Fireside Chats

ファイアーサイド・チャット=焚き火を囲んだとりとめない会話のかたちで、広報やPRの問題を考えて見たいと思います。

マーケティングとPRの実践ネット戦略

2010年02月06日 17時03分35秒 | PR戦略
2010年元旦。鳩山総理は『ツイッター』を使っての情報発信を始めた。
140字という短い文字数で、その時々の感想や行動をつぶやくツイッターというミニブログサービスは、2006年にアメリカでスタートしたが、いまや全世界で7500万人のユーザーを擁するに至った。日本でも2009年夏ごろから大ブレークし、国会議員の間では異常と思われるほどのブーム状況を呈し、企業もPRメディアとして活用しはじめている。
ネットメディアの世界には次々と新しいサービスが生まれており、キャッチアップするのもなかなか大変である。思い起こせば2007年には『セカンドライフ』という3Dの仮想空間が注目を浴び、多くの企業が相次いで参入したが、いまやその話題も全く聞かなくなっている。
果たしてこの『ツイッター』は今後ネットメディアに定着していくのだろうか。

個々のサービスの盛衰はともかく、インターネットの成長に伴いメディア環境が激変していることに誰しも異論はないだろう。
私は、今日の企業コミュニケーションは、<マスメディア><マイメディア><ソーシャルメディア>の3つのメディアを同時に視野に納めなければならないと感じている。
20世紀において、<マスメディア>の存在感は圧倒的だった。
ところが世紀の変わり目に、企業は相次いでウェブサイトを開設し、マスメディアに頼らずとも自らのメディアで情報発信する手段を手に入れた。ウェブやメールなど企業が自ら発信できるメディアを私は<マイメディア>と整理している。
加えて06年頃から顕著なのが<ソーシャルメディア>の伸長である。ブログ、ポッドキャスト、SNS、ウィキなどを通じ、個人が容易に情報発信をしはじめ、それらの発言が相互に結びつき、無視しえないメディアへと成長したのである。
企業からの情報は、マスメディアを介さずともマイメディアで発信され、ソーシャルメディアで増幅する回路が生まれた。もとよりマスメディア経由の情報も効果的だが、それのみで完結するのではなく、ソーシャルメディアでの反響が情報伝播の大きな役割を担い始めているし、最近の学生は新聞記事をミクシイで閲覧することも稀ではない。

ところで、ネットは単に情報メディアとしてのみ存在しているわけではない、企業にとってはオンラインショッピングも重要である。つまりは、ネットはメディアであると同時に販売チャネルとしての性格も有している。さらには決済や物流のコントロール機能も備え、クレームの窓口でもある。
となれば、インターネットの成長が単にPRや広告などの企業コミュニケーションに影響を与えるだけでなく、マーケティング全体にインパクトを与えていることは容易に理解できるだろう。
本書は、この環境変化に対応し、マーケティング視点でもPR視点でもパラダイムを一新させなければならないと説いている。
著者は「多くの人がウェブという新しいメディアに対し、古ぼけた広告手法やメディアの考え方を当てはめようとして、目も当てられない結果に終わっている。」と語り、あらゆる組織が顧客と直接コミュニケーションをとれるようになった結果、マーケティングとPRの間の境界は消滅し、新しいルールが生まれていると主張する。
この主張の傍証となりうるのが、本書の成立過程かもしれない。

著者のデヴィッド・マーマン・スコットはオンラインのニュースサイトのマーケティング担当役員を経て独立。2004年頃から自らのブログで本書のもととなる内容を書き連ねた。数千のフォロワーがそのブログを購読し、何人もがコメントやメールで意見を送ってきた。このようにして練り上げられた本書は、2006年にまず電子ブックとして公開されたが、1週間で数千人がアクセスしたといわれる。やがて出版されるや1年以上アマゾンのビジネス書ジャンルでベスト100以内をキープし続けた。
たまたま、この原著を読んだ外資系PR会社社員のブログに著名ブロガーであるいしたにまさきが眼を止め、監修者の神原弥奈子に紹介したことが、日本にブログを紹介した功労者のひとりである平田大治による日本語版翻訳のきっかけだったという。
日本語版出版に際しては、発行元の日経BP社のサイトで試読版として1章がまるまる無料公開され、また献本を受けたアルファブロガーの多くが自らのブログで書評を掲載している。
ブログにより新しいつながりが次々に生まれ、出版プロジェクトが見る見る進展するダイナミズムと、バイラルで本書の評判が広がるプロセスはネット時代の特質と新しいルールを見事に体現している。

