世界をスケッチ旅行してまわりたい絵描きの卵の備忘録と雑記
魔法の絨毯 -美術館めぐりとスケッチ旅行-
夢幻のモラビア情景
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チェコの風景画家、アロイス・カルヴォダ(Alois Kalvoda)は、一言解説では、チェコ近代絵画における最も優れた風景画家の一人、とされている。私の旅ノートにも、二重マルがついている。
印象派の画家として括られているのだが、カルヴォダの印象主義は多分にエモーショナル。この人の絵には、ほんのシンプルなモチーフしかない。白樺がひょろりと立ち並ぶチェコの田園。それを、自然そのものが持つ以上にデコラティブな色彩を与えて、描き出す。色彩自体は明瞭で快活なのだが、画面全体のムードは微妙におぼろで、刹那の夢見心地なフィーリングを醸している。
カルヴォダが取り上げた風景の最も傑出したイメージは、独特の民俗的伝統文化の残る、スロバキア国境に程近い南モラビア、スロバーツコ地方の情景なのだという。
略歴を記しておくと、ブルノ近郊シュラパニツェの生まれ。貧しい家庭で、母は娘のように若く、子沢山。おまけに父は早くに死んでしまった。
カルヴォダは絵が得意な一方、勉学には熱が入らない子だった。これじゃあ、家族の理解がなかったところで絵の道に進むのは当然。で、初恋で失恋したのを機に、画家になろうと決意、プラハに上京する。
アカデミーでは、チェコ風景画の巨匠ユリウス・マジャーク(Julius Mařák)に師事。マジャークのロマン派的な、リリカルでメランコリックな画風から大いに影響を受けるが、ほどなく脱却し、印象派、しかも独特に装飾的な印象派へと、様式を変える。
奨学金を得て、パリ、さらにミュンヘンに留学し、同地で、当代の新しい絵画を吸収する。帰国後は、考えるところがあったのだろう、プラハに自前の美術学校を設立(のちにビェハジョフ(Běhařov)の古城に移転)し、若い世代を発掘した。そのなかには、ヨゼフ・ヴァーハル(Josef Váchal)やマルティン・ベンカ(Martin Benka)らがいる。
あまり詳しくは分からないけれど、出会えてよかった画家の一人。
画像は、「白樺」。
アロイス・カルヴォダ(Alois Kalvoda, 1875-1934, Czech)
他、左から、
「丘の村」
「小窓」
「陽光の小道」
「ハンノキの木叢」
「冬の小川」
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