女性管制官がアメリカで医者になった場合ーアメリカンドリーム

アメリカでアメリカンドリームを達成するには?
マーティンもと子(旧姓多尾もと子)の場合は?

たかが怪我、されど怪我 その2

2010-07-12 07:13:03 | Weblog

28歳男性

大学生ですが 生活費を捻出するために 土日は工事現場に。

将来は MBAを取りたいと、日夜勉学に励んでいました。


ある日曜日、雨の中 ゴム長靴を履いて工事現場で働いていたところ、


「いて~! 踏んづけちゃったよ、まったく。」


彼は、錆び付いた太い釘をかなりの勢いで踏みつけた結果、歩けないほどの

刺創を作ってしまいました。

工事現場からERへ搬送されたこの男性は 新米の研修医によって診察されました。さっそくレントゲン室へ。


新米の研修医は 足の親指の根元が、かすかに骨折しているのを発見。

これは大発見とばかりに 患者には抗生物質(ケフレックス)を処方して 傷口を洗浄後、
底の固い術後用の特別な靴をはかせて 松葉杖でうちへ帰しました。

もちろん 2,3日後には整形外科で診てもらうようにとの指示もかかしませんでしたが。


その週に大切な試験を抱えていたこのまじめな大学生。

イタイイタイとは、思っていても試験勉強を続けて 指示された整形外科の予約もすっぽかしたくらいでした。


3日後、少し傷口が赤くなっていましたが 刺創ですから傷口は小さくて目立ちませんし 
骨折しているのだから痛いのが当たり前と思っていたそうです。


1ヵ月後、傷口の腫れがひどくなり 痛みでどうしようもなくなったこの大学生、

近くの整形外科に飛び込みました。


レントゲンを撮ると なんと、なんと、骨髄炎をおこしています。それもかなり広がっているのです。

このままでは 感染症が広がって大変なことになると判断され、、

すぐに入院、抗生物質も静脈からどんどん注入、しかし一向によくなりません。


そこで、手術をすることになったわけなんですが、な、なんと 釘を踏んだときに履いていた長靴のゴム底の一部が 手術中、傷口の奥深くに発見されたのです。


このゴムが、感染の原因だったんですね。

ゴム底の一部がこのような骨髄炎を起こす話は実はとても有名で 緑膿菌が原因となります。この緑膿菌は、とてもやっかいなバクテリアで 当初新米の先生に処方されたケフレックスでは、全然効かないんですよね。


こちらの標準的なケアとしては このような ゴム底靴を通しての刺創の場合は、


1 まず明るい照明の下 傷口をよく診る。

2 取り除ける異物はすべて取り除く

3 創の中を探査する目的で 細い棒や針で穴をつつかない。

  埋まっている異物(ゴム底の一部)がさらに奥に入ってしまう

  可能性あり。

4 予防の目的で抗生物質は使わない。

  (糖尿や免疫不全患者を除く。もちろん、

   骨折している場合も除く。)

5 見えない異物(ゴム底の一部)のために起こりうる感染症を

  いち早く見つけるためにきめの細かい

  フォローアップが必要となる。


ということになります。


それで、この患者さんの場合は残念なことに 骨髄炎から足の親指と中足骨の一部をなくすことになり、
慢性の痛みと不快感が残り、まともに歩けなくなってしまいました。


もちろんこの将来有望な大学生、訴訟をおこしました。


当初、陪審員は、920,000ドル(約1億円)を賠償することに決めましたが

結局 裁判官によって 574,000ドル(約6千万円)に引き下げられたそうです。


この新米の先生、ひとこと、この大学生に可能性として埋まっているゴムの一部が原因となって緑膿菌による感染症を引き起こす可能性があるから 
必ず整形外科の先生にちゃんと早く診てもらうように、と患者に注意し、
カルテにちゃんとその事実を書き込んでいれば この訴訟には負けなかったかもしれませんね。


訴訟なんてこんなもんです、こちらでは。

最新の画像もっと見る

6 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
おー、怖~ (takmaiのママ)
2010-07-12 12:50:03
こんにちは、東京は梅雨、じとじと暑いです。
昨夜も、突風をともなう雨、台風のようでしたよ。

訴訟大国、怖いですねー。額がはんぱじゃないよー。

もちろん、指を失った方にとっては、本当に悔しい思いで、お金には変えられないでしょうけど、そのDr.は、日本だったらフツーいる先生なんでしょうね。
風邪でもなんでも、すぐ抗生物質ですから。風邪には効かないとわかっていても、抗生物質。熱はやたら下げちゃいけないって分かっていても、解熱剤があたりまえですよ。