本書は次の3章で構成されている。
PART-1 ウェブはマーケティングとP Rをどう変えたか?
PART-2 ウェブでどのようにして直接リーチするか?
PART-3 ウェブの力を利用するアクションプラン
特徴的なのはPART-3でウェブやソーシャルメディアを活用する具体的手順について詳細に述べていることである。
もとより日米のネット文化の相違や原著の発行された2007年以来の変化は存在するものの、書かれている内容は現在でも充分活用出来るだろう。





ネットPRの現在

2009年07月05日 13時54分21秒 | PR戦略
■オバマ選挙のメディア戦略

大統領選挙でネットを本格的に活用したのは、04年の予備選でジョン・ケリーに敗れた民主党のディーン候補である。彼は選挙にブログや動画サイトを活用し、草の根の支持を獲得するだけでなく多大な選挙資金の獲得につなげた。
それから4年。ネット環境は大きく変化した。
ブロードバンド化で動画の視聴は容易になり、またWEB2.0をキーワードに一般ユーザーの参加型サイトが隆盛を極めるようになっていた。
08年のオバマ陣営はこのような変化をいち早く取り入れ、ネット時代のキャンペーンの輪郭をくっきりと描き出した。
そのメディア戦略を簡単にスケッチしてみよう。
まず伝統的メディアである「マスメディア」の積極的活用は選挙戦略の基礎である。
マケインの選挙費用3億6900万ドルに対し、オバマは今回の大統領選で、倍以上の7億4500万ドル(≒715億円)を集めているが、この豊富な選挙資金を原資にテレビスポットCMを大量に投下している。
それだけではなく大統領選挙投票日の6日前には約5億円の費用を投じ、全米7局で30分のインフォマーシャル番組を放送し、勝利に向け駄目押しをしている。
特筆すべきは「マイメディア」の積極的活用である。
マイメディアとはあまり聞かれない言葉だが、ウェブサイトやメルマガなど社会と直接受発信できる、自分のメディアと定義しておこう。
候補者が自分のウェブサイトを立ち上げるのは日本でも当たり前になっている。オバマのユニークさはそれに加えて、YOUTUBEに自分のチャンネルを開設し積極的に活用したことだ。
テレビでオンエアされる前のCMがYOUTUBEにアップロードされた。オバマのさまざまな演説、選挙スタッフからの応援要請も動画にまとめられた。1800本以上が公開され、合計で1億回以上ダウンロードされたという。
その他にもメールや携帯電話のアプリなどさまざまなネット機能を使い、迅速性・透明性・参加性を重視しつつ、市民に情報を公開していったのである。
また、このマイメディアは個人献金を受け付ける窓口でもあった。
オバマサイドからの情報発信を受け、支持者の中にネット内口コミが発生し始めた。いわゆる「バイラル効果」である。
支持者の個人ブログに加え、マイスペース、フェースブック、ツイッター、ディグ、アイフォンのアプリなど、人気のネットワークサービスがフル稼働した。これらのユーザー自身が情報を発信するメディアは、ソーシャルメディアとかCGMなどと呼ばれている。
私は、ソーシャルメディアとは、『擬似当事者』を生み出す仕組みだと思っている。ソーシャルメディアに投稿したり、動画を公開したり、献金した人間はそのテーマにいやでも関心を持たざるを得ず、あたかも当事者のような意識を抱くようになるのだ。
こうしてオバマ選挙は熱狂的なエバンジェリストやネット内有名人を生み出していった。彼らは時として自分たちで動画を作り、勝手に公開する。
例えばアップルの著名なCMをパロディにしたヒラリー・クリントン中傷動画はそのクオリティの高さもあって大きな話題となったが、その作者は普通の会社員だった。「オバマガール」と呼ばれる勝手連的動画もYOUTUBEに投稿され多くのアクセスを稼いだが、歌い踊った女性はこれを足がかりにテレビタレントへの道を歩んだ。
このようにしてオバマは社会現象となり、支持を広げ、献金を積み上げ、全米に「Yes We Can!」をキーワードとした熱狂を生み出し、大統領に登りつめたのである。

