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☆=☆☆☆☆☆
◎=☆☆☆☆
◇=☆☆☆
△=☆☆
▽=☆

ぱいかじ南海作戦

2016年05月30日 12時03分29秒 | 邦画2012年

 ▽ぱいかじ南海作戦(2012年 日本 115分)

 監督・脚本 細川徹

 

 ▽南風

 ぱいかじってのは南風っていう意味らしい。

 てことは、この題名は南風南海作戦っていう語呂が好いんだか悪いんだかよくわかんない題名にもなる。

 もう、ほんと、名は体を表すっていう諺はこういうことをいうんだろね。まあ椎名誠を好きな人にはおもしろいのかもしれないし、阿部サダヲやピエール瀧のファンも喜んでくれるかもしれないんだけど、いやなんていうのか、役者はつらいね。佐々木希や貫地谷しほりもさぞかしつらかったろう。でもいいか。スタッフもキャストも映画作りに参加すればギャラが貰えるんだから。できあがった写真を観るために代金を浪費するのも時間を浪費するのも結局はこちら側だけだもんね。

 そういうおもうのは僕だけか…。

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源氏九郎颯爽記 秘剣揚羽の蝶

2016年05月29日 22時10分22秒 | 邦画1961~1970年

 △源氏九郎颯爽記 秘剣揚羽の蝶(1962年 日本 109分)

 監督・脚色 伊藤大輔

 

 △最後の白塗り?

 一心太助が白塗りかどうかは微妙なところだけど、少なくとも美剣士ではないわけで、そういうことからいうと、もしかしたら錦之助にとっては最後の白塗りだったんじゃないかって気がする。でも、その作品を演出するのはやっぱり伊藤大輔なんだよな~。こういう偶然なのか必然なのかよくわからないけど、ともかく結果として節目節目にふたりが一緒になってるのを観ると、いや、ほんと、錦之助と伊藤大輔の絆はほんと深いな~って感じるわ。

 1960~70年代はもう日本映画が一気に坂を転げ落ちていく時代で、見るも無残なことになっていくんだけど、でも、おもうに白塗りは消えていったわけじゃないんだよね。立ち回りで見えを切るのはテレビの時代劇で嫌ってくらいに残ったし、かえってリアリズムは映画だけのものになったまま現代に至っちゃったって感じもする。ということはどういうことかっていうと、所詮、時代劇を愉しむときはそういう芝居芝居してる方がいいってことなのかもしれないね。

 ぼくは時代小説ってやつをまったく読まないし、いつのまにやらテレビの時代劇も見ないようになっちゃったんだけど、どうも生理的に白塗りが肌に合わないらしい。こればかりは趣味の問題からどうしようもないんだけど、う~ん、源氏九郎は当時どれだけヒットしたんだろ?ぼくみたいなひねくれ者は少なかっただろうから、みんな、純粋に錦之助の白塗りを愉しんだんだろうか?

 ちなみに、錦之助が二役を演じてる初音の鼓っていうやくざ者のことなんだけど、これ、古典落語なんだよね。そもそも伝えられるところえでは、この鼓、源九郎狐の親狐の皮が張られてて、源義経が静御前に与えたっていういわくつきな代物だ。で、それが偽物かどうかっていうのが落語なんだけど、それはともかく、つまりは源氏九郎や源義経に繋がってて、しかも偽物うんぬんっていう二役めいた話になってるところから、この初音の鼓っていう役回りができてきたんだろうね、たぶん。

 ただまあ、原作を読んだことのないぼくは、それが柴田錬三郎のオリジナルかどうかは知らんけどさ。

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源氏九郎颯爽記 白狐二刀流

2016年05月28日 21時54分48秒 | 邦画1951~1960年

 △源氏九郎颯爽記 白狐二刀流(1958年 日本 87分)

 監督・脚本 加藤泰

 

 △秘剣揚羽蝶

 なんかまあ、宮本武蔵の白塗り版みたいな感じじゃない?

