luxemburgさんのブログ「とりあえず」に、つい先日からブログを読んで突然政治に目覚めた「西園寺麗子嬢」が登場。「ばあや」に鋭い質問を連発している。二人の一見掛け合い漫才風で、本質を突いた会話は実におもしろい。「世の中の川は左から右へ流れている」(お嬢さま、政治を考える・1)なんて、思わず膝を叩いてしまう。「よそのブログに遊びに行ってもいい」とのことなので、早速、麗子嬢を我が陋屋にお招きした。でもお招きしたのはいいが、私はお嬢さま族とはどう接すればいいかさっぱりわからないので、我が家の近くをいつも徘徊しているこのあたりのボス、ムルという名の牡猫を拝み倒して対応を一任することに。
ムル:かくもいぶせきあばらやにご来駕たまわり、光栄でございます(と、うやうやしく、一応は香りのする紅茶をテーブルに置く)。
麗子:何だかわからないけれど、ご招待状をいただきましたから。ばあやは(アホが伝染るから)そんな所に行くな、と申しましたんですけれどね……。それはいいけれど、こんな所でお茶を出していただかなくてもよろしいのよ。落ち着かないし。早く応接間にご案内くださいな。
ムル:応接間も何も、あんた……いえ失礼、お嬢さま。客を通す部屋はここしかないんですが。
麗子:えええええ〜。私、もしかすると物置か、せいぜい供待ち部屋だと思いましたわ。この奥には、もうお部屋はありませんの?
ムル:奥に通りたきゃ通られてもようござんすがね。通ったら、この先は外、マンションの自転車置き場ですよ。
麗子:驚き桃の木、山椒の木。……あら、はしたないこと言ってごめんなさいませね。ところで今日は、政治のお話をってことだったんですけど、あなたが何かお話をしてくれるの?
ムル:うう、何と言えばいいのか……この家のミーハー住人が、是非お嬢様に来ていただく〜と騒いだだけでね。そのくせ、いざとなったら逃げやがって。オイラ、いや私めは急遽代役引き受けただけでやんす。でもまあ、私めも年ふりて人語を解する猫。お話の相手ぐらいはつとまるかと存じます。(何せ猫ですからね、大したことは言えませんけど、ここの住人よりはマシかも。)
麗子:ふ〜ん。まあいいわ。でも猫と難しいお話できるとも思えないし……。じゃあ麗子がちょっと考えていること、1つ2つ申し上げますわね。ひとつは最近あちこちのブログでものすごく反対している「共謀罪」ね。継続審議になったけれど、与党案というのかしら? あれを見ますと、「何これ」みたいな法律でしょう? どうしてあんなものが出てくるのかしら。もうひとつ、「今の若者は右傾化してる、保守化してる」ってよく聞きますのよね、これ本当かしら?
ムル:(このギャル、面倒臭いこと言い出しやがって)……オホン。まず共謀罪でございまするが……オイラ、いや私めが愚考いたしまするに。
麗子:オイラ、でよろしくってよ。普通にお話くださいませな。(聞いてるこっちの方が疲れるんだから、もう)
ムル:ど、どうもです。じゃあカミシモ脱いで、っと。むつかしいことはわからんので単純な言い方しちゃいますけどね、国家ってものは――権力者と言ってもいいすけど、もともと共謀、じゃなかった、凶暴なもんでしてね。ほっとくと、どんどん怪物化してくるんでやんす。これはもう、宿命みたいなもんで。
麗子:あら、そうなの。
ムル:国家っつうのは元来、人間にとって「必要悪」なんですよね。まあ猫には関係ないけどね。人間達がいろいろ決めごとしないと暮らしていくのに不便だからってんで、一応の枠、みたいなものを作っただけ。 だからナンボのもんでもないのにね、なまじ所帯が大きいのと、所属してる人間から税金集めたり罰したりできる力持ってることで、何か勘違いが起きるんだなー。勘違いして、ろくでもなく育っていっちまう。つうか、ありがたそーに飾り立てて育てる奴が出てくるんでやんす。自分が「威を借る」ための、「虎」に仕立て上げるんですワ。必要悪と言えば、オイラなんざ、法律なんぞも少なければ少ないほどいいと思ってるだす。細かいことを決めれば決めるほど、身動きしにくくなるでやんしょ。法律ってのは本質的に「切り捨ての思想」で成り立ってますからね。いや、この言い方は変かな。「縛りをかける方向」にあるもの、と言うか。つまり「あれはダメ、これはダメ」。
