東方不敗のつぶやき

ジャッキージャンキー

飛龍伝説 オメガクエスト

2006年05月14日 | 香港電影 1986
製作年度:1986
公司:新藝城
原題:衛斯理傳奇/THE LEGEND OF WISELY
監督:テディ・ロビン
出演者:サミュエル・ホイ、ティ・ロン、ジョイ・ウォン、テディ・ロビン、ブラッキー・コー

一言:香港で有名な小説家ニー・クァン(倪匡)の"衛斯理"シリーズの一編を映画化。ニー・クァンは小説家でありながら、『ドラゴン怒りの鉄拳』や『少林寺三十六房』など多数の映画脚本も手掛け、さらにタレントとして自分の番組を持つような才人。この"衛斯理"という小説家兼冒険家なる人物を主人公にした小説は何作も書かれ、その内のいくつかが映画化されている。本作はシネマ・シティ(新藝城)が大金を投じネパールロケを敢行し、原作の持つSF描写には当時の香港映画としてはまだ珍しかったCGを多用することで映像化を試みた。しかし影は難航し、ネパールロケでは主演のサミュエル・ホイが高山病にかかり、長期療養を余儀なくされる事態となった。さらに、そのサミュエル・ホイと共演のジョイ・ウォンとの間に不倫疑惑が発生し、映画は完成前からスキャンダルにまみれた。製作開始から2年、ようやく公開に漕ぎ着けたものの、シネマ・シティが期待したほどの興収を上げるには至らなかった。私は原作を知らないのでオリジナルが持つティストがどこまで再現されているのかは分からないけれど、当時としては結構頑張った特撮映画だったと思うよ。ただ全体としてはあまり面白かった印象はない。ってか、ほどんど何も憶えてないなぁ~ 劇中サムが乗っていた青いフェラーリはカッコ良かったけど。実際、サムとティ・ロンの共演ってだけで、結構魅力的だと思うし、それに題材も香港版"インディ・ジョーンズ"てな感じでそれなりに楽しめそうに思うんだけどね。でもなぜかあまり良かった印象はないよ。

新Mr. Boo! 香港チョココップ

2006年05月04日 | 香港電影 1986
製作年度:1986
公司:嘉禾(許氏)
原題:神探朱古力/CHOCOLATE INSPECTOR
監督:フィリップ・チェン
出演:マイケル・ホイ、アニタ・ムイ、リッキー・ホイ、シベール・フー、ロイ・チャオ、チャーリー・チャン、馮克安、タイポー、マイケル・チョウ、フィリップ・チェン

一言:マイケル・ホイがゴールデン・ハーベスト(嘉禾)傘下で撮った最後の映画。一時期距離を置いていた三男リッキー・ホイが前作『お熱いのがお好き』でのゲスト出演に続き、本作で本格的に再合流。やっぱマイケル&リッキーのコンビはイイよ。マイケルは毎度お馴染み、上に弱く下には強い嫌味なキャラで、空威張りとドジばかり。でも人情味ある意外な一面を見せ、最終的には事件をまるく治める。でもそんなマイケルよりも本作では、マイケルと無理やりコンビを組まされる新人婦警アニタ・ムイ姐がかなり良かったりする。劇中"ミスコン"に応募してる設定で、アニタの父親でありマイケルの上司でもあるロイ・チャオと父娘、事件そっちのけで"ミスコン"巡るドタバタを展開する。そこでのムイ姐ときたら、なかなか見られない可愛らしさが溢れてる。実は意外とお若いムイ姐(実はマギーと同い歳)だけど、他では何か貫禄のようなモノを感じちゃうからね。まぁこの映画の見所はムイ姐の愛らしさ、かな。まぁ映画としても決してつまらなくはなく、香港ではちゃんと年間トップ10に入るヒットを達成し、マイケルの変わらぬ人気を証明しております。

検事Mr.ハー 俺が法律だ

2006年04月27日 | 香港電影 1986
製作年度:1986
公司:嘉禾(泰禾)
原題:執行先鋒/RIGHTING WRONGS
監督:ユン・ケイ
出演:ユン・ピョウ、シンシア・ロスロック、メルビン・ウォン、ユン・ケイ、ロイ・チャオ、午馬、樊少皇、ジェームズ・ティエン、ポール・チャン、タイポー、鍾發、錢月笙、徐蝦、劉秋生、カレン・シェパード

