一年経ったね。思い起こせば去年の今頃は、1年過ぎてもまだコロナ禍にあるなんて考えてもみなかったな。
SARSやMERSそして今回のCOVID-19とすっかり有名どころになったコロナウイルスだけど、猫飼いの世界ではもっとずっとずっと以前から
猫コロナウイルスというやつは恐ろしい存在だった。そのお仲間がニンゲン世界においても生活を一変させるほどの脅威になったってわけだ。
新型コロナウイルスCOVID-19が世の中を席巻し始めた頃、ふと思い出したことがある。
ひとつは栗本薫氏の著作 『黴』 1983年初版発行の「時の石」という短編集の中の1編で、初めて読んだのは…かれこれ30年は前になるかな。歳バレる(笑)
その中の1節。
「人びとは、はじめのごく短いあいだは、あまりそれを真剣にとろうとはしなかった。なぜなら、他のものと異なり、それはあまりにも人類にとって身近で
長い年月を共生してきたものだったからである。」
そして黴が世界を静かに覆っていくさまに主人公は
「昨日まで自分のものだと信じて疑いもしなかった世界をー昨日そうであった通りに、明日も、あさっても、そのままずっとつづいてゆくと
ばかり信じていた世界をゆっくりと見回した。」
ニンゲンは、地球上において、明日のことさえもわからない存在だ。それがこの1年で世界中の人たちがはっきりと理解した唯一のことだと思う。
そしてふたつめ。猫伝染性腹膜炎…FIPは猫飼いを震え上がらせる呪文だ。
私は経験がないが、猫の先輩方も大親友も、猫コロナウイルスが引き起こすこのFIPという病気で大切な仔たちを空に還した。
基本、私は何ごとも経験派だが、FIPに関しては経験せずにこれたことが幸せだと思える。
そのFIPについて10年以上前に、それこそ猫の大先輩がブログに残してくださった幾つかのエントリ。
当時もFIPについて本当にわかりやすく拝読し、そして人の医療よりも遅れがちな動物医療の発展を祈ったものだが。
はなちん先生のblogはここからドゾ
エントリの中で大先輩は書いている。
FIPの本態は「サイトカインストーム」で(種の特異性から猫には効くわけないとしながらも)「抗リウマチ薬が原理的には凄く効くと思う」
まさかそれが、2020年。猫の世界でなく、対新型コロナウイルスの、ニンゲンの世界で現実になるとはね。
『黴』の終盤 主人公は、旅立つ(もしこれから読んでみようと思う方いらっしゃたらネタバレごめんなさい)
「それはふいうちをくわせたけれども、ちゃんとまた、うろたえた巨人にひとすじのチャンスはのこしておいてくれたのだ。」
ほどなく始まるワクチンの接種、日々研究と開発が続けられる新薬、また現場でデータが蓄積されていく既存薬剤の数々。
そしてなによりも 大切なヒトを守りたい という思い。
チャンスはある。生きている自分こそが希望。
さて、日々のことを書き始めると、まー止まらないのよ、愚痴がw
うちの施設はまぁなんとか新型コロナウイルスから今のところ逃げ続けて…いや、感染者が出ていないというだけで実はがっつり捕獲されているか。
家族が勤める療養施設で感染者が出て、同居家族がその対応にあたらざるを得ない。自宅にウイルスが入るかもしれない、家族が感染するかもしれない不安。
自分も感染するかも…なによりも自分がスプレッダーになってしまうことへの恐怖と不安。キツイ。ホントに気持ちがキツイ。
そうして同僚のナースが辞めていった。
病院はもちろんだけれど、介護施設なんて元々ギリギリの人数でまわしている。ましてやこのコロナ禍だ、消毒やガラス越し面会…あれやこれやと
通常外の業務や対応が山積み。だけど仲間は減っていく。
これまでは急変したり、お看取りの時期が重なって残業が続いてたけど、今は違う。
リアルに勤務時間が延長されたシフト組まれてる。残業じゃない。もうね、笑っちゃう。歳だねー階段の往復で膝も笑っちゃう。
感染者が出ていなくても、コロナウイルスは確実に息の根を止めにきてる。じわじわとね。
うちの施設におけるコロナワクチンの接種は、ナースも含めて高齢者施設の括りで行うのでもう少し先になる。法人内のクリニックの職員は先行接種。
正直に書けば、効果のほどはまだまだ分からないと思ってる。でも打ったら少しだけ気持ちが楽になるかもな。