■ネット時代のキャンペーンの構図
オバマの選挙戦術に、1)マスメディア、2)マイメディア、3)ソーシャルメディアがミックスして使われたことは前項で確認した。この構図は選挙に限らず、キャンペーンの一般的モデルとして捉えられる。マスメディアやマイメディアを介した情報発信が対象者に届き、その情報がソーシャルメディアにとりあげられ自己増殖し、その話題が再びマスメディアに取り上げられることでなおさらソーシャルメディアが活気付くという連鎖の構図である。
そして、わが国でもこのようなキャンペーンを行うためのインフラ整備が進み、さまざまな事例が生まれ始めている。
まず、企業のサイトなどのマイメディアの状況を見てみよう。
インターネット広告推進協議会(JIAA)は、03年以来毎年東京インタラクティブ・アド・アワードを開催しており、この受賞作品が企業のウェブサイトの時々の動向を示すショーケースとなっている。
今年のグランプリは郵便会社がミクシィと手を組んだ「ミクシィ年賀状」。相手の住所を知らなくともミクシィを通じて年賀状配送の手続きをすれば、相手が自分で住所を書き込んで紙の年賀状を受け取るという仕掛けである。70万通の年賀状がこの方式で送られた。
リアルとバーチャルをつなげ、ユーザーのすぐれたしかけである。
この特集で事例として取り上げている「ラブ・ディスタンス」も受賞している。
目を世界に転ずれば、クリオ賞、カンヌ国際広告祭、ワンショーなどにインタラクティブ部門が設けられ、それぞれ優秀サイトを審査し表彰している。日本企業の受賞も数多い。前述の「ミクシィ年賀状」はカンヌで銅賞に輝いている。
このようにして、WEBサイトのクオリティは向上し続けている。ご興味があればそれぞれの受賞作品のサイトはチェックしておくべきだろう。
最近の傾向を見ると、1)ブランドごとに個別のサイトを公開する。2)企業からの一方通行の情報提供ではなく消費者が参加でき遊べるプラットフォームを提供している。3)他人に紹介しやすく紹介したくなるシンプルな内容とする。
以上3つのポイントを指摘できよう。

■ソーシャルメディアのちから
「WOWエフェクト」という言葉がある。
もともとは低音域をくっきりと再生する音響技術を意味していたが、最近は「ワオッ!」という新鮮な驚きを与えるという意味でも使われるようになった。バイラルとはウィルスが広がるように口コミが広がるという意味だが、バイラルを生み出す必要条件の一つがWOWである。オバマは候補者そのものがWOWであったし、政党が相次いでYOUTUBEにチャンネルを開く中、ニコニコ動画を活用した小沢一郎戦略もひときわ話題となるWOWをそなえている。WOWがなければ、ソーシャルメディアではひろがらない。
そして、いち早くWOWを見つけ出し、バイラルとして話題を広げる媒体となるのが、ブログやSNSなどのソーシャルメディアである。
世界中のブログの37%が日本語で、英語の36%を上回っているという06年の調査がある。日本はブログ大国なのである。数多いブログの中から、面白く参考となるブログがアクセスを集め、メディアとしての力を持ち始めてきた。そのようなブログの執筆者は、この特集でインタビューしている徳力基彦氏によりアルファブロガーと名づけられたが、これらブロガーにさまざまな情報を提供する「ブロガーミーティング」が、記者発表と並ぶ定番PR手法として定着し始めている。

■健全なブログマーケティングの模索
しかし、ソーシャルメディアが情報伝播力を備えるにつれ、メディアとしての信頼性をどう担保するかが問題として浮上してきた。
企業が個人ブロガーを装ってやらせ記事を書いたりライバル企業を誹謗中傷する懸念。個人ブロガーが企業から金銭を含めた対価を得つつちょうちん記事を書くケース。メディアとしての力を持てば持つほどジャーナリズムの倫理が求められることになる。
この問題を解決しようと、バイラルを仕掛ける側の企業やエージェンシー、有力ブロガー、研究者などがあつまり、ブログマーケティングを健全に進めるためのガイドラインの制定が進んでいる。
問題意識を同じくする個人同士がネットを媒介につながり、運動として形を作り始めてきたプロセスをみると、オバマ支持者が横につながりオバマ現象を生み出していく流れを想起させる。
ソーシャルメディアの活用の方策は、自律的に分散している個人が互いに協調しつつ一定の秩序を生み出して行くプロセスのマネジメントである。
ネット時代の戦略的PRとは、マスメディア、マイメディア、ソーシャルメディアの3つの領域をひとつの視野に収め、その相互作用を計算しつつブームを作るフレームを構築することといえよう。その意味で、広告と広報の垣根を超え社会心理を読みきる洞察力がより一層求められているのである。

