新装版 真説宮本武蔵 (講談社文庫) | |
司馬 遼太郎 | |
講談社 |
表題作をふくむ短編集です。
『真説宮本武蔵』は、武蔵をまったく神格化していないところが面白いですね~。
宮本武蔵の実像は、謎です。小説の書き手によって、描かれ方がぜんぜん違います。この小説の武蔵は、出世欲を持ちながらそれが満たされない不遇の男として描かれています。
剣で名をあげた武蔵は、就職先をさがして各地で自分を売り込みます。でもうまくいきません。
なぜか?
武蔵が考える武蔵と、世間が考える武蔵にギャップがあったからです。武蔵は剣士ではなく将になることを望みました。でも、世間が武蔵に期待したのは、将としての才ではなく、剣士としての腕前でした。
そのギャップが、武蔵を苦しめたんですね。
表題作「真説宮本武蔵」のほか、「京の剣客」、「千葉周作」、「上総の剣客」、「越後の刀」、「奇妙な剣客」が収められています。
>武蔵は剣士ではなく将になることを望みました。
>でも、世間が武蔵に期待したのは、将としての才ではなく、
>剣士としての腕前でした。
現代にも当て嵌まりますよね。
①兵士としては優秀 → 有能な営業マン
②兵に将たる器(兵の将) → 主任(係長)から課長クラス
③将に将たる器(将の将) → 部長級以上
会社の人事でこの任用を誤ると、本人にとっても
会社にとっても不幸なことになります。
一担当者として優秀で、同僚と比較して抜群の
成績である社員がいたとしても、組織人として
人を束ねる能力は別物です。
実務に長け、管理能力に問題がある人は、上位の
管理職に就くよりも、同位中の上位者として、
地位よりも報酬面で報いてあげた方がいいですね。
実際に最近は、自ら手にした役職のプレッシャーに
耐え切れずに、降格を願い出る人が多くなっています。
(一般企業にもありますが、特に学校の先生、公務員
に多いとか)
中間管理職として、上から押さえられ、下から突き上げられ、
更には、自分の家庭や時間も犠牲にすることを強いられ・・・
耐えに耐えて、やがては鬱を発症するならば、その方が
賢明かも知れませんね。
そうですね、現代にもあてはまることですよね。
わかりやすいお話ありがとうございます。
本人にとっても組織にとってもしあわせな適材適所が実現できれば、一番いいですね。