ただ接種が始まることで新しい面倒がもりもりっと起きてきそうな予感がしている。
多いんだよね…「ワクチン打ったら自由に面会できますよね?」って家族。
いや、そんなことないからね。ワクチンはひとりひとりの体の中で、抗体を作らせるためのいわばスイッチャーに過ぎない。
社会の中で、ひとりひとりの体の中の抗体が安定したシールドとして機能するまでは、やはり「距離」を保つことが一番。
静岡県は、変異種発見の影響もあって先月5とした県独自の警戒レベルを4へと引き下げたが、うちの施設はガラス越し面会を継続だ。
そろそろまた次の面会の準備しなくちゃだなー。会いたい気持ちと感染させたくない気持ち。どちらも叶えるのは難しい。
そんなこんなで、もはや底をつきそうな気力を体力でカバーする日々が続いてる。
保護部屋のニッキさんは低空飛行。まぁね、あの膵炎からよくリカバリしたと思うし、FIVの影響もでてると思うしね。
確かなことはわからないけど、出会ってから少なくとも15年は経つわけだから、まぁそこそこいい歳ではある。
眠る時間が長くなり、少しずつ食べる量が減り。けれど食べないわけじゃない。食べる根気というかな―それが無くなっていく感じ。
湯煎したシニア用ウェットを自力で食べられるだけ。そのあと表情を見ながら高カロリーちゅーるを強制給餌。
使うものがちゅーるだということと下僕の雑な性格もあり、5mlのシリンジに1/2本入れ、1mlぐらいずつ流し込んでいくことを繰り返す。
実に上手に飲むのよ、ニッキさん(笑)
あと加齢による腎不全の進行があるから、週1程度で水を背負わせで脱水を軽く補正。
この冬は下僕の不在時間も長くなって、温度管理がムズいので服を着てもらってみた。
くっついて寝ているのは「うっしー」ニッキさんの保温担当w
最初の1日ちょっと苦戦していたけど、そこからはちゃんと着こなしてる。えらいぞ、ニッキさん。
お互いに無理はしないで、楽しくいこう。
が…服を着こなすニッキさんを横目に思いがけず下僕の涙腺が崩壊。
ぶっちゃん、逢いたいなぁ。
今年の冬も外で頑張る子たちは、あと3匹。
下僕、がんばらんとね。
SARSやMERSそして今回のCOVID-19とすっかり有名どころになったコロナウイルスだけど、猫飼いの世界ではもっとずっとずっと以前から
猫コロナウイルスというやつは恐ろしい存在だった。そのお仲間がニンゲン世界においても生活を一変させるほどの脅威になったってわけだ。
新型コロナウイルスCOVID-19が世の中を席巻し始めた頃、ふと思い出したことがある。
ひとつは栗本薫氏の著作 『黴』 1983年初版発行の「時の石」という短編集の中の1編で、初めて読んだのは…かれこれ30年は前になるかな。歳バレる(笑)
その中の1節。
「人びとは、はじめのごく短いあいだは、あまりそれを真剣にとろうとはしなかった。なぜなら、他のものと異なり、それはあまりにも人類にとって身近で
長い年月を共生してきたものだったからである。」
そして黴が世界を静かに覆っていくさまに主人公は
「昨日まで自分のものだと信じて疑いもしなかった世界をー昨日そうであった通りに、明日も、あさっても、そのままずっとつづいてゆくと
ばかり信じていた世界をゆっくりと見回した。」
ニンゲンは、地球上において、明日のことさえもわからない存在だ。それがこの1年で世界中の人たちがはっきりと理解した唯一のことだと思う。
そしてふたつめ。猫伝染性腹膜炎…FIPは猫飼いを震え上がらせる呪文だ。
私は経験がないが、猫の先輩方も大親友も、猫コロナウイルスが引き起こすこのFIPという病気で大切な仔たちを空に還した。
基本、私は何ごとも経験派だが、FIPに関しては経験せずにこれたことが幸せだと思える。
そのFIPについて10年以上前に、それこそ猫の大先輩がブログに残してくださった幾つかのエントリ。
当時もFIPについて本当にわかりやすく拝読し、そして人の医療よりも遅れがちな動物医療の発展を祈ったものだが。
はなちん先生のblogはここからドゾ
エントリの中で大先輩は書いている。
FIPの本態は「サイトカインストーム」で(種の特異性から猫には効くわけないとしながらも)「抗リウマチ薬が原理的には凄く効くと思う」