ネット内の評判作りをより健全に

2009年03月30日 16時17分56秒 | PR戦略
評判づくりにとってインターネットの存在は、いまや無視できない。
ダイエット情報はユーザーの体験ブログのほうが雑誌の広告より信用できそうな気がするはずだ。
「アマゾン」のユーザー書評、「価格COM」や、化粧品の情報交換サイト「@コスメ」の書き込み、「MIXI」での何気ないつぶやきが、確実に消費行動に影響を与えている。
ブログや掲示板、SNSなど一般の人たちが書き込むことで成立しているサイトは、CGM(コンシューマジェネレーテッドメディア)とかソーシャルメディアと呼ばれているが、 “デジタルクチコミ”媒体として、迅速且つ広範に評判を伝播させる力を備えた。
しかしながら、これらの情報は、時として匿名の陰に隠れ、その信頼度は必ずしも高くない。ライバル企業が意図的に特定ブランドの誹謗中傷を流すとか、金銭の授受を伴い実態とかけはなれた提灯記事をブログにアップするような情報操作も存在している。
テレビ番組で“やらせ”が許されないのと同様に、ネットでも素人を隠れ蓑とした不純な動機の情報は排除されてしかるべきである。
とはいえ、発信元が特定できるマスメディアと違い、不特定多数から発信されるネット情報をチェックすることは物理的に困難だ。他方、ブロガーに試供品を提供しそれぞれのブログへの記事掲載を依頼し、投稿された場合に何らかの対価を支払う「ペイパーポスト(Pay Per Post)」と呼ばれるサービスは既にビジネスとして成立している。
さてこのような状況下で、どうすればネット上の評判の健全性・有用性を担保できるのだろう。

アメリカにWOMMA=ウォンマと呼ばれるNPOがある。Word Of Mouth Marketing Associationの頭文字で、クチコミマーケティング協会と訳せよう。このWOMMAは、クチコミを広めるに当たっての倫理基準を定め、その基準の採用を企業やブロガーに呼びかけることを通じで健全化に寄与しようとしている。
たとえば、その倫理基準の中の特徴的なものとして「Honesty ROI」がある。
ROIは投資収益率にあらずして、Relationship、Opinion、Identityのそれぞれの頭文字。
ブログの筆者ととりあげる題材との関係、つまり、商品の提供や報酬があるなら正直にその事実を明示すべき(Relationship)、自分の意見をはっきりと述べるべき(Opinion)、自分の正体を偽ってはならない(Identity)。以上3つの正直を守る原則を意味している。
それぞれのブログが「Honesty ROI」を宣言し表示することを推奨し、信頼度の高いサイトを増やして行こうとの取り組みである。
確かにこの原則を守れば「Pay Per Post」の投稿も消費者にとって有益な情報となり、信頼性も増すはずだ。新聞雑誌の記事体広告のノンブルに【PRのページ】と表示されているのを目にすることは多いが、これをネットに適用したものといえるかもしれない。
このWOMMAの取り組みを参考に、日本の風土にマッチした倫理基準の検討を進めようとの動きが、昨08年暮れから浮上してきた。(http://womj.jp/)
面白いのはいかにもネットらしく、この問題に関心を持つ有志が個人の立場で集まり、横に広がりつつあることだ。今年前半には日本版のたたき台をまとめようとしている。
この動き自体がどれだけの広がりを持ちうるかは未知数だが、ネット評判の健全な発展のためにはこのような努力が地道に重ねられることが必要だろう。