一言:ユン・ピョウ製作、主演によるハード・アクション。サモの"寶禾"、ジャッキーの"威禾"に続くユン・ピョウのスタープロ"泰禾"の第一回作品でもある。まぁとにかく、自分の会社の処女作ということでユン・ピョウは大はりきりで、殊アクション・シーンのテンションの高さ、密度の濃さは、同時期のジャッキー作品のそれに勝るとも劣らない程。そしてシリアスでハードなストーリー展開にも目を見張らされる。正直本作におけるユン・ピョウの頑張りは特筆に価すると思うよ。そしてユン・ピョウと並んで、"パツキン"クンフー、シンシア・ロスロックもその真価を存分に発揮し、大活躍。時々髪の毛の色が黒くなって"ダブル(替身)"バレバレなのは、まぁご愛嬌。とにかくユン・ピョウ&シンシアのアクションは全編に渡り見応えあるよ。コレ香港ではソコソコのヒットになったみたいだけど、ユン・ピョウ主演のこうした硬派なアクション映画は再び作られていはいない。後にシリアスなドラマ『オン・ザ・ラン(亡命鴛鴦)』が製作されたが、あれはアクション映画とは言えなかった。出来れば本作のようなアクション映画を再びユン・ピョウ主演で製作して欲しかったものだよ。まぁストーリーに好き嫌いは生じるかもしれないけど、個人的にはコレかなり好きな一作だよ。ちなみに本作の欧米版は、あまりに救いのないアジア版とは異なるラストになっているとか・・・

ファイアー・ドラゴン

2006年04月24日 | 香港電影 1986
製作年度:1986
公司:徳寶
原題:龍在江湖/LEGACY OF RAGE
監督:ロニー・ユー
出演者:ブランドン・リー、マイケル・ウォン、レジーナ・ケント、チャーリー・チャン、マン・ホイ、ヤン・スエ、ン・マンタッ、谷峰、カーク・ウォン、シン・フイオン、ブラッキー・コー、ケン・ロー

一言:昨日関係各位の計らいで、ブランドン・リー(李國豪)に関する嬉しい映像を目の当たりにする機会に恵まれインスパイアされたので、今回はブランドン君がその生涯でたった一本だけ主演した香港映画について記す。
ブルース・リーの死から13年、ブルース・リーファンにとって唯一最大の希望であった愛息ブランドン君が遂に映画界へデビューすることになった。デビューの地は、"聖地"香港。当時ゴールンデン・ハーベスト(嘉禾)、シネマ・シティ(新藝城)に続く、香港映画界の新興勢力に躍進していた制作会社D&B(徳寶)と契約したブランドンは、安易に父ブルースの道程そのままを歩むことを良しとせず、敢えてクンフー映画ではない独自の路線で映画界を進もうとした。ミシェール・キング(ヨー)に続く看板スターを求めていたD&Bとしても、香港映画界に託された"龍の遺産"を最大限にバックアップするべく、彼らが揃えられ得る一線級のスタッフを用意し万全の体制で製作に臨んだ。監督は後にハリウッドデビューを果たすことになるロニー・ユーがあたり、スタントチームにはあのスタンリー・トンもいたらしい。だが、いまだブルース・リーの偉大すぎる影響下から抜け出せていない香港映画界、そして地元の映画ファンはやはりブランドンにブルース・リーを求めたのだった。しかし全てにおいてアメリカナイズされ、またまだ若くヤンチャ盛りだったブランドンにはその期待に応えることは不可能だった。そんな彼とブルース・リーの面影を求める"香港"との間には、この時点ではまだまだ埋め難い大きな隔たりが存在した。そんな状況で撮られた映画は、決して駄作ではなかったが、かと言って傑作とも言えなかった。同年の『男たちの挽歌(英雄本色)』の大成功の影響を多分に受けたと思われる作風はいささかオーソドックス過ぎ、また銃火器をメインとしたアクション、復讐を核に展開する凄惨なストーリーは、観客の求めるニーズとは一致しえなかった。少なからずブルース・リーを意識したシーンを垣間見せてくれたことは、ブランドンから我々ブルース・リーファンへの嬉しいプレゼントだったが、個人的にも本作にそれ以上のモノを感じることは出来なかった。D&Bはミシェール・キング共演による次回作をブランドンのために用意していたとも聞くが、それが実現することはなく、"香港"に自分の居場所を見付けられなかったブランドンは傷心の帰米を余儀なくされたのだった。既にブルース・リーが死して10年以上の歳月が流れていたものの、あのブルース・リーの息子と言えば、香港でもそしてプロモーションで訪れた台湾でも、彼らの英雄である父親のことばかりをうんざりするほど聞かれただろうことは想像に難くない。
その後数年、苦労して遂にハリウッドメジャー主演の座を掴んだブランドンは晴れやかな表情でこう言った。"香港映画のアクティブな部分は好きなので、ハリウッド映画でその味が出せるように頑張ります"と。さらに自身のアクションについて、"父やジャッキー・チェンのアクションを参考に自分の映画に取り入れた"とも。そう言い残したブランドンの悲劇的な死から数年、ハリウッドはこぞって香港映画的アクションを取り入れた作品を製作していくことになる。正にブランドンが言っていたその言葉を、ハリウッド全体が実践しているかのように。しかし、大ヒットとなったそれらの作品に本来主演しているはずだった彼の姿を我々が目にすることは、もはや永遠に叶わなくなっていた。映画界は、そして世界中の映画ファンは、ブルース・リーの息子というだけでない、かけがえのない大きな存在を失ってしまっていたのだった。