 どうしても二刀流とかってなっちゃうとそんな印象があるんだけど、これが全然ちがってて、幕末無国籍剣術活劇なんだから感想もいいようがない。当時はこんな感じの、つまり義経の子孫だとかいう九郎がなんでか知らないけど浮世離れした清潔感たっぷりの武士になって登場してくるんだけど、風呂は入らなくていいのか、とか、お腹は空かないのか、とか、生活費はどうやって稼いでるんだろう、とか、そりゃまあいろいろ疑問たっぷりの世界が展開するんだけど、ま、こんな感じの時代劇が流行ってたんだろね、たぶん。

 なんだかね。

 ところで、この時代、中村錦之助たちはどんな気持ちで演じてたんだろう?愉しかったのかな?これから後はどんどんとリアリズムがのしてきて、華麗な立ち回りはテレビの中だけの話になっていくんだけど、いつまでも白塗りでいないといけないのかなとかっておもってたんだろか?

 錦之助もそうだけど、邦画も大変だったんだろなって気がしたわ…。

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アクロス・ザ・ユニバース

2016年05月27日 18時04分09秒 | 洋画2007年

 ☆アクロス・ザ・ユニバース(2007年 アメリカ 133分)

 原題 Across The Universe

 原案・監督 ジュリー・テイモア

 

 ☆ビートルズの楽曲33曲

 たいしたもんだ。

 33曲という数の楽曲を取り組んで物語を作るだけじゃなく、エヴァン・レイチェル・ウッド、ジム・スタージェス、ジョー・アンダーソンたちがみんなビートルズを感情をこめて歌っちゃうんだから、ほんと、たいしたもんだ。

 くわえて、舞台になっているのは60年代、イギリス・リバプールの造船所からジム・スタージェスがアメリカへ渡っていくところから始まり、ニューヨークで共同生活していくところがメインになる。そう、60年代、つまりベトナム戦争が真っ盛りの頃で、それはもちろんジョン・レノンたちの青春の雰囲気とかれらの訴えてきた反戦を継承しているわけで、そうした主張を織り込んでいる絶妙さにも感心する。

 こういうのって、やっぱりアメリカだからできるのかな?

 たぶん、そうなんだろうね。

 ちなみに、これを書いている今、パラク・オバマ米大統領が広島の原爆公園で演説してる。

 追加。オバマ氏が広島に滞在した時間は52分だったらしい。原爆資料館に入館した時間は10分で、あらかじめみずから折ってきた折り鶴を3つ、見学者や遺族に手渡し、その後、プラハ演説以来の核の脅威に対する17分の演説をした。反応はさまざまだ。現職の大統領としては史上初のことながら、この短い滞在のために71年間という歳月を必要としたのもまた事実だ。20年前に上梓された『マラヤの要塞』っていう小説のラストシーンは戦後50年経った慰霊祭だった。むろん、当時の大統領は来訪することはなかった。だから、まさか現職の米大統領が原爆ドームに臨むなんて夢寐にもおもえなかった。そういうことからいえば、たしかに戦後における何事かについてひとつの区切りはなされたんじゃないかなっておもうけど、ね。

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The Lady アウンサンスーチー ひき裂かれた愛

2016年05月26日 18時42分21秒 | 洋画2011年

 ◇The Lady アウンサンスーチー ひき裂かれた愛(2011年 フランス、イギリス 135分)

 原題 The Lady

 監督 リュック・ベッソン

 

 ◇1945年ビルマに生まれる

 アウンサンスーチーのことだけど、彼女の語り口調を聞いてると一貫して「ビルマ」といってるような気がするんだけど、それってぼくが世界情勢に疎いからなんだろか?

 ま、それはさておき、大学を出てちょっとした頃だったか、アウンサンスーチーの自伝めいた本を買って読んだ。たしか『アウンサンスーチー 囚われの孔雀』とかって題名だったような気がするけど、くわしいことは憶えてない。ほんと、ぼくはそういうところ、常識と教養に欠ける。恥ずかしいね。

 で、おもったんだけど、もしもこういう自伝があるんなら、やっぱりベッソンが映画化するときはそれを原作にしてほしかったっていう気がしないでもない。まあ、スーチーの生き方を主題にするんじゃなくて、ビルマとイギリスの間の家族の絆みたいなものが主題に見えちゃったりもするからあんまり原作めいたものはいらなかったのかしらね。