「電凸(電話突撃)」が企業を襲う

2008年10月01日 14時08分34秒 | PR戦略
ユーザーや株主を名乗り、企業に問い合わせや見解の開示を求める電話が増加している。これらの中にはインターネットの掲示板や専門ユーザーサイトが組織的に架電を煽り、企業の対応結果を公表する活動が含まれている。
これは電話突撃、略して「電凸」とよばれる。日本広報学会は9月19日に、この問題に詳しいジャーナリストの佐々木俊尚氏、ブロガー藤代裕之氏を講師に迎え、この問題を巡り広報塾を開催した。
今回、電凸が注目されたきっかけは、毎日新聞の問題。毎日新聞の英語版サイト「Mainichi Daily News」のコーナー「WaiWai」に、公序良俗に反するわいせつ記事が、アクセス稼ぎのために数年間にわたりチェックないまま掲載され続けていた事件である。
今年6月にJ-CASTニュースが『毎日新聞英語版サイト「変態ニュース」を世界発信』と題する記事を配信。これがヤフーのトピックスにも紹介されたことで、一挙に注目を集めた。
2ちゃんねるなどの掲示板にスレッドが立ち、その書き込み内容を整理した「まとめサイト」も現れた。グーグルやヤフーで「毎日新聞」と打ち込むと、同時に検索されることの多いキーワードとして「まとめ」が提示される始末だ。
毎日新聞は、当該サイトを閉鎖し、関係者の処分、検証記事の掲載、謝罪などを行ったものの、対応が手ぬるいとしてネットの批判をいっそう煽ることとなった。
藤代氏によると6月30日には2ちゃんねるにアクセスが集中し、一時サーバがダウンする騒ぎだったという。この炎上のエネルギーはそのまま電話突撃に向かう。広告主に電話で問い合わせを行い、広告掲載の中止を暗に勧奨する運動が展開されたのだ。
「まとめサイト」には、事件の経過や、問題記事の再録と並び、毎日新聞のサイトや本紙に出稿しているスポンサーのリスト、電凸のマニュアルなどが掲出された。「事前に質問項目メモをまとめろ」「カスタマーセンターではなく広報につないでもらえ」「抗議ではなく、質問を重ねろ」など懇切丁寧な内容である。
こうして毎日新聞のサイト「毎日.jp」への出稿スポンサーが狙い打ちにされ、7月半ばには「毎日.jp」への広告出稿が途絶え、自社広告で埋め尽くされる異常事態に追い込まれた。
佐々木氏によると、この間240社の広告主が電凸の対象となったという。
企業の広報担当から見れば嵐に巻き込まれたようなものである。突然の電話への応対は、直ちに掲示板に書き込まれ、それが「まとめサイト」に転載される。応対の巧拙によっては第2第3の電凸を招くことになるのだ。
時あたかも6月には、隣国の韓国でも李明博大統領に好意的との烙印を押された中央日報・東亜日報・朝鮮日報に対し広告出稿妨害のための電凸が展開されていた。
こうしてみると、ネット内のサイトで同調し、電話で企業に「質問という形式での異議申し立て」を行い、その成果をサイトでシェアする電凸は、いまや日韓を通じて日常的な手段となろうとしているのかもしれない。
今後、様々な局面で企業広報は電凸への対応を迫られることになるだろう。ソーシャルメディアの発達は、企業と社会や顧客との間に、新たな緊張感を生み出しつつある。

オピニオン・ショーケース

2007年02月16日 23時27分12秒 | PR戦略
日本広報学会は3月2日に、宝塚造形芸術大学の新宿キャンパスで、第2回オピニオン・ショーケースを開催する。

オピニオン・ショーケースは、若手・異分野研究者や実務家からの今日的課題を巡る問題提起を受け、参加者を交え自由闊達かつ濃密な議論を行おうとするもの。
毎年秋に開催される研究発表大会が、『研究成果』を発表する場であるのに対し、オピニオン・ショーケースは『問題意識』を投げかけ忌憚なく議論する場として位置づけられる。

今回は、広報40年の大ベテラン、バーソン・マーステラの副社長などを歴任された八木誠さんに冒頭の特別報告として、経営トップの広報面での役割を語っていただく。これにつづく4つの会員発表は、いずれも大学院での研鑽を積まれている気鋭の研究者から、実務と理論の双方への目配りを踏まえたそれぞれの問題意識を発表してもらう。
全体を通じて、広報領域の新しい息吹を感じ取れるものになるだろう。

詳細は、http://showcase.wikiwikiweb.jp/へ。

世耕議員とブロガー懇談会

2005年12月30日 22時54分33秒 | PR戦略
年末になり世耕議員のTV出演が増えている。
年末に出版された著書「プロフェッショナル広報戦略」にテレビが飛びついたということだろうか。
世耕議員が師走のロシア出張中に、時差ボケを利用し深夜に校正を済ませたという、特急出版のタイミングがうまくフィットしたようだ。

