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華氏451度

我々は自らの感性と思想の砦である言葉を権力に奪われ続けている。言葉を奪い返そう!! コメント・TB大歓迎。

いよいよ「愛国心」の時代――教育基本法“改正”案決定

2006-04-14 01:38:22 | 憲法その他法律
教育基本法改定について12日の検討会で自民・公明両党が合意に達し、13日午後の教育基本法改正協議会で同法改正案を正式決定した。両党の党内手続きを経て政府が月内に改正案を作成、ゴールデン・ウイーク前後に国会提出される予定であるという。教育基本法改定を巡って、最も難航したのは「愛国心」の表現。自民党は「国を愛する心」、公明党は「国を大切にする心」という表現を主張していたが、最終的に「伝統と文化を尊重し、それらをはぐくんできた我が国と郷土を愛する」という表現で合意した。

新聞等では戦前への回帰を危惧する公明党に配慮してこのような表現になった――と報道しているが、どんなに飾りをつけ、オブラートにくるんでも、愛国心は愛国心。今でさえ「国を愛して何が悪い」(いえ、悪いとは言ってません。個人の自由です)とか「国を守る気概」(あなたがひとりで持つのは勝手ですが、他人に強要しないでくださいネ、頼むから)などとのたまう人達がいるのに、まかり間違って麗々しく法律の条文に書かれてしまえば、それがお墨付きになる。国を(それがどんな国であっても)愛するのが正しいことである、という価値観が固定されるのだ。

法律は「その社会の構成員が、支障なく暮らしていくためのルール」を決めるものである。心のありかたや価値観や好みの方向を、統治する側に都合のいいように決めるものでは決してない。

よく言われていることで、今さら私が言うのもナンであるが、教育基本法改定は(むろん同法ばかりではないが)憲法改定へ向けた大きな一歩。こんなふうに一方的に押しまくられ、飛車をとられ角をとられ、気がついたら王将は裸で盤の隅に追い詰められていたという事態には立ち至りたくない。


◇◇◇◇いささか長い追記◇◇◇◇
(教育基本法改定を巡って書くつもりだったが、疲れているので追記でごまかす)

教育基本法改定に関しては、2月21日のエントリ『足元が揺れている』『続・足元が揺れている』で書いた。それを一部、コピーしておく。

〈改定を推進する理由について〉
【要するにもう古くなって時代に合わない箇所があると述べ、同時に子どもを巡る問題が多出しているので教育を考え直さねばならない、と言っているわけだ。この中で気になるのは、半世紀もそのまま……という箇所(憲法に対するのと同じようなことを言っているなあ……)。これが「建築基準法」や「墓地、埋葬に関する法律」など(何でもよいが、要するに具体的な数字や手続きなどを定めた法律)なら、社会状況の変化に伴って変える必要も出てくるだろう。しかし、ものごとの「基本的な考え方」を定めた法律は、車のモデルチェンジではあるまいし、そうころころ変えるものではあるまい。国家の根本が変われば、むろん改定の必要が出てくるだろうが。】

〈愛国心の表記について〉
【以前、ブログで「私は国を愛さない」という記事を書いた。その中で確か、「国を愛するのも愛さないのもこちらの自由だ、ほっといてくれ」と書いた覚えがある。いささか乱暴な言い方だが、国というのは「先天的に無条件で」「常に何があっても」愛せるものではない。その点、親子兄弟や親族、夫婦愛人関係と同じである。自分を虐待した親は愛せないし、親戚にはひとりやふたり、顔も見たくない輩がいる。愛し合って共棲した男女(同性同士でもかまわないが)でも、さまざまな理由で憎み合いを始めることもある。国家も同じで、いくらそこに生まれ育ったからといって、気にくわない国家、自分を踏みつけにする国家など愛せるわけがない。少なくとも私はそんなマゾヒスティックな心情は持ち合わせていない(郷里も同じで、石持て追われた故郷や、ひとに言うのが恥ずかしい故郷を、どうして愛することができようか)。逆に誇りに思えるような国であれば、「どうぞ嫌ってくれ」と頼まれても愛するだろう。わざわざ「愛する心(大切にする心)を養う」などと言わねばならぬこと自体、おかしなことなのである。国が愛国心を押しつけてくるとき――その裏には、「どんな国であろうとも愛せ」(そんなアホな)という恫喝が臭っている。】

◇◇◇1日後の短い追記◇◇◇
さきほどluxemburgさんのブログ「とりあえず」の13日付けエントリ、『ブロードバンド長屋――愛国心床屋政談』を読んだ。教育基本法改定と愛国心の問題について、落語仕立てで書かれたもの。長屋の住人のトボケた対話を通して、何が問題なのか、我々は何に気づいていないのか、を過不足なくまとめてあるのに脱帽した。私がしかめっ面して書いたものより、これを読んでいただくようお勧めする。
(http://luxemburg.exblog.jp/d2006-04-13)


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