてのニジマス遊漁の生きる道はないと思われます。

もし、現在の北海道環境局の力量ではニジマス放流コントロール不可能、ひいては技術的にニジマス遊魚のコントロール不可能ということであれば、北海道各地に奇跡的に残った貴重な生態系を守るためには、当面、最もあんちょこな作戦、つまり放流完全禁止もやむを得ないと考えます。

また、ニジマス駆除に関しては、何度もくりかえしてきましたが、各河川の状況ごとに慎重な取り扱いをしてゆくのが現実的で賢明な方法と考えます。この期に及んでは、ブラウンと同じく、画一的な駆除は陳腐であり、意義も少ないことを、これも何度もの繰り返しになりますが再度述べておきたいと思います。

現実の姿をしっかり見据え、長期的な視野に立って、これまでのような人間中心の画一的魚資源管理から、放流されそれなりの生態系を確立した外来魚をも含めた 魚中心の資源管理へとシフトしてゆくことが日本に適した道なのかも知れません。

一方、死魚の山を築いてでも外来魚皆殺しが必要という理論的根拠があればそれもよしということになるかも知れませんが、渓流釣り師の私たちとしては心情的にやや辛いものがあります。


PS ; 上記の米国の状況に関する文章は、北海道での自分自身での観察記録等とは異なり、私が米国やカナダで現状を実際に見たわけではありません。関連資料も十分なものを調べる事ができないため、主にネット情報、その他を元に構成したもので、ごく微妙な認識違いなどはあるかもしれないことをお断りしておきます。興味のある方は resident bull trout で検索すると関連記事は沢山でてくるので、それらのおびただしい数のネット情報(英文)をご覧になって下さい。

今回、初めて北海道における放流ニジマスの被害につき知り、現実の状況をさらに知りたい方は、恐れ入りますがこのシリーズの始めから目を通していただければ幸いです。

また、オショロコマが、ニジマスに圧倒され、消えてゆく様子はこのあたりから順次、連続的に記事を見ていただければ、はっきりとした確信が得られるのではないかと思います。 是非 通読してみていただければ幸いです。



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