たまたま、ロシアからの帰国直後、12月12日にインタビューして書いた記事が28日発売の「PRIR」に掲載された。
この号には、IPRAのグランプリをとった電通PRの花上君、ガ島通信の藤代さん、東洋大学の井上邦夫助教授、愛・地球博への出向から戻った青田君、その愛・地球博でプロデュースしたシンポジウムに招聘したシャンドウィック北京のデビッド劉氏などが登場。

さて、世耕氏には1時間ほどインタビューしたが、記事に出来たのは、紙面の都合により、その10分の一ぐらいでしかない。記事に出来なかったところでエキサイティングな話しが多くある。

その中でも気になっているのがブロガー懇談会。
これまで2回開催されたが、今後も年に5~6回のペースで開催したいという。
また、長期的にはブロガーに対し自民党本部への入館証も発行し、政調部会の傍聴も視野に置きたいとのこと。
平河クラブからの反発の可能性をたずねると、何かしらの軋轢があったとしても乗り越えるべき障害だと思うとの返事。
鎌倉市や長野県で始まった記者クラブの液状化現象がいよいよ永田町をも見舞うかもしれない。
政治ニュースの一次情報が市民に公開されるということだ。

もし、ブロガーが自民党本部を闊歩するようになると、その動きは民主党に波及し、地方自治体からも追随の動きが出てくるだろう。
平河クラブの(そして既存ジャーナリズムの)弱点は、政局報道になると必要以上に張り切るのに、政策報道にはからきし弱いところだ。いまでも自民党は政策マターは平河クラブではなく各省庁の記者クラブで発表する傾向がある。

民主党もシンクタンク「プラトン」をたちあげ、自民党もシンクタンクの慣らし運転を開始している。今後は政策報道の重要性が増すだろう。
にもかかわらず、既存ジャーナリズムはポスト小泉の政局動向ウォッチングに地道を挙げる体質から脱皮できないだろう。
おろそかになる政策報道をカバーするのが興味本位でテーマを追いかける個人ブロガーなのではないか。、
とはいえ、個人ブログがビジネスとしては成立しがたいことは、泉あいさんの状況が示唆していると思う。
オーマイニュース型は日本ではうまくいかないだろう
と湯川鶴章さんは指摘する。ぼくもJANJAN、ライブドアPJ、ツカサネットなどパブリックジャーナリストを抱え込んだオーマイニュース型の組織ジャーナリズムは日本では困難だと思う。
求められているのは、ボランティア精神に裏打ちされた“独立した”個人ブロガーをつなぐ仕掛けであり、そのビジネスモデルではないだろうか。

世耕議員のインタビューに続き、今回の衆院選で自民党広報の戦略パートナーとして「コミュニケーション戦略チーム」にも参加したプラップ・ジャパンの矢島社長にもインタビューを行ったが、こちらは口が堅かったですねえ。
まあ、黒子としての配慮は当然でしょうね。

スケート連盟はむざむざチャンスを逃すのか

2005年12月19日 23時33分53秒 | PR戦略
浅田真央がロシアのスルツカヤを抑え、GPファイナルで優勝した。
国際スケート連盟の年齢制限規定に3ヶ月満たない15歳の浅田のオリンピック出場問題がにわかに注目を浴びたが、なぜか国際スケート連盟も日本スケート連盟も消極的だ。
国際スケート連盟のチンクアンタ会長は「日本スケート連盟から申請があれば、理事会・総会を開き検討するが、日本スケート連盟からその動きはない」と語り、日本スケート連盟の城田憲子フィギュア強化部長は「一人のために総会の開催を要求するのは非現実的」として動こうとしない。
浅田真央のトリノ見送りの流れは既にできているようである。
ところで城田強化部長の及び腰はなぜなんだろう?
今回は3人の代表枠に浅田のほかに5人の候補がひしめきあっている。それぞれの選手とコーチに対する配慮なのか。
トリノからバンクーバーに向けての長期戦略の一環なのか。

PRの視点から見たとき、今回の浅田の世界一は、日本スケート連盟にとっての願ってもないチャンスである。たしかに安藤美姫というスターを擁してはいるものの、安藤・浅田の2枚看板が揃えば、トリノでの高視聴率は疑いない。子どもたちのフィギュア熱も高まり、裾野が広がるだろう。
少なくとも、世界スケート連盟への申請は行うべきである。
トリノで日本選手がメダルに届かなかったときのエクスキューズにもなるはずだ。
それに、スケート界のドン堤義明を不祥事で失ったいま、失地回復の足がかりになるのではないか。
日本のマスコミは浅田問題を追いかけるはずだ。これにより世界スケート連盟マターからIOCマターに格上げになる。
欧米のメディアも浅田の世界一の実績から無視できまい。女子フィギュアは冬季オリンピックの華なのだ。