北京オペラ・ブルース

2006年04月15日 | 香港電影 1986
製作年度:1986
公司:新藝城(電影工作室)
原題:刀馬旦/PEKING OPERA BRUCE
監督:ツイ・ハーク
出演者:ブリジット・リン、チェリー・チェン、サリー・イップ、マーク・チェン、張國強、ケネス・ツァン、チョン・プイ、午馬、谷峰、黄蝦、李海生

一言:香港映画界を代表する監督であるツイ・ハークの代表作であり、その数ある監督作にあって最も評価される一作。そして香港映画黄金期を彩ったトップ女優、ブリジット・リン、チェリー・チェン、サリー・イップの顔合わせはもうそれだけで贅沢で、それこそが本作最大の見所だ!特に我がブリジット様の魅力的なことと言ったら・・・思わず眩暈が・・・(アホ) とにかく、この一作を機に、中華圏において"男装の麗人"は"美的化身"に続く、ブリジット様の代名詞になったのだった。
しかしながら実を言うと、個人的にはコレそんなに好きな映画ではなかったりする。ツイ・ハークの映画にはありがちなんだけど、何かイマイチ面白味が伝わって来ないんだよね~ 辛亥革命やら袁世凱やらのセリフが飛び交う物語はいささか取っ付き難く、その辺は後の"ワンチャイ"シリーズにも感じられた、個人的にイマイチのれない部分。そんな風に物語の枠組は大きそうに見せてるんだけど、実はその中でやってることは、次元の低い色恋や金銀争奪など欲に絡んだ案外小さいことが多かったりして、何かなぁ~って感じ。個人的にはこういうのでなく、別に高尚でなくてイイんで、『皇帝密使』や『金玉満堂』みたいな純粋なエンターティメントの方が好みだよ。また、チン・シウトンによるアクションも一般的には結構評判良いみたいだけど、一連のジャッキーアクションに馴染んだ当方にはあまりピンと来なかったなぁ。でもまぁハッとするようなイイシーンもあるよ。サリーの京劇に対する想いを映し出してみせるシーンとか、登場人物達それぞれが出会い友情を育む過程とか、3人がお酒飲んでまどろみながら地球儀を囲み祖国や自分自身に対する想いを話すとことかね。
でも何だかんだ言って、個人的にはブリジット様の凛々し過ぎるその勇姿を堪能する映画かな、コレは。

サンダーアーム 龍兄虎弟

2006年04月07日 | 香港電影 1986
製作年度:1986
公司:嘉禾
原題:龍兄虎弟/THE ARMOUR OF GOD
監督:ジャッキー・チェン
出演:ジャッキー・チェン、アラン・タム、ロザムンド・クァン、ローラ・フォルネル、ケニー・ビー、アンソニー・チェン、カリーナ・ラウ、ジョン・ラダルスキー