 ぼくはどっちかというと、スーチーよりも彼女の父親のアウンサンに興味があって、前にちょっと調べたりもした。だって、ビルマを見るときに避けて通れないのがアウンサンとその時代だもんね。

 ただな~、ちょっとだけ、ミシェール・ヨーはあんまり似てないかな。

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雷桜

2016年05月25日 18時24分04秒 | 邦画2010年

 ◇雷桜(2010年 日本 133分)

 監督 廣木隆一

 

 ◇江戸から三日の瀬田山

 とかいうところがどこにあるのか知らないんだけど、やけに綺麗な沖縄のような風景のところだ。

 ま、それはそれとして、最初観始めたときは狼少女みたいな話かとおもったら、なんのことやらよくわからない物語が展開した。視点が散漫だからか心情が割れてるからか、ともかくいろんな人間の過去が絡んでくるもんだから主題がなんなのかちゃんと定まらないまま始まり、終わる。

 あ、でも桜と銀杏の合いの子とかっていう大木は綺麗だったけどね。

 で、おもうんだけど、要するにこの物語は合いの子の物語なのかしらね。主役の岡田将生は徳川家でありながら将軍とは縁遠い存在で、侍として生きるのかただの男として生きるのかどっちつかずの人間で、蒼井優はもうまったく里と山の合いの子で、蒼井優を育てる時任三郎も侍と樵の合いの子で、小出恵介も庄屋と侍の合いの子ってことになる。つまり、合いの子の生きにくい時代の悲劇みたいなもんが雷桜っていう混血樹を象徴して語られてるってことなんじゃないかって。

 なんとなくそんな気がするんだけど、ちがうかしら?

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閉ざされた森

2016年05月24日 02時21分13秒 | 洋画2003年

 ◇閉ざされた森(2003年 アメリカ 98分)

 原題 Basic

 監督 ジョン・マクティアナン

 

 ◇熱帯雨林の密林

 それがパナマとくれば、もう、麻薬しかない。

 案の定、ジョン・トラボルタは麻薬取締局捜査官として登場する。しかも、元レンジャー隊員であり、かつ、今は麻薬密売の容疑までかけられているという設定で、しかも尋問の達人てな扱いだから、まあこの妙に完璧ながらも黒白判然としない人間が登場すれば、このまま捜査を続けて大団円まで持ち込むかあるいはどんでん返しで真犯人の黒幕になるかのどちらかしかない。

 で、もうひとりの主役であるサミュエル・L・ジャクソンがやけに最初から悪役で、くわえて豪雨と人間の心によって閉ざされたパナマの密林で、レンジャー小隊を全滅させてしまいさらには自分もまた何者かに殺されちゃってるとかってことになれば、これはもう途中から重要な回想場面に登場してきて事件の鍵を握っているかあるいは黒白どちらかの人間として生きているってことになるんだけど、後者の場合はたいがい好いもんってことに相場が決まってる。

 さらにいうと、ジョン・トラボルタの相手役になるコニー・ニールセンなんだけど、彼女の場合、ただ単にトラボルタの助手的なあつかいで狂言回しをするだけなのかといえば、それはちょっともったいないし、そういう立場でもない。となると、これはもうトラボルタの捜査に感心する一方でトラボルタを徹底的に疑い、やがてこいつがダイイングメッセージにもあった「8」なる組織の黒幕にちがいないとおもいこんだ後、なんとまあ鮮やかにも正義の味方になっちゃうか、あるいはトラボルタに不快感をおぼえながらも惹かれていっちゃって、やがておもいもよらないことからトラボルタの真実つまり真犯人であることを知って対決するか、そのどちらかしかない。

 こうして見てくると、この作品もまたトラボルタにはありがちな2時間ドラマの大掛かり篇ってことになっちゃうんだよね。ほんとにね、トラボルタはたぶん好いやつなんだろうけど、作品に恵まれてるかといえばちょっとね。ニコラス・ケイジみたいになんでもかんでも出ちゃうっていう、ほんとはそうじゃないんだろうけど、そういう姿勢が必要かもしれないね。

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クレアモントホテル

2016年05月23日 20時56分03秒 | 洋画2005年

 ◎クレアモントホテル(2005年 イギリス、アメリカ 108分)

 原題 Mrs. Palfrey at the Claremont

 監督 ダン・アイアランド

 

 ◎これが養老院だったらどうだろう?