札幌の銅メダリスト、ジャネット・リンは日本中の注目を集めた。
サラエボ、カルガリーで2連覇を果たし引退したカタリナ・ビットは、リレハンメルオリンピックで復帰したものの7位に終わった。
しかし「花はどこに行ったの」の曲にあわせ、ユーゴ内乱で廃墟となったサラエボへの思慕の思いと平和の尊さとを訴えた彼女の演技は、世界中の感動を誘ったのだ。
オリンピックの女子フィギュアはこれまでさまざまな物語を紡いできた。
浅田がカルガリーでも好調を保っている保証はない。
オリンピックがスポーツの至高の祭典であるならば、彗星のように登場した新たなる物語の担い手、浅田真央を欠くのは余りに惜しい。






テレビ報道よしっかりしてくれ

2005年11月02日 07時02分34秒 | PR戦略
ガ島通信さんの「自民党の「第2回メルマガ・ブログ作者との懇談会」に行ってきた」によると、ガ島さんの
『小泉劇場は自民党広報本部の演出なのか、マスコミが作り上げたものなのか』の質問に対し、

>世耕議員は『小泉劇場はマスコミが作り上げたもの。小泉さんは天才、特に言葉に関しては、
>ので(広報本部が)触れないし、機嫌が悪くなる。だから入閣できなかったのかな(笑)』
>『(NTT広報の経験から)経済部と政治部は全くやり方が違う。経済部は裏取りをする。
>役員や大株主、監督官庁、取引先、それらに聞いて(事実関係を)固めたうえで、紙面に載せ、スクープにする。
>政界は、杉村(太蔵議員)さんでもニュースになる。新入社員が会社の入り口で話したことがニュースになってしまう。
>いい悪いは別にして、イージーに、相当いい加減に紙面づくりしている。
>それに、政策はテレビがまともに取り上げてくれない。障害者自立支援法案でも…、
>細かな部分は報道してくれないからテレビに頼っていると無理だ。』

自民党(というよりも取材対象の組織)がマスコミを演出なんてできません。
しかし、戦略をたて、それに則って行動することはできます。
その戦略にまんまとのっかってしまったマスコミのレベルの低さこそ問題だと感じています。
特にテレビ。
杉村太蔵くんを名簿に載せてしまった党本部の見識不足こそ批判すべきですし、現行の選挙制度の問題点を明らかにすべきであるにも拘らず、言動や表情が画になる杉村君ばかりを追いかけます。
これに対し自民党のとった広報戦略は、神奈川の参議院補選で川口候補の応援をさせたり、被災地に派遣したりしました。
結果として、杉村君は自民党の「困ったちゃん」から、自民党の広告塔への出世を遂げたのです。
ね、考えてみれば、まんまと戦略に乗せられてしまったテレビのワイドショー報道ってレベル低いでしょ。

井脇ノブ子っていうピンクおばさんがよくブラウン管(って古い表現か!)に登場するのはなんで?
ピンクのコスチュームだからってだけでしょう。
このおばさんの背後にいて今回見事論功行賞で入閣をなしとげた二階俊博氏の戦略のほうをクローズアップして欲しいなぁ。



変貌する中国の新聞事情

2005年07月02日 15時59分40秒 | PR戦略
最近の中国の新聞の変化には驚くものがあります。
昔は人民日報とか、解放軍報など、政府や軍の機関紙が中心だった中国の新聞ですが、社会主義市場経済の流れの中で規制緩和が進み、各社が一斉に収益を追求しはじめています。
その結果、いくつかの顕著な傾向が出始めました。

まずは、新聞の増加。
20年前は150紙にすぎなかった新聞が、いまや2000紙を数えるに至りました。
それぞれの新聞が激烈な部数競争を繰り広げています。

そのための戦術のひとつは「別題字戦術」。
北京では人民日報が「環球時報」や「京華時報」などの大衆紙を出し、
上海では歴史のある文匯報が「新民晩報」という夕刊紙で売上げ部数を伸ばしています。
古くからの新聞社が、別の題字の新聞で勝負しているのです。
特に夕刊が娯楽記事を中心に人気を得ています。
例えて言えば、産経新聞社が「夕刊フジ」に社運をかけているような状況です。

