華氏451度

我々は自らの感性と思想の砦である言葉を権力に奪われ続けている。言葉を奪い返そう!! コメント・TB大歓迎。

足元が揺れる気配

2006-09-04 03:20:38 | 憲法その他法律

 

 既に次期総理の椅子が約束されたかのように見える安倍官房長官が、総理に就任したあかつきは憲法と教育基本法の改定を最優先課題と考えると明言した。(ずっと下のほう、◇◇◇以下にニュース記事をコピーしておくので、まだキャッチしていない方はご参照下さい)

 ついにここまで来たか、と思うのは私だけではあるまい。 「強い国幻想」を持つ政治家達は、過去にも大勢いた。憲法や教育基本法を変えたいと思う政治家達も大勢いた。だが誰一人成功しなかったその企てに、満を持して挑もうとする男が登場する。

 私は小泉政治についても「コイズミという変人が出て来て、滅茶苦茶やった」とは思わない。彼は確かにトンデモナイ政治家ではあるが、ここ数年の流れは小泉純一郎という個人だけの責任ではない。彼のような首相を生む土壌が、何年もかけて耕さ れていたのだ。小泉純一郎はいわば、出るべくして出て来た首相であった。

 同様に、安倍晋三も「出るべくして出る」首相であるのかも知れない。

 日本は約60年前にアメリカ(その他連合国)に負け、「アメリカのパシリになるのが利巧な選択」と悟った(?)。私がいい加減なことを言っているわけではない。たとえば麻生外相は自身のブログでそういう意味のことを書いている(かなり古い話だが、それに対して「あなたはパシリになりたかったのですね」という記事を書いた。私は愛国者ではないけれども、愛国者を自認している人達がなぜこういう発言に対して怒りを表さないのか不思議でならない)。アメリカの忠実な子分になって、集団自衛権もどしどし行使しよう。そういう国に、日本はなろうとしている。

 そのくせ、妙な自意識だけは強烈。日本の文化や伝統の美しさを声を張り上げて叫ぶ。いや、私も「愛国心」は薄いけれども、自分が生まれ育った風土や母語に対する愛着はそれなりにある。安倍晋三氏よりも、東洋的な・あるいは日本的な心に愛着を持っているかも知れない。だが私は、それを臆面もなく言おうとは思わない。なぜならそれはあくまでも個的なものであり、何の羞じらいもなく他者に押しつけるようなものではないからだ。  

 彼は「この国を守る気概」と言う。国破れても山河あり、国体よりもそこに生きている人々の方がはるかに大切だと思っている私は、こういう人物が首相の椅子に座りそうになっていることが何とも哀しい。  

 この手の問題に関しては、自分でもアホかと思うほど書いたような気がする。何度書いてもどうせ同じようなことしか言えないだろう。ランダムにいくつかのエントリを挙げておくので、万一興味を持ってくださったら暇つぶしがてらお読みください(主題がややずれているものもあるかも知れない)。ただし一応言っておきますが、「重箱の隅をつついて揚げ足をとる」目的でお読みになるのはお断りします。これは原稿料もらって書いている記事でも、研究論文でもありません。庶民の落書き、ですのでそのおつもりで。

いつのまにやら慣らされて

飼い慣らされまい

負けられないと思う日に

いよいよ「愛国心」の時代

99条の危機と愛国心

続・「上からモラル」のうさんくささ

愛国心への執念ほか

再チャレンジなどいたしません

 ◇◇◇参考資料(ニュース記事)

【安倍晋三官房長官は3日午後、盛岡市で開かれた自民党東北ブロック大会で、「大切なのは教育基本法の改正だ」と述べ、総裁選後に召集される臨時国会では、継続審議となっている同法改正案の成立に最優先で取り組む考えを表明した。】(時事通信9月3日21時0分)