まさかそれが、2020年。猫の世界でなく、対新型コロナウイルスの、ニンゲンの世界で現実になるとはね。
『黴』の終盤 主人公は、旅立つ(もしこれから読んでみようと思う方いらっしゃたらネタバレごめんなさい)
「それはふいうちをくわせたけれども、ちゃんとまた、うろたえた巨人にひとすじのチャンスはのこしておいてくれたのだ。」
ほどなく始まるワクチンの接種、日々研究と開発が続けられる新薬、また現場でデータが蓄積されていく既存薬剤の数々。
そしてなによりも 大切なヒトを守りたい という思い。
チャンスはある。生きている自分こそが希望。
さて、日々のことを書き始めると、まー止まらないのよ、愚痴がw
うちの施設はまぁなんとか新型コロナウイルスから今のところ逃げ続けて…いや、感染者が出ていないというだけで実はがっつり捕獲されているか。
家族が勤める療養施設で感染者が出て、同居家族がその対応にあたらざるを得ない。自宅にウイルスが入るかもしれない、家族が感染するかもしれない不安。
自分も感染するかも…なによりも自分がスプレッダーになってしまうことへの恐怖と不安。キツイ。ホントに気持ちがキツイ。
そうして同僚のナースが辞めていった。
病院はもちろんだけれど、介護施設なんて元々ギリギリの人数でまわしている。ましてやこのコロナ禍だ、消毒やガラス越し面会…あれやこれやと
通常外の業務や対応が山積み。だけど仲間は減っていく。
これまでは急変したり、お看取りの時期が重なって残業が続いてたけど、今は違う。
リアルに勤務時間が延長されたシフト組まれてる。残業じゃない。もうね、笑っちゃう。歳だねー階段の往復で膝も笑っちゃう。
感染者が出ていなくても、コロナウイルスは確実に息の根を止めにきてる。じわじわとね。
うちの施設におけるコロナワクチンの接種は、ナースも含めて高齢者施設の括りで行うのでもう少し先になる。法人内のクリニックの職員は先行接種。
正直に書けば、効果のほどはまだまだ分からないと思ってる。でも打ったら少しだけ気持ちが楽になるかもな。
ただ接種が始まることで新しい面倒がもりもりっと起きてきそうな予感がしている。
多いんだよね…「ワクチン打ったら自由に面会できますよね?」って家族。
いや、そんなことないからね。ワクチンはひとりひとりの体の中で、抗体を作らせるためのいわばスイッチャーに過ぎない。
社会の中で、ひとりひとりの体の中の抗体が安定したシールドとして機能するまでは、やはり「距離」を保つことが一番。
静岡県は、変異種発見の影響もあって先月5とした県独自の警戒レベルを4へと引き下げたが、うちの施設はガラス越し面会を継続だ。
そろそろまた次の面会の準備しなくちゃだなー。会いたい気持ちと感染させたくない気持ち。どちらも叶えるのは難しい。
そんなこんなで、もはや底をつきそうな気力を体力でカバーする日々が続いてる。
保護部屋のニッキさんは低空飛行。まぁね、あの膵炎からよくリカバリしたと思うし、FIVの影響もでてると思うしね。
確かなことはわからないけど、出会ってから少なくとも15年は経つわけだから、まぁそこそこいい歳ではある。
眠る時間が長くなり、少しずつ食べる量が減り。けれど食べないわけじゃない。食べる根気というかな―それが無くなっていく感じ。
湯煎したシニア用ウェットを自力で食べられるだけ。そのあと表情を見ながら高カロリーちゅーるを強制給餌。
使うものがちゅーるだということと下僕の雑な性格もあり、5mlのシリンジに1/2本入れ、1mlぐらいずつ流し込んでいくことを繰り返す。
実に上手に飲むのよ、ニッキさん(笑)
あと加齢による腎不全の進行があるから、週1程度で水を背負わせで脱水を軽く補正。
この冬は下僕の不在時間も長くなって、温度管理がムズいので服を着てもらってみた。
くっついて寝ているのは「うっしー」ニッキさんの保温担当w
最初の1日ちょっと苦戦していたけど、そこからはちゃんと着こなしてる。えらいぞ、ニッキさん。
お互いに無理はしないで、楽しくいこう。
が…服を着こなすニッキさんを横目に思いがけず下僕の涙腺が崩壊。
ぶっちゃん、逢いたいなぁ。
今年の冬も外で頑張る子たちは、あと3匹。
下僕、がんばらんとね。