前回の補遺で、今ひとつ納得いかないというか追及できないことがあった。それは、祖父・藤平氏の名前のことだった。その後、新聞報道のみならず、図書館から借りてきた袴田巌死刑囚の冤罪に関する本を紐解いても、例外なく橋本藤作となっているのである。どうしたことだろう。またまた私の早とちりだったのだろうか、と不安になった。そんなことはないと思いながら、昨日、4度目の墓地訪問をした。しかし、やはり何度指をなぞっても、橋本藤平だった。ほっとすると同時に、なぜこんなことになったのだろうかと再度自問した。
墓に刻まれた名前に絶対間違いないと仮定しよう。前回も述べたが、藤作氏は藤平氏の先代に当たるのではないかと推定した。理由は、藤作氏は昭和元年(1926)に70歳で亡くなっているが、藤平氏の前の代の箇所に彫られていたからである。確かに順序的には、藤平氏の前に、昭和4年に亡くなった橋本安次郎・いち夫妻の名前が彫られてはいる。ところが、何歳で亡くなったのかもわからないし、隣の妻・いちさんに至っては、いつ亡くなったのかも彫られていない。
だから、どうもかれらは、藤雄氏の叔父夫妻だったのではないだろうか。つまり、藤作氏の弟夫婦だったのだろうと推察できるのだ。
藤作氏が亡くなった時、藤平氏は36歳だった。もし、藤作氏の代から味噌醸造業に従事していたとすれば、藤平氏がそのまま家業を継いでも何も問題なかった。が、おそらく藤作氏の弟である安次郎氏も家業を手伝っていたのだろう。そう考えれば、なぜ弟夫婦もこの墓に葬られているのか納得できるのである。
それでは、なぜ藤平氏を藤作氏と報じたり、のちのち書かれた本にもそう記載されたりしているのだろうか。それは、たぶん藤作氏が味噌醸造という家業を始めた人物だからではないだろうか。そのため周囲の人たちには、橋本家の「こがね味噌」といえば、藤作さんと等号だったのではないだろうか。
要するに、藤作氏の名前は屋号のようになっていたのではないだろうか。より具体的な例をあげれば、西郷隆盛の名前である。西郷の通称は吉之助だが、当時の実名である諱(いみな)は隆永(たかなが)であった。それでは、現在どうして隆盛という名前で知られるようになったかというと、明治になって新しい戸籍制度が導入されるときに間違いが起こったのである。
当時の戸籍調査員が、聞き取りのため西郷家を訪問すると、西郷も西郷の実名を知っている家人も不在だった。そこで調査員は、仕方なく近所の誰かにその実名を尋ねると、「隆盛どんじゃなかと?」と、西郷の父親の名前を答えたらしい。今から考えれば笑い話だが、吏員もそれをそのまま西郷の名前として戸籍簿に記入し、それがそのまま西郷の「実名」として流布されてしまったのだ。
墓に刻まれた名前に絶対間違いないと仮定しよう。前回も述べたが、藤作氏は藤平氏の先代に当たるのではないかと推定した。理由は、藤作氏は昭和元年(1926)に70歳で亡くなっているが、藤平氏の前の代の箇所に彫られていたからである。確かに順序的には、藤平氏の前に、昭和4年に亡くなった橋本安次郎・いち夫妻の名前が彫られてはいる。ところが、何歳で亡くなったのかもわからないし、隣の妻・いちさんに至っては、いつ亡くなったのかも彫られていない。
だから、どうもかれらは、藤雄氏の叔父夫妻だったのではないだろうか。つまり、藤作氏の弟夫婦だったのだろうと推察できるのだ。
藤作氏が亡くなった時、藤平氏は36歳だった。もし、藤作氏の代から味噌醸造業に従事していたとすれば、藤平氏がそのまま家業を継いでも何も問題なかった。が、おそらく藤作氏の弟である安次郎氏も家業を手伝っていたのだろう。そう考えれば、なぜ弟夫婦もこの墓に葬られているのか納得できるのである。
それでは、なぜ藤平氏を藤作氏と報じたり、のちのち書かれた本にもそう記載されたりしているのだろうか。それは、たぶん藤作氏が味噌醸造という家業を始めた人物だからではないだろうか。そのため周囲の人たちには、橋本家の「こがね味噌」といえば、藤作さんと等号だったのではないだろうか。
要するに、藤作氏の名前は屋号のようになっていたのではないだろうか。より具体的な例をあげれば、西郷隆盛の名前である。西郷の通称は吉之助だが、当時の実名である諱(いみな)は隆永(たかなが)であった。それでは、現在どうして隆盛という名前で知られるようになったかというと、明治になって新しい戸籍制度が導入されるときに間違いが起こったのである。
当時の戸籍調査員が、聞き取りのため西郷家を訪問すると、西郷も西郷の実名を知っている家人も不在だった。そこで調査員は、仕方なく近所の誰かにその実名を尋ねると、「隆盛どんじゃなかと?」と、西郷の父親の名前を答えたらしい。今から考えれば笑い話だが、吏員もそれをそのまま西郷の名前として戸籍簿に記入し、それがそのまま西郷の「実名」として流布されてしまったのだ。
※コメント投稿者のブログIDはブログ作成者のみに通知されます