 ホテルというものに対する日本とイギリスの感覚の差なのかもしれないし、半世紀も前のロンドンでしか成立しない話なのかもしれないんだけど、実をいえば、そんなことはどうでもいいのかもしれない。だって、お金を積んで入所する養老院でも似たような物語はおそらく成立するんだろうから。ただ、ホテルに長期滞在するというのは決して他人の世話にならないという自立心ある人々の意志ある行動で、そこが老人ホームとはちがってるところだ。

 物語そのものは決して目新しいものではないし、近親者が訪ねてくることをただひとつの生き甲斐にしているホテルの長期滞在者の老人たちにしてみれば、孫が、それもとっても好青年の孫が訪ねてきてくれるなんてのは自尊心をかぎりなく擽ってくれるわけで、そういう狂言が物語をひっぱっていくってのは、いろんな形でこれまでにも語られてきた。ただ、身寄りはあるのに孫たちがなかなか訪ねてきてくなない老人と身寄りがあるのかないのかわからないながらもたぶん孤独なのかもしれないなって風味の小説家志望の青年という組み合わせは、うん、上手に嵌まってたね。

 ちなみに、ローレンス・オリヴィエ男爵夫人のジョーン・プロウライトの相手役になった青年ルパート・フレンドなんだけど、最初観たとき、オーランド・ブルームと間違えた。似てるわ~。ちょっとこちらの方が若くて甘い感じはあるけど、でも似てたわ~。

 

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飢餓海峡

2016年05月22日 01時36分35秒 | 邦画1961~1970年

 ☆飢餓海峡(1965年 日本 183分)

 監督 内田吐夢

 

 ☆洞爺丸海難事故と岩内大火

 モデルになったのは小題のふたつの事件なんだけど、これはどちらも昭和29年9月26日の洞爺丸台風(台風15号)の日に起こった。その偶然をもとに水上勉が書き上げたのが原作で、これを東映大泉撮影所が内田吐夢を招いて制作したものだ。企画から初日にいたるまでに東撮の所長が3人も入れ替わったりしたりして、ほんとにもう東撮どころか東映そのものが台風に見舞われたような凄まじさになった作品なんだけど、そのあたりの経緯についてはよく知られている話だし、この日本映画史上に燦然と輝いてる映画の内容ともども、いまさらなにか書いても仕方がない。ことに部外者のぼくが知ったかぶりして書いたところでまったく真実とは程遠いものになっちゃうしね。

 だからまあなんとなく最初に観たときの印象をおもいだそうかなって。たぶん、大学一年生だったとおもうから、もう気の遠くなるほど昔の話だ。銀座の並木通に並木座っていう名画座があって、当時、この作品はそこでときどき上映されていた。ただまあなにぶん3時間を3分超える長尺物だし、モノクロだし、相当に古い作品だしで、観るときはいつもかなり気合を入れてから観たものだ。ところがあるとき、この映画は実は短縮版があって、封切りのときはほとんどの劇場ではその167分の短縮版が公開されたって話を聞いた。183分の作品は実は数館の直営館でしか公開されなかったと。なんだそれっておもってたんだけど、ほんとのところをいうと、この作品は192分1秒あったんだよね。もう観ることは不可能なんだろか?

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フル・モンティ

2016年05月21日 20時23分00秒 | 洋画1997年

 ☆フル・モンティ(1997年 イギリス 91分)

 原題 The Full Monty

 監督 ピーター・カッタネオ

 

 ☆シェフィールドのストリップ

 90年代のある時期、イギリス映画はなんだかすごくおもしろくなった気がする。小粒なんだけど気の利いた作品が矢継ぎ早に封切られてたような。この作品もそのときに初めて観たんだけど、いや~おもしろかった。ロバート・カーライルを知ったのもこのときで、うだつのあがらない父親像にはぴったりの役者におもえた。それだけ演技が嵌まってたんだろね。