 【安倍晋三官房長官は自民党総裁選(8日告示、20日投開票)で新総裁に選出された場合、党が昨年10月に策定した新憲法草案を見直し、第2次草案をまとめる方針を固めた。さきの草案のうち特に前文の表現を修正し、集団的自衛権の行使容認などを明確化する内容とする意向とみられる。(中略)同党は昨年10月、結党50年に合わせて新憲法起草委員会(委員長・森喜朗前首相)などを開き、新憲法草案を決定した。これに関連して中曽根康弘元首相は3日、フジテレビの報道番組で「(安倍氏は)『もし天下を取ったら、第2次草案を考える』と言っていた」と発言。そのうえで「『第1次草案はまだ十分ではない。集団的自衛権の問題とかいろんな問題がまだある』と言っていた。前文も直そうということだろう」と説明した。 昨年の新憲法草案では焦点の9条について、戦力不保持を定めた2項を全面改定し「自衛軍」保持を明記し、集団的自衛権の行使を条文の解釈上、事実上容認した。だが「集団的自衛権」という文言自体は盛り込まれず、党内の一部からは不満が出ていた。 また中曽根元首相が当初まとめた復古調の表現が多い前文の素案は、民主、公明両党への配慮から大幅に変更されたが、安倍氏ももともと「中曽根案」に理解を示していた。関係者によると、安倍氏は集団的自衛権行使を明確化したうえで、前文を日本の伝統、文化、歴史を強調した文章に修正したい意向だ。 安倍氏は1日に発表した政権構想で新憲法の制定を重要課題とする姿勢を鮮明にしたうえで実際の改正については「(改正の発議条件として)国会議員の3分の2以上という大変高いハードルがあるから簡単ではないが、党総裁としてリーダーシップを発揮しなければならない」と語っていた。実際の改正には時間がかかることからまずは国民投票法案の成立を優先。(以下略)】(毎日新聞9月4日3時8分)

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7 コメント

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息苦しい (morichan)
2006-09-04 13:36:18
 「経済格差」の拡大で息苦しくなっているときに、この息苦しささえ言えない社会を作ろうとする阿部氏。

 本当に、足元が揺れている気配がします。

 このままでは、ブログさえ書けない状況が直ぐそこにあります。
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Unknown (久々)
2006-09-04 23:47:15
左翼は今何故愛国心と言われるようになったか、それは左翼自身が愛国心と言うものを徹底的に破壊した反動というのが何故わからないんだろう。

左翼が歴史でついてきた嘘がネットでバレたから反中反韓に流れているのに何故わからないんだろう。

憲法改正に向かうのは、韓国や中国やロシアが武力で領土を侵しているのに、それを取り戻すことが出来ないからだと何故わからないんだろう。



小泉首相とは違い、安部氏は内政もそれなりにやってくれそうなのでちょっと期待。



http://www.sankei.co.jp/news/060901/sei103.htm

 ▽健全で安心できる社会の実現

 一、年金、医療、介護、社会福祉の一体的見直しを実施。

 一、社会保障番号の導入や徴収一元化の検討。

 一、学校、教師の評価制度の導入。

この前の話題も、安部氏は何か考えてるみたいですね。



外相も麻生さんですから、北朝鮮対策もいい感じ。

俺は日米同盟はあんまり好きじゃないけど、今すぐ切るわけには行かないから、まぁ仕方が無いと思うし。
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Unknown (華氏451度)
2006-09-05 00:46:35
久々さん

「愛国心」の問題――私個人としては愛国心はありませんが、左翼に愛国心がない、というのはあなたの偏見です。



ただ私は「I love yoy」と絶えず言い続け、人前で接吻し合わなければ相手を愛していないことになる、そういう感性は持っておりません。愛情というのは法律で規定できるものではない。民法に「家族は互いに愛し合え」「夫婦は互いに愛し合え」などと規定するのは奇妙なものですね。国に対する愛情もそれと同じことです。



「左翼が歴史でついてきた嘘」というのが何を意味しているのかわかりませんが、何かでっち上げたとおっしゃりたいのでしょうか。



>韓国や中国やロシアが武力で領土を侵しているのに、それを取り戻すことが出来ないからだと



武力で領土を侵されていますか……そうですか。軍隊が侵略してきているのでしょうか? 初耳ですね。

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Unknown (久々)
2006-09-05 19:06:42
>愛国心

ん?

http://news19.2ch.net/test/read.cgi/newsplus/1144726093/

他にも日教組の絵(嫌韓流参照)とか、朝日新聞とか……



>左翼の嘘

左翼も納得しそうなもので、南京大虐殺30万人説とか、在日の強制連行神話とか、創氏改名を強制したとか、ハングルを弾圧したとか……

タイムリーネタで、小泉外交でアジア外交はダメになったとか。

http://www.yomiuri.co.jp/politics/news/20060903it13.htm?from=top



>領土

尖閣諸島で、日本の艦に砲をむけてきました。

北方領土で漁船が銃撃され一人が死亡しました。

竹島では4000人が捕らえられ、一人射殺三人獄中死。

日本はこれに対して身代金ともいえる日韓基本条約の「経済協力金」と半島にある個人資産を全て韓国に挙げた上に、 日本国内の在日朝鮮人犯罪者を釈放しなければなりませんでした。
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愛国・売国 (喜八)
2006-09-05 20:44:52
華氏451度さん、こんにちは~。