麗子:「あれをしろ、これをしろ」という面もあるんじゃなくって? ほら、教育基本法改定案の「国を愛する心」とか……。
ムル:そういうのも、ある意味で「切り捨て思想」でやんす。「国を愛さないのはダメ」ってことですからね。ともかくそうやって切り捨てていけば、心と言うんですかね、感性というんでしょうかね、そういう世界がどんどん縮こまっていくのはわかりきったことじゃん。ちょっと油断して飛び跳ねたらすぐ鉄条網にひっかかるなんて具合になれば、誰だってオドオド、ビクビク暮らすようになるでしょ。そうやって縮こまらせると、上の方はやりやすいんですよ。
麗子:でも、社会には「縛り」が必要なこともあるんじゃなくって? 脱税とか子供の虐待とか差別とか、好き勝手やり放題っていうのはいけませんでしょう。
ムル:それは当然のことでやんす。「やっちゃあいけないこと」はみんなできちんと決めて、縛りをかけなきゃね。基本的にはそれだけでいい、とオイラは言ってるんす。ちょっと乱暴な言い方かも知らんけど。でもね、国家というか権力者というか、ここの住人がよく使う言葉を借りれば「オカミ」はね、それだけでは満足しないんだよなー。シモジモの者を飼い慣らすために、勝手に「やっちゃあいけないこと」を拡大していくんでやんす。よっぽど用心しなきゃあダメですぜ。それからね、行動を縛るっつうのは、むろんそれも縛られる方にとっちゃあ大変なことなんですがね、それより「心を縛る」ってんですかね、頭の中や心の中を縛ることの方が飼い慣らしを進めやすいんでやんすよ。たとえばですな、お殿サンが通る時は土下座しないとアカンというのなら、そりゃシャクに障るけど、形だけ土下座しとこうかとか、お殿サンが通る時はどっかに逃げておこうとか、できますやん。でもですよ、「お殿サンに忠誠心持て。反抗的な気持ち持つ奴は悪党だ」とか言われたら、お嬢さま、どうします? 気持ちなんて、普通、湧いてくるのは止めらんからね。間違ってもそういう気持ちが湧かないよう、自分で自分を押さえつけるしかないでしょ。子供とかもそういうふうにしつけて、さ。
麗子:共謀罪が「心を縛る」とか「思想を縛る」とか言われているのは、そういうことなんですのね。でも共謀罪って、もともと国際的組織犯罪でしたかしら、それを防止する条約に批准するためとか言われてますわね?
ムル:あの条約自体、オイラなんざちょびっと疑問もあるんでやんすがね、まあそれは別の話。その条約との絡みで国内の法律を整備しなきゃいけない、としてもですよ。何で、ポーンと共謀罪に飛ばなきゃいけないんでさ? よくオエラガタが言う「諸外国」だって、共謀罪なるものが存在する国の方が少ないでやんす。オカミは「千載一遇のチャンス!」と手を叩いたな、とオイラは思うね。彼らにしてみれば、このチャンスを利用しない手はない、ってことでやんしょうね。国連がとか、条約が、とか言われたら、そうかなーとつい思うもん。
麗子:何だか随分と大雑把なお話ですけれど……(猫だから仕方ないか)……素朴なご意見としておもしろうございますわ。では次のお話……あら、何かちっちゃなものが跳んでますわよ。それ何ですの?
ムル:あっ、これは……ノ、ノミというものでやんす……。
麗子:きゃー!!!!
ムル:ちょっと待ってて。……毛を梳いて来るんで……。
麗子:やっぱり、こんな所に来るんじゃなかったかしら?(ため息)
(本日はここまで。後半に続く)











何せ世間知らずでございますから、ばあやはお嬢様が出かけるとなると心配で心配で。
ネコが登場とはジブリ風でございますね。それにネコ相手だと、麗子お嬢様はいっそう冴えているようでばあやもうれしゅうございます。
国際的条約がどうこう言って共謀罪を新設しようとした日本の政府与党ですが、代用監獄とか、子どもの権利条約とか、国際標準に及ばない条約上の政策課題は日本にたくさんあるわけです。共謀罪だけを国際的条約を楯にしてとうてい民主主義的とはいえない形で作ろうとする日本の政府与党の危なさをお嬢様にも理解していただければなあ、としもじもの私は思うわけでございます。
ひっそりと復活しました。お詫びに華氏さんご希望の著者近影、期間限定でupしてます。