 イギリスの場合、炭鉱町の不況はよく映画になる。まあそれは日本でも同じなんだけど、古くは『幸せの黄色いハンカチ』がそうだったし、近頃では『信さん 炭鉱町のセレナーデ』もそうだ。やっぱり人間が町ぐるみで苦境に立たされてしまうっていうのはもの悲しい物語性を帯びてくるんだろうけど、それを撥ね返してしまうのがイギリスで、たとえば『ブラス!』なんかもそうだ。この作品ももちろんそうした系列で、不況によって沈滞していく町の人々がいて、せめて心だけでも蘇生させて未来への活力を得たいっていうその一瞬を描くのは、いや、ほんとにイギリスは上手だ。

 

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ザ・ワーズ 盗まれた人生

2016年05月20日 23時01分00秒 | 洋画2012年

 ◇ザ・ワーズ 盗まれた人生(2012年 アメリカ 96分)

 原題 The Words

 監督・脚本 ブライアン・クラグマン、リー・スターンサール

 

 ◇平行して語られる三つの物語

 全体の構成は嫌いじゃないし、どちらかといえば好みなんだけど、ちょっと物足らなさを感じちゃうのは、微妙に外された感があるかもしれない。まあ、なんというか、書こうとしても書けないのが原稿なんだっていうのはよくわかるんだけど、実際、原稿の盗作ってのはなかなかないような気もする。だって、人には文体ってのがあって、それがあってこその作家で、もしも盗作したとしても文章は全部書き直さないではいられないっておもうんだけどな。

 ま、それはそれとして、この映画の中に三つある物語は、すべて、頭の中の多重構造になってるんだけど、それを辿っていくとなんともあっけなくデニス・クエイドで止まっちゃうのがなんだかね。デニス・クエイドの物語が実はブラッドレイ・クーパーの後の世界だとしたらそれもまた興醒めだし、やっぱり全体の鍵を握っているのはジェレミー・アイアンズであってほしいよね。だって、自分の過去の悲恋を原稿にしたのが、ブラッドレイ・クーパーに盗作されちゃうという悲劇を背負っているのはジェレミー・アイアンズだけなわけで、彼の過去の物語がベン・バーンズの物語になってるんだけど、つまり、老いてしまったジェレミー・アイアンズはこの映画の中では単なる繋ぎに終始してしまっているからだ。狂言回しといってもいいんだけど、そのあたりがなんだか物足りないんだな、きっと。

 でも、この作品、なんだか雰囲気が好いんだよね。

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チリ33人 希望の軌跡

2016年05月19日 00時00分24秒 | 洋画2015年

 ◎チリ33人 希望の軌跡(2015年 アメリカ、チリ 127分)

 原題 THE33

 監督 パトリシア・リゲン

 

 ◎2010年8月、チリ・サンホセ鉱山

 この事件はよく憶えてる。

 坑道の崩落事故が起こって地下700メートルに生き埋めにされ、69日後に全員無事に救出されたとき、早くもハリウッドで映画化されるって話が聞こえてきた。ま、そうだろうな~とおもってたら、ほんとにできた。こういう実話物が俎板に挙げられると、当時ではまず最初に囁かれたのがハリソン・フォードで、いつだったかポトマック運河に航空機が不時着したときもそうだった。あちらは映画にならなかったけど、こちらはなった。なるよね、感動的だもん。

 ていうより、予想よりも出来栄えがよかった。アントニオ・バンデラスがなんとも上手で、味のある役者になったな~っておもったのと、まさかのジュリエット・ビノシュがひとりだけ浮いちゃいそうだったとはいえやっぱり上手だったね。

 それにしても、ニュースを見ていたときはよくわからなかったんだけど、想像していたよりも坑道が広く、そして迷路のように長く、凄まじく深かった。なるほど、生き埋めっていうからもうすこし狭苦しいような地下世界を想像してたんだけど、これは認識不足だった。というより、ぼくが好い加減な想像を働かせていたんだろね。

 なににせよ、脚本が上手く書かれていて、例の世界中で有名になってしまった愛人のいる炭鉱夫の話もおもいだせたし、いかにも南米の陽気な逞しさが随処に見られるのもこの物語の味なんだろう。民俗的な音楽もまた味わい深いものがあったしね。

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