一言:撮影中ジャッキーが死にかけた事で有名な一作。何と当時日本では、そのニュースがテレビ速報で流れたらしい。80年代、いかにジャッキーが日本で人気を博していたか伺わせる、今となっては信じ難いエピソードだ。そんなこんなで完成した映画の方は、その頃しばらく警官役が続いていたジャッキーが、ノーテンキ(?)な冒険家"アジアの鷹"に扮し世界を股にかけた活躍を見せる。今にして思えば、ストーリーもそれ程悪くないし、キャラクターは結構魅力的だし、アクションもそれなりに充実している。その他にもアジアを代表する香港のトップシンガーアラン・タムを共演者に迎えたり、"007"ばりの改造車を登場させてのカーチェイスがあったりと、なかなか楽しめる要素は揃っている。しかしながら最初に観た時は少なからずガッカリしたね。前作『ポリス・ストーリー』があまりに素晴らしくすっかり魅了されていた私は、それをさらに凌ぐ傑作を期待していたものだから。どうしても、ストーリーの甘さ、テンポのタルさ、そして印象的なアクション・シーンの欠如など、前作に対する見劣り感は否めず、正直なところ鑑賞後の満足度はあまり高くはなかった。またジャッキー映画としては異例の、いつにないアダルティな雰囲気に当時の私は正直馴染めず、若干の拒否反応に近い気持ちすらあった。
まぁ何はともあれ、再起不能とも言われた怪我から無事復帰を果たしたことは喜ばしく、また結果的にはこの大怪我によってジャッキーのスタント神話が完全に確立されることとなった。とにかくファンにとってもジャッキー本人にとっても、映画そのものとは別の部分で記憶に残る一本となったことは間違いない。

霊幻道士2 キョンシーの息子たち

2006年04月05日 | 香港電影 1986
製作年度:1986
公司:嘉禾(寶禾)
原題:僵屍先生續集 僵屍家族/Mr.VampireⅡ
監督:リッキー・リュウ
出演者:林正英、ユン・ピョウ、ムーン・リー、鐘發、ビリー・ロー、ジェームズ・ティエン、劉秋生、胡楓、曹達華、王玉環、馮淬帆、午馬、黄一飛

一言:前年地元香港でヒットし、そして日本でも話題となった『霊幻道士(僵屍先生)』の続編。何と日本では、前作が公開されたと同じ年の内に公開された。ユン・ピョウを主演に迎えてのこの続編は、その日本市場を意識したものだったのかもしれない。ただ内容は随分と変わった。まず現代が舞台となり、また"ベビーキョンシー"なんぞを登場させ、完全にホノボノ路線を狙っている。その結果、前作に存在した得たいの知れない感はなくなり、またテンポもユルくなり果てた。前作は映画としてそれなりの評価を得たが、本作はその辺の路線変更が不評で、作品に対する評価は総じて低い。しかしながら、そうした要素が功を奏したのか、またもや映画はヒットし、そして日本では"キョンシー"はさらに広く浸透していったのだった。当時お子ちゃまだった私も、一作目よりもこの二作目の方が、とっつき易かった印象はある。ユン・ピョウ&ムーン・リーと、それを見守る(?)ラム道士もイイ感じで、個人的にはコレ、全然嫌いじゃないよ。
それにしてもしかし、『神話』『SPIRIT』が軒並み興行的に苦戦を強いられている今の日本では、かつて香港映画が洋画に紛れて普通に劇場公開され、また頻繁にTV放映されて一般に認知されていたこの頃が、正直懐かしいよ・・・

男たちの挽歌

2006年04月01日 | 香港電影 1986
製作年度:1986
公司:新藝城(電影工作室)
原題:英雄本色/A BETTER TOMORROW
監督:ジョン・ウー
出演者:ティ・ロン、チョウ・ユンファ、レスリー・チェン、エミリー・チュウ、レイ・チーホン、ケネス・ツァン、シン・フイオン、田豊、石燕子、ツイ・ハーク、ジョン・ウー