もう一つの戦術は、「宅配戦術」。
日本では存続が危ぶまれる宅配ですが、「広州日報」や「北京青年報」が始めた宅配は部数増に大きく貢献し、各紙があいついで導入。上海では宅配専門会社が2社、各紙の宅配を請け負っています。

続く戦術が「過激記事戦術」。
最初にこの戦術を採用した「北京青年報」は、日本の「東京スポーツ」を研修で訪れ、この戦術を思いついたといわれています。
イエロージャーナリズムに近い飛ばし記事が大衆の圧倒的な支持を獲得し、部数を大幅にのばしました。
そして、これら新聞の絶好の話題が日本バッシングであるといえましょう。

部数増がもたらすメリットは、購読料だけでなく、広告費収入にも直結します。
新聞広告費は01年の2050億円から、03年の3160億円に、5割を超える成長を示していますが、部数の多い新聞ほど広告集めのためには有利です。

しかし、より、微細に見ると、都市部の新聞に広告が集中していることに気がつきます。
四川省で見ると、省全体をカバーする「華西都市報」は部数70万部。これに対し成都で発行されている「成都商報」は60万部で、華西都市報に及びません。
しかし、広告収入は、成都商報が4億元を売上げ、華西都市報の3億元を上回っているのです。

今、中国の新聞広告の主力は、不動産広告。不動産広告を打つには、四川省全域より、成都市内の方が効率がいいことは容易に理解できます。
広告を引き金として、朝刊から夕刊の時代を経て、都市報の時代に突入しているのです。

最近の中国の新聞事情に饒舌すぎたかもしれません。
重慶のサッカーの時の騒ぎも、今回の教科書騒動も、あるいは尖閣諸島にかかわる反日の動きも、このような新聞のセンセーショナリズムが深くかかわっていることを申し上げたかったのです。
もちろん、新聞だけでなく、テレビの変貌も著しいですし、インターネット掲示板も、雑誌も日に日に変化し、世論形成に大きな影響を与えています。

さて、このような状況を前に、中国進出の日本企業はどう対応すればいいのでしょう。中国の現地に広報の拠点を設けることが重要になっています。

欧米企業は海外進出に当たっては必ず広報の専門スタッフが当初から現地に派遣されます。
しかし、日本企業の多くは、進出に際して広報スタッフが参画することは稀で、何かあると東京にお伺いを立てるケースが多いようです。
当然、現地の状況を把握できず、意思決定に時間がかかり、何かあっても対応が後手後手になってしまいます。
先日の反日行動の際も、騒ぎが大事にならなかったから良かったものの、充分な危機管理体制をとれずに手を拱いていた企業も多かったようです。

01年のことですが、中国青年報という新聞は「中国人の日本人に対する感情は、大変複雑かつ懐疑的である。よって、欧米企業に比べ日本企業は中国においてなおさらPR活動をする必要がある。しかし残念なことに、日本企業は中国におけるPRの認識が欠如している」と記事で指摘しています。

日本広報学会はこのような状況下での日本企業の対応のあり方を探るため、中国の広報の総本山である中国公共関係協会はじめ諸方面から講師を招聘し、「広報が創る相互理解~日中交流の対話と共創」の統一テーマのもと、日本中国それぞれの広報のエキスパートによる国際シンポジウムを開催します。
最新の状況を踏まえた、生々しい話しが聞けるでしょう。

催事の概要はhttp://www.edogawa-u.ac.jp/~hamada/expo/にホームページを設けています。

久しぶりのエントリー

2005年06月23日 15時18分22秒 | PR戦略
前回のエントリーが5月の連休の最後だから、1ヶ月半このブログをほったらかしにしていた。
これ以外にいくつかブログを運営しているが、そのいくつかは細々と続けていた。

なぜ、ブログを書かなかったというと、バタバタしていて書けなかったという、はなはだ散文的な理由。
8月に愛・地球博で中国にスポットを当てた、広報、PR関係のシンポジウムを仕掛けており、その準備が最盛期を迎えていたというのが実態だ。
そのシンポジウムの概略は、ここを見て欲しい。
出来れば見るだけでなく、ぜひ参加してほしいところだ。

昨日、万博会場内にある「メディアセンター」で記者発表をすませたので、これ以降、中国公共関係(中国ではPRのことをパブリックリレーションズの直訳でこう呼ぶ)事情を整理してみよう。