COCCOLITH EARTH WATCH REPORT

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インドネシアのタバコ問題と日本の原発問題の奇妙な類似性

2011-10-01 23:51:47 | Weblog

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目 次
はじめに
インドネシアの子供達の現況
インドネシア社会への多国籍タバコ産業の浸透
タバコ産業とインドネシア政府の癒着
日本への原発導入との類似点
望ましい未来に向けて

はじめに
 昨年11月、喫煙問題の反面教師:2歳の子どもが喫煙するインドネシアという記事を掲載しました。きっかけは、約1年前に動画サイトに投稿された2歳の男の子(アルディ君)の映像が世界中の注目を集めたという放送(2010年11月8日、NHK BS1 アジアクロスロード)を見てのことでした。9月29日、NHK BS1ワールドWAVEトゥナイトでは、アルディ君との対面をかねてアメリカABC放送が取材した、インドネシアの子供達の現状や、海外タバコ産業が人々の生活に深く浸透し、政治の場にも色濃い影響を及ぼしている状況が放送されました。こじつけになりますが、そのような状況と、日本の原発を巡る状況の過去と現在に類似性を感じたので、記事にまとめてみました。

インドネシアの子供達の現況
 インドネシアでは、日本の中学生に相当する子ども達の5割が喫煙経験あると言われています。ABC放送の記者は、アルディ君に会う前から驚くべき状況に遭遇しました。朝起きるとまず、お祖父さんに火をつけてもらったタバコを美味しそうに吸う2歳の男の映像が流れました。お祖父さんは、男の子はチョコレートパンと同じようにタバコが好きで、喫煙で肺がんになるリスクが高いと注意を喚起しても、一緒にコーヒーをがぶがぶ飲めば、健康に問題ないと意に介しませんでした。また、子供とは思えない貫禄で、テレビを見ながらタバコを吸っている7歳の少年の映像も流れました。母親によると、1日一箱吸っているとのことでした。8歳の少女も、誰にも咎められることもなくタバコを買っていました。タバコの購入に年齢制限がない上に、値段は一箱1ドル程度で誰でも手に入れることができます。なお、アルディ君はタバコを止めていました。世界の注目を浴びたため、地元の役人のはからいでリハビリセンターへ送られたことが効いたのでしょう。母親は後悔しており、今は吸わせないように注意していると言っていました。

インドネシア社会への多国籍タバコ産業の浸透
 至るところにタバコの広告がある今のインドネシアは、ABC放送の記者の目にまるで50年代のアメリカのように映りました。50年代のアメリカでタバコのシンボルは、マルボロマンでした。メーカーの多国籍企業フィリップ・モリス社は、アメリカでのマルボロマンを使ったCMを10年以上前に終了させましたが、インドネシアでは今でもマルボロマンは健在です。2005年、フィリップ・モリス社はインドネシア第三位のタバコメーカーを買収、その後間もなくインドネシアでの国内販売数1位になりました。若者をターゲットにした戦略が成功したからです。インドネシアで目標達成のため、このメーカーは様々な手法を使ってタバコの宣伝をしています。ロックコンサートやオーディション番組の主催、若者向けのテレビコマーシャルの放映、魅力的な若い女性を雇ってのキャンペーンなどなどです。
 このタバコメーカーの言い分では、インドネシア政府に何度も未成年者へのタバコの販売を禁止するよう求めており、自らがスポンサーするイベントへの未成年者の参加を厳しく規制しているから、子どもをターゲットにはしていないと強調しています。ところが現状はどうでしょう。学校の入り口から僅か数歩先にタバコメーカーがスポンサーをする売店があり、生徒達がばら売りのタバコを買ってゆきます。値段は1本10セント、売店にはライターもありました。

タバコ産業とインドネシア政府の癒着
 ABC放送の記者はインドネシアの保健大臣にどう対処するつもりか問いただしました。保健大臣の答えは、彼等がやることには反対だが、はっきりと反対することができないと苦しげなものでした。何故反対できないのか、それはインドネシアではタバコ産業で働く人が400万人もおり、政治家でさえ議会で堂々とタバコを吸い、規制しようとすると、聖職者までもが反対デモを起すそうです。国内でタバコ産業の影響力は非常に大きく、2009年にタバコ産業が国に払った税金およそ6000億円は、インドネシアの国の歳入の10%近くに及ぶそうです。こういった背景では、交通機関や公共の場所での喫煙を規制する動きがなかなか広がらないとのことでした。

日本への原発導入との類似点
 上記の番組を見ていて、最近のテレビ番組で見た日本への原発導入のいきさつが思い浮かびました。その番組とは9月18日のETV特集で放送された、「シリーズ 原発事故への道程 前編 置き去りにされた慎重論」です。原子核物理学者達が導入に慎重であった1950年代、政界、実業界の主導で原発導入が進んだことが描かれていました。大きな転機になったのは、1954年にアメリカがビキニ環礁で行った水爆実験で、日本の遠洋マグロ漁船第五福竜丸が被爆したことでした。広島、長崎の被爆でもともと強かった日本の反核アレルギーが一層高まりました。これを沈静化するため、原子力の平和利用を礼賛する形で、原発の導入が企てられたのです。各地で原子力平和利用博覧会が開かれ、国務大臣に就任した正力松太郎氏は日本テレビ会長、読売新聞社主の立場をフルに生かして導入を推進しました。タバコメーカーがインドネシアで行っていることは、程度は小さくても似たようなものであろうと思われます。
 高度成長期と重なって、日本への原発導入が進みましたが、福島の事故はそれまで疎かにされていたことや明るみにされていなかったことを露呈しました。脱線になりますが、東北新幹線は東日本大地震を予知して制動をかけ、1台も脱線することなく停車しました。これは速度と安全性向上へのたゆまぬ技術革新の賜物といえます。これとは対照的に、日本の原発の安全神話は、捏造された虚構だったのです。

望ましい未来に向けて
 日本のタバコ規制は、インドネシアよりかなり進んでいますが、行き届いているとは言えない状況です。今日10月1日のNHKニュース7は、昨年の値上げ以来、喫煙を止めた人が期待したほど多くなかったと報じていました。喫煙を続ける人の態度も問題ですが、日本でも政府とタバコ産業やその関連団体との結びつきが根強く、規制が未だ不十分であると言えます。原発問題になるともっと深刻です。国民の6割以上が将来的脱原発に賛成であるのに、政治家達の発言には煮え切らないものがあります。これには電力業界(経営側、労働側とも)と既成政党と強い結びつきがあるためと思われます。【掲載後挿入:この記事を掲載した翌日、10月2日の朝日新聞朝刊に、東京電力が自民党議員を中心に年間5000万円のパーティー券を買い続けていたとの記事が掲載されました。】国内では作りにくくなった原発の建設を海外で受注しようという動きもありますが、廃棄物の最終処分の目処が立たない原発の海外売り込みは、短期的経済利益を上げても、将来に禍根を残すのではないかと危惧されます。大勢の市民達が参加したさようなら原発の動きも出てきています。時計の針を原発導入の前に戻すことはできません。当時は時代のターニング・ポイント(転換点)でした。今は別のターニング・ポイントに直面している時代です。将来に向けて正しい選択がなされることを願ってやみません。

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1 コメント

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Unknown (Unknown)
2013-02-27 15:14:48
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