一言:香港映画史に燦然と輝く伝説の映画。その歴史的位置付け、周囲に及ぼした影響は、アジア映画界にとってあのブルース・リー登場以来の衝撃と言える。事実、地元香港ではその後の映画界の潮流を大きく変えるとともに、日本においてもそれまでの香港映画のイメージを覆し、あらゆる層にまたがる新たな香港映画ファンの獲得に大きく貢献した。またその評判はアジアはもとより遠く欧米にも伝播し、比類なき完成度で世界中の目の肥えた映画ファンを唸らせた。コレ以後、同系列作品が次々と製作されることになるが、そのどれ一つとして本作を超えることは出来なかった。(ってか当然だ!)
出演者は皆イイ!とにかくイイ!!本来脇役であったはずのチョウ・ユンファは、その神々しいまでの存在感とカッコ良さで本作を完全に自分の映画としてしまった。これ以前も、演技者としては優れたものを評価されながらヒット作に恵まれなかったユンファは、この一作で一気にブレイク。"金像奨"では共演のティ・ロンを退け最優秀主演男優賞を受賞し、"亜州影帝"の称号を得てスーパースターの道を突き進むことになる。本来主役であるティ・ロンだって決して負けてはいない。男の悲哀、辛さ、シブさ、そしてカッコ良さ等多方面で魅力全開で、これまたヤバイよ。かつては"ショウブラ(邵氏)"の大スターでありながら、80年代はヒット作から見放され台湾へ都落ちしていたティ・ロンは、コレで第一線に華々しくカムバックを果たし、伝統の"台湾金馬奨"では見事最優秀主演男優賞の栄誉を得る。そしてレスリーも小憎らしくて、儚げでイイんだなぁ~ "モニカ"の大ヒットで、アイドルとしては確たる地位にあったレスリーだったが、本作をキッカケに演技者として大きく開眼することになった。またレスリーの唄う主題歌は心に染み入り、非常に印象的。男の映画の中にあって、紅一点エミリーはとてもキレイ。幸薄い役だけど彼女の出てる場面は心休まり、束の間ホッとさせてくれるね。そしてチーホン!彼は本作最大の功労者かも。前半の小者振りとその後のなり上がり振りのギャップ、憎々しくてホントイイ。全く同情の余地がないくらい徹底的に憎まれ役やってくれたお陰で、他の"ノワール"モノと一線を画してるとこもあると思うよ。また、それ以前にも多くのヒット作を手掛けながら職人監督の地位に甘んじてきた結果、所属していた"ゴールデン・ハーベスト(嘉禾)"と衝突し台湾へと追われていたジョン・ウーは、解き放たれたかのように自身の作家性に目覚めるとともに、独自のスタイリッシュな映像、語り口を確立し、一躍ハリウッドさえもが注目する存在となっていく。そしてプロデューサーとして作品をまとめ上げたツイ・ハークはその名を不動のものとし、以後絶頂期を迎えた香港映画界を先頭に立って牽引し、様々なトレンドを産み出すことになる。
ストーリーには寸分の隙なく、エモーショナルに訴えかけてやまない映像はケレン味溢れ、心を揺さぶり、これ以上ない程にカタルシスを発散させてくれる。チョウ・ユンファのスタイリッシュなガン・アクションは、血生臭い殺戮シーンを美しくすら見せる。
出来上がった作品は、コレに結集した全ての人々が、それぞれのベストの働きをして見せたその記録をフィルムに焼き付けた結果だ。1986年の夏期に公開された香港では、圧倒的なまでの支持を受け、堂々と興行新記録を達成!そして後々、現在に至るまで人々の心に深く刻み込まれた。同時代のあらゆるモノを巻き込んだ正に伝説の一作であり、そのインパクトは後の『インファナル・アフェア(無間道)』の比ではない。
日本でも、香港公開より約一年後の1987年春に劇場公開されるも、残念ながら不発。しかしながら、当時普及し始めたレンタルビデオ店に並ぶと口コミでその評判が伝わり広く一般に浸透、そして改めて評価されることとなった。結果日本でも、圧倒的な魅力を見せたチョウ・ユンファは大人気となり、ブルース・リー、ジャッキーに続く、第三の香港スターと認識されるに至った。さらに香港映画そのものに対する世間一般の見る目をも変えさせたのだった。
私も香港映画好きの端くれとして、コレが話題になった当時からその存在は知っていた。そして日本公開から2年後の1989年3月、高校受験間際にTVロードショーにて初鑑賞し、そして打ちのめされた。とにかく素晴らしかった。丁度同じ頃何かで、当時の香港映画界について書かれた記事を目にした。"今香港では、チョウ・ユンファの人気がジャッキー・チェンのそれを圧倒している" 確かに、その頃のジャッキー映画には既に、以前のような面白さ、高揚感は感じられなくなっていた。そしてそれを無意識の内に誤魔化しながら、ジャッキーの新作を観ていた自分がいた。そんなジャッキーを尻目に、この傑作とチョウ・ユンファのカリスマ的な存在感を突き付けられ、今以上に熱狂的なジャッキーファンだった当時の私は、ユンファをジャッキーの敵と位置付け(笑)、以来チョウ・ユンファの映画を長らく敬遠することになるのだった。後にそんなこだわりを捨て、ユンファの映画もほとんど観ることになるんだけどね。
とにかく様々なモノ、想いが結集した一大"マスターピース"であり、80年代後半から90年代初頭にかけての、香港映画最後の黄金期の幕開けを告げる作品だった。