訴訟を怖がってなにもできなくなるーってのも困りますが、いろいろな可能性を考えず、とりあえずって、安易に薬出されても困りますね。



ところで、先日お話した、ドラマですが、アメリカ名「DESPERATE HOUSEWIVES」医療ものではありません。ご近所さん同士の妻たちに起こるさまざまな日常の事件を、どう切り抜いていくかってな感じのドラマ。ここでも、日本とアメリカの妻(女性)の差を感じます。
ある意味、ファイトももらえますよー。

Takmaiのママさんへ (もと子)
2010-07-12 20:51:24
ドラマの情報、ありがとうございます。
夜働いているスタッフの中でテレビ好きな人は少ないようで 看護師さんたちに尋ねてみましたがあんまり手ごたえなしでした。そのドラマ、こちらでも夜やっているようですが、機会があれば見てみますね。

医療訴訟の話は、すればするほど恐ろしくなります。怪我の部門の訴訟は比較的金額が低いんですよ。なぜなら怪我で死ぬことは少ないからで、ふつうは賠償額が億単位なんてざらなんですよ。

もっとすごい話はまたおいおい。


やはり大国 (Takmaiのママ)
2010-07-12 22:27:33
デスパレートな妻たち、2004年から放映、アメリカでゴールデン・グローブ賞やエミー賞をとっていて、社会現象にもなった話題作、と紹介されています。
といっても、アメリカはさすがに大国、知らない人のほうが多いのですね。日本なら、賞をとったほど話題になったドラマなら、名前くらい知ってるって人多いけど。
こんなことにでも、アメリカって大きさを感じるなぁ。
Takmaiのママさんへ (もと子)
2010-07-13 08:52:39
へ~、そうなんですか。
日本の方からこうやって逆輸入情報をいただいてびっくりしていますが。
60歳代の看護師長が 「それはきっと不倫の塊のようなドラマなんじゃないの?」
20歳代のナースが「ふん、ふん、そうかも。」
30歳代のナースが、唯一見たことがあると言った人だったんですけど
「先生、見たいならお休みとらなくっちゃ。あれ、夜の番組だから。」とさりげなく。
そのあと、ERものの新しいドラマや、ハウス、それからグレイスアナトミーなどの医療もののドラマの話になりまして、みんな、ふん、ばかばかしい!と申しておりました。
どういうんでしょうかね。ERに勤めるものにとって 結局毎日が生きたドラマなんでしょう。テレビ以上のドラマ、というわけですか。
思ったんですけど日本の方がはるかにテレビの情報は大切。みんな共通の話題として欠かせません。

けれど、映画の話となるとこちらでもみんなよくしますね。映画は、こちらでは安いですよ~ 毎週行っても破産しません。ポップコーン食べながら見るんです。
最新のお勧めは 「カラテキッズ」です。
あれは本当におもしろかったです。
久々の大ヒット! ジャッキーチェンがおじさんになってたけどいい味出していました。
日本で封切られたらぜひぜひご覧になってください!
ジャッキーチェンも好きです (takmaiのママ)
2010-07-13 12:58:08
日本も、映画館はシネコンになって復活、割引サービスやパソコン予約もでき、夜や週末は、結構混んでます。でもまだまだ高いですよ(1,800円)。今は、邦画が頑張っていて、昔に比べ洋画離れのようですね。

カラテ・キッズは日本名ベスト・キッド、8月封切りみたいです。今は、ダブル・ミッション(THE SPY NEXT DOOR)というのをやっています。これも面白そうですが、子供はアニメがいいみたいで。久しぶりにジャッキー見たいなぁ。


デスパレートは、ミステリー&ホームコメディですが、確かに不倫ものともいえますね。ERでもそうですが、アメリカものはパートナーが近場でころころ入れ替わるからすごいです(笑)。どのドラマにしても、アメリカドラマは、話がスピーディで切り替え早く(早すぎてついていけないことも多いですが)、私は好きです。


日本でも、仕事している人はなかなか時間とれずドラマはみない人も多いですが、みている人はだいたい録画してみているようです。後でひとりでゆっくりです。録画機の発達もすごいですよね。撮り過ぎて、見切れなくなることもしばしばですが。。。


長々と、映画やドラマの話題ですみません。
面白いERでのお話、楽しみにしております。
また、おじゃましまーす。
Takmaiのママさんへ (もと子)
2010-07-13 18:10:13
いえいえこちらこそ、ありがとうございます。
カラテキッズですが 実際はカラテではなくてカンフーなので ベストキッズというふうにしたのかもしれませんね。

こちらは曜日と年齢によっても違いますが通常10ドル以下です。
ポップコーン代と飲み物代の方が高くつきます。

コメントを投稿