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FC東京好き(サッカー&バレー)の元雑誌編集者で現在はテレビ番組記者。仕事よりも東京優先なライフスタイル謳歌中。

駆けぬけた奇跡

2007-10-31 02:32:16 | 超私的ブックレビュー
久々に読んだスポーツ系ノンフィクションでしたが、すげ~面白かった。
天皇杯のパンフレットで過去の決勝戦の頁を見てると、明らかにあまり聞いたことのないようなチームがあったので気になっていた。ひとつは第60回の準優勝“田辺製薬”。田辺は当時日本リーグ2部所属ながら決勝まで駒を進めたそうで、当時はこれも凄い快挙だったろう。
そしてもうひとつが第54回準優勝の“永大産業”。本作はその永大産業の創部から廃部になるまでの物語。チームの立ち上げ、そして県の3部リーグから勝ち上がり、日本リーグ2部、そして1部昇格とまさにサクセスストーリーなのだが、その裏ではちょっとこんなの書いて大丈夫というような、裏工作まであって当時の日本サッカー黎明期の様子が端々に垣間見られる。結局最後は親企業の経営難にあって廃部という数年前のフリューゲルスやJFLに所属していたNKK、コスモ四日市、西濃運輸と同じような運命を30年近く前に経験していた一チームの軌跡が非常に精巧に書かれていた。
正直、著者の名前は聞いたことがなくて特別サッカー専門の書き手ではないらしいのだが、よく調べてあるしサッカー好きな人が読んでもまったく不快には思わないだろう。ゴメン、『ヒロミズム』なんかより数倍読み応えがあったし、またひとつサッカーの知識が得られたことでとてもいい勉強になりました。

評価:★★★★★