クラッシュ・エンジェルス/失われたダイヤモンド

2006年03月29日 | 香港電影 1986
製作年度:1986
公司:嘉禾(威禾)
出演:扭計雜牌軍/NAUGHTY BOYS
監督:チン・シンワイ
出演:ベティ・ウェイ、カリーナ・ラウ、マース、クラレンス・フォ、ロー・ワイコン、ビリー・ロー、フィリップ・コー、馮淬帆、タイポー、ポール・チャン、チャーリー・チョー、尹發、銭月笙、ルイ・フォン、マイケル・ライ、リッキー・ホイ、ジャッキー・チェン

一言:ジャッキーの会社ゴールデン・ウェイ(威禾)が製作し、ジャッキー映画でお馴染みの、"みんな大好き"マースが主演した"ゆるーい"アクション・コメディ。これが実際相当な"ユルユル"具合だったりするんだけど、その辺も含めて個人的には結構好きなんだよなぁ~(笑) そしてさらに個人的な好みで申し訳ないんだけど、ここでもベティ・ウェイがイイ!やっぱイイ!!これっぽちも良いとこがあるように思えないマースを一途に想い、カワイくて、オマケに功夫もキレて、非常に魅力的。ホント凄くイイんだよ~(アホ) 映画としては、ジャッキー映画を"何十分の一"かにスケールダウンしたようなアクションにはあまり見応えなく、コメディ・シーンもあまり笑えず・・・で、はっきり言ってほとんど見所はない。ちなみにコレ、後にウォン・カーワイに見出されトップ女優へと躍り出ることになるカリーナ・ラウの映画デビュー作で、少なからずアクションもやらされてる。だけどこの人、全く魅力的とは思えない。にも関わらず劇中のマースときたらなぜかこのカリーナに"メロメロ"で、ベティに見向きもしないんだよ。そんなマースの気持ちはホント理解出来ないけど、とにかく心地よいユルさとベティ・ウェイのお陰で、個人的には意外と好き。

皇家戦士

2006年03月17日 | 香港電影 1986
製作年度:1986
公司:徳寶
原題:皇家戰士/ROYAL WARRIORS
監督:デビッド・チャン
出演:ミシェール・キング(ミシェール・ヨー)、真田広之、マイケル・ウォン、パイ・イン、仁和令子、チャーリー・チャン、林威、チョン・プイ、ケネス・ツァン、ブラッキー・コー

一言:押し寄せる時代の波に逆らえず、遂に製作をストップした老舗邵氏(ショウ・ブラザーズ)に代わり、80年代嘉禾(ゴールデン・ハーベスト)、新藝城(シネマ・シティ)に続く、香港映画界第三の製作会社に躍り出た徳寶(D&B)製作によるアクション映画。主演は同社の看板スターミシェール・キング。そして相手役には日本が誇る唯一無二のアクション・スター真田広之を招聘し、さらにはD&B一押しの若手マイケル・ウォンが参加。日本ロケも敢行した、骨太なアクションが展開される。しかしそんな主演陣よりも、むしろ敵役が濃くてイイ!パイ・イン、チャーリー、林威等の、戦時下で結ばれた男達の友情、侠気なんかがイイんだなぁ~ まぁやっていることは相当極悪非道なんだけどね。ミシェールのアクションや若々しさはそれなりに魅力的で、またマイケル・ウォンのお調子者なとこや、敵の手に落ちビルから吊るされ、思いを寄せるミシェールのために、自ら落下し命を絶つシーンなんかは衝撃的でそれなりに記憶に残ってはいる。しかし真田さんは大してアクションしてた印象はないし、終始暗くてイマイチだったなぁ。映画全般も暗くて後味も良くなく、個人的にはあまり良い印象はない。真田さんや悦ちゃんには、この頃かこれ以前に、彼等にふさわしい香港アクション映画に是非とも出て頂きたかった!