桜陰堂書店

超時空要塞マクロス(初代TV版)の二次小説です

終章

2008-06-01 17:27:53 | 第38話「たびたち ON THE WAY」
 9月1日、メガロード01はアポロ基地を飛び立ち地球へ向った。
メガロードは各大陸を周り移住者達を収容していく。そして9月25日、マク
ロスシティ近郊の特設ステージに降り立った、最後の移民収容だった。

 9月30日、午前9時45分。
 未沙は第一種軍装に身を包みデッキへ出た。すでに輝、副長のスミス中
佐を始めメインスタッフはデッキに整列している。
 未沙はスタッフ全員を見渡すと命令した、 
 「全員、見送りの方達に敬礼!」
 皆が遠く離れた、特設ステージに向って敬礼する。3万人近い見送りの人
達、見物の人々、そのステージの前の方には、二人にとってかけがいのな
い人達が並んでいた、グローバル、マックス、ミリア、ヴァネッサ、キム、シャ
ミー、そしてクローディア、彼らもまた敬礼を返していた。
 未沙は皆の顔を見ていた、クローディアがこちらに向って敬礼している。
 心の中で未沙が声を掛ける、
 「行って来るわね、クローディア」
 やがて未沙は敬礼を終え、ブリッジ入口に向って静かに歩き出した。


 地球周回軌道
 「こちら、艦長の一条です。艦内の皆様にお伝え致します、本艦はこれより
地球周回軌道に乗り地球を周回致します。そして一時間後の11:00に本艦
は太陽系外に向けフォールドする予定です。私達の故郷、地球とは暫くのお
別れになると思います。それまで、私達の故郷をゆっくりとご覧頂ければと思
います」
 未沙はマイクを置くと、ブリッジの全員に言った、 
 「カウントダウン30分前まで、手の開いてる人、開かない人は無理にでも
開けて、地球を見ていて構いません」
 3分の2程のスタッフが窓へ駆け寄る、残りの者も、入れ替わり立代わり窓
の所へ来た、やがて未沙もスミス副長、シューラ航海長と共にやって来た。ブ
リッジの遥か下、青い地球が輝いている、艦は今、赤道上をインド洋から太平
洋に向かっていた、未沙の目に自分の生まれた日本が見えて来る、やがて、
先程飛び立ったマクロスシティのあるアラスカも遠くに見えて来た。
 ブリッジ内は話し声もなく静かだった。

 輝は護衛隊の大サロンで、スカル大隊及びスタッフ、その家族達のお別れ
パーティの中にいた。
 初め賑やかだったパーティも、やがて、二人、三人と窓の側に固まり、その
うち皆が幾つもの大きな展望窓へ集まった。時間が経つにつれ、ここも段々静
かになっていく。
 輝は隊員達に囲まれ黙って地球を見ていた。

 ミンメイは最初一人で地球に別れを告げるつもりでいたが、そのミンメイの周
りに一人、二人とファンが集まりだした。それでも、集まった人達はただ、ミンメ
イと一緒に地球に別れを告げようとしただけで、ここも、やはり静かだった。
 やがて艦内放送が短く流れる。
 「フォールド開始、30分前」
 誰かが、ミンメイに声を掛けた、
 「ミンメイさん、一曲だけでいいですから歌ってくれませんか、私達の為に」
 ミンメイは立ち上がり、皆を見渡し優しく頷いた。
 広い展望室の一角に彼女の柔らかい歌声が響きだす。

   星の砂の満ちる海
   あたたかい陽を照り返す
   小さなオアシス わが故郷 緑の地球よ

 

 未沙、輝、ミンメイ、それぞれの場所で時間が過ぎていく。
 カウントダウンの間隔が短くなっていった。

 「フォールド開始、600秒前」
 ブリッジ内に航海長の声が響いた。
 スタッフは既に皆、持ち場に座ってフォールドに向け最終チェックをしている。
 
 「300秒前」
 10秒毎のカウントダウンの知らせが艦内に流れていく。
 艦内の者は皆、窓外の青い地球に見入っている。
 60秒前、カウントダウンが1秒刻みになった。

 10秒前・・・5,4,3,2,1、
 艦長席から、落ち着いた未沙の声がした、
 「メガロード01、フォールド開始!」




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 AD2022、春。アラスカの今は名前を変えたマクロスシティガーデン。1本
の桜の花の下に人影があった。
 輝、未沙、8才になった未来、そしてクローディア。
 4人は満開の桜の花の下、穏やかにその花を見上げていた。


                                       (完)

1 コメント

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Unknown (Unknown)
2009-05-10 17:32:05
2008-06-29 09:35:39
出航のときは、乗員乗客それぞれの心に去来するものがあったはずで、シンプルな表現の中にもそれを感じることができ感動しました。
気持ちが一つになる時って、静かになるんでしょうね、こんな風に。
いいですね。
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