■貧困と格差の拡大連鎖の解消について
貧困と格差の連鎖解消について伺う。
「失われた20年」などと呼ばれる未曾有の不況と経済危機が続く中で、貧困と格差の拡大が深刻な社会問題となっている。とりわけ、生活保護世帯や母子・父子・寡婦などひとり親世帯など低所得者へのしわ寄せは厳しく、保護者の貧困による「子どもの貧困」も切実さを増し、経済格差が教育の機会均等を阻み、あらたな格差と貧困の連鎖を生んでいる。
●中国地方で最悪…山口県の教育格差
今日、高校卒業は多くの職業につくための必要条件となり、進学率は97%をこえている。経済的な理由による高校教育からの排除は、若者一人ひとりへの大きなダメージであり、同時に社会の健全な発展を掘り崩すものだ。
生活保護世帯とそれ以外の世帯の高等学校進学率を資料に示したが参考にしてもらいたい。
山口県では生保世帯の子どもの進学率は81.5%に対し、その他世帯は97・5%だ。
生保世帯の進学率は全国下から十番目、その他世帯との差の大きさも下から十番目であり、中国5県の中では最も低い水準にある。
ちなみに山口県での統計はないが、広島市の調査では、全日制進学率が91・9%であるのに対して、被保護世帯は62・5%と大きな格差があり、山口県も同様の傾向だと推察される。
●経済的理由による教育差別は…憲法違反
日本国憲法は第26条で、国民に「ひとしく教育を受ける権利」を保障し、教育基本法もその4条で、「すべての国民は、人種・信条・性別・社会的身分、そして経済的地位又は門地によって教育上差別されない」と明記している。
いま起きていることは、まさに憲法と法律が禁じている「経済的地位による教育上の差別」そのものであり、一刻も放置できない政治の責任となっている。
ご承知の通り、厚労省も昨年度から生活保護受給者の「社会的な居場所づくり支援事業」を創設し、全国自治体にその活用を呼びかけている。
埼玉県は同事業を活用して、生保世帯の高校進学希望者を対象にした「学習教室」を昨年度は10箇所で実施するなど、全国で実施中の自治体は71にのぼっており、県内では、今年度から宇部市がこの事業に挑戦している。
山口県が率先して取り組みイニシアチブを発揮してこそ、全県の各市町に広がり創意や独自のニーズにも応えられるものになる。
ぜひ、国の支援制度も利用して、県として「教育支援制度」をつくり、子ども達の高校進学をサポートするいわゆる「学習教室」を全県に広げていくべきだと思うが、見解を伺いたい。
経済的に困窮しているのは、母子・寡婦世帯も同様であり、こうした世帯の子どもたちへの教育的支援も必要と考えるが、この点もお尋ねする。
◆健康福祉部長の答弁要旨
各福祉事務所では、学校と連携して子どもごとの進学支援を行っており、こうした取組は、保護世帯の自立を支援する市町が、地域の実情に応じて実施すべきものであり、県が広域的に、お示しの事業について取組むことは考えていない。
母子・寡婦世帯の子どもたちへの教育的支援については、母子世帯等では経済的支援に対するニーズが大きいことから、県としては、母子寡婦福祉資金による就学資金の貸付等を通じて、今後とも、母子世帯等の子どもが経済的な理由による進学を諦めることのないよう支援をしていく。
●再質問…何とも惨い答弁!知事公約はどこに行ったのか
学習支援問題について、何とも酷い答弁ではないか。しかし現実の問題として、いまだに生活保護世帯や一人親世帯の子弟達は、本当に厳しい貧困と教育の連鎖の中で喘いでいる。ここに光をあて、山口県として手を打っていくことは重要でないのか。
山本知事は、公約の柱として「平成の米一〇〇俵の精神」「子育て環境日本一」と大見得切ったが、それはどこに行ったのか。
ぜひ、子どもたちの高校進学の状況とその中身をしっかりと数字としても把握していただきたい。高校進学でも、全日制と定時制などどのように、一般家庭と違いが出ているのか精査もして、今後の検討の準備に入っていただきたいと思う。改めて答弁を求める。
◆再質問に対する部長の答弁要旨
生活保護世帯等の子ども達に対する進学支援については、言われる通り教育に対する先行投資という先人の教訓もあり、お示しの「米100俵の精神」、負の連鎖を断ち切るという意味で、非常に重要と考えている。
国の示している支援制度を利用した取組みについては、各福祉事務所に徹底しており、実際に宇部市での実施状況やその他の先進事例などの情報を提供して、今後積極的に活用され、進学支援の取組みが一層強化できるように努めてまいりたい。
また、母子家庭等に対する身近な相談窓口も、母子自立支援員も活用して、それぞれの家庭の実情に応じたきめ細かに教育資金等に対する相談に対応できるよう支援の強化に努めてまいりたいと考えている。さらに、進学率の引き上げに関しては、全日制と定時制を問わず、子どもや世帯の実情に応じた進学支援を市町とも連携して努めていく。
《「福祉の心」が問われる憲法上の問題》
「人材力の育成」に係わる知事公約を持ち出した途端、若干答弁のトーンが変わりましたが、要するに県当局の対応は、「負の連鎖を断ち切る意味で非常に重要」としながらも、あくまで「市町が実情に応じて実施すべき」と、他人事のような冷淡なものでした。
全国で唯一県としてこの事業を行っている埼玉県では、「学習教室」に学んだ中学生(約460人)の今年の高校進学率は97%で、埼玉県の県平均(98%)とほぼ同等。山口県より15%も上回っています。
この問題は、「福祉の心」が問われる憲法上の問題であり絶対に放置できません。県が主導し全県各市町で実施できるよう、引き続き取組んでいきます。