> 「愛国心」の問題――私個人としては愛国心はありませんが、左翼に愛国心がない、というのはあなたの偏見です。



ベネズエラのウゴ・チャベス大統領は左翼であると同時に熱烈な愛国者ですね。

空挺部隊出身の元・軍人ですから、おそらく「タカ派」でもあるのでしょう。

さらにチャベスは敬虔なカソリック教徒でもあります(一般にカソリックは「反共」なのですが)。



チャベス大統領は「人間というのは『右・左』で単純に割り切れない存在である」ことの格好の見本であると思います。



それから、私から見れば華氏さんはバリバリの「愛国者」ですよ。

こういうと嫌がるでしょうけれど(笑)。



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Unknown (華氏451度)
2006-09-05 23:58:35
久々さん、

あなたはいつも2ちゃんねるの文章などをご紹介くださいますが、「どこそこにこう書いてある」というだけの話をいくら言われても私は対応に困ります。正反対のことを書いてある箇所を何倍もご紹介することも可能ですし(いちいちご紹介する暇はないのでいたしませんが)。貴君自身がどう思われるのか、せっかく書かれるなら貴君自身の生身の声をお聞かせいただきたいものです。



また「左翼の嘘」では新聞記事をご紹介いただいておりますがへ、これがなぜ「左翼の嘘」とイコールなのか私はわかりません。それから南京大虐殺や強制連行、創氏改名などは、捏造でも何でもありませんよ。日本人側の証言も残っています。南京大虐殺その他の問題は多くの方が書いておられますが、その中で1人、とほほさんという方のブログをご紹介しておきましょう。http://t-t-japan.com/blog/



喜八さん、

いつもどうも。「左翼で愛国者」という人はいくらでもいますね。むろん「右で、売国奴(この言葉は私は嫌いですが)」という人も。やや余談ですが、私は自分は右であるという人や愛国者であるという人でも、「自分の頭で考え、自分の言葉で語る」(という記事を以前書きました。笑)人とは話ができると思っています。

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Unknown (久々)
2006-09-06 19:33:03
だって自分の言葉で言えればそれでいいですけど、やたら長くなるのですが・・・

それじゃぁちょっと書いてみますか。



>左翼の嘘

あー、私の中ではまだ「左翼=自虐史観の人」って構図が抜けきってないんです。



>南京大虐殺

0じゃなかったとかはまだ研究者の中でもいろいろあったので省くが、少なくとも30万人は絶対にない。

この時点で嘘だし、こう嘘をついた時点で信用と言うものが無くなりる。

たとえ正しいことを言っていても、一回嘘をついた人間ってのは謝ればいくらか和らぐとはいえ、不信感を持たれる。



>強制連行

徴兵と徴用ね。

徴兵が半島で行なわれたのは1944年9月~1945年3月。

この間に徴用されたのは大体2000人程度。

募集や官斡旋などの移送計画全体でも32万人。

さらにその殆どが1946には本土に帰還してます。

しかも総督府はなるべく自分の意思で徴用に応じてほしいとして拒否した場合の罰則を控え、結局目標の八割程度しか徴用しませんでした。

そして終戦後、占領軍の命令によって日本政府は引き揚げ船を準備し、運賃無料、持ち帰り荷物制限230キロまでで朝鮮人を帰還させ、140万人が帰国しました。

残ったのは自分の意思で残った60万人程度の人々。



大体移送計画前から密航などで度々日本に渡っている人々を、強制してまで日本につれてくる必要性が見え当たりませんし。



そもそも、当時日本と同じ国だったんだから、徴兵と徴用が義務付けられるのが遅すぎるとすら思えますが。

(ちなみに台湾は日本と同時に行なわれてます。)



>創氏改名

創氏は強制だが、改名は許可がいて有料。

(簡単に言えば、当時の朝鮮では儒教の関係で女性には苗字が無かった。

 つまり男子のみに受け継がれるのが姓、日本の苗字みたいのが氏。

 変名が嫌だったらそのまま姓を氏として登録もできたし、創氏改名に通達をしなかった人はそうなった。)

さらに日本名禁止どころか、1911年に創氏改名をやろうとして日本風に改名する人々が意外に多く、日本人との区別がつかなくなるのを恐れて「日本風の改名禁止!」というものまで出てます。

無論、朝鮮風の名前もOKでした。
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