華氏451度

我々は自らの感性と思想の砦である言葉を権力に奪われ続けている。言葉を奪い返そう!! コメント・TB大歓迎。

お嬢様のご来駕を(強引に)賜る・後編

2006-06-12 23:03:01 | ムルのコーナー

麗子お嬢様と牡猫ムルの掛け合い漫才、じゃなかった対話も、よろけながらやっと後編――。

(このエントリは何のことかさっぱりわからんという方は、前編中編をちらっと覗いてみてください)

麗子:ムルさん、ちょくちょく消えますわね。どこに行ってらしたの。

ムル:いや、どこって……。オイラもそれなりにバタバタしてて。

麗子:今日、変な招待状がまいりましたわよ。あなたが代筆なさったんですって? お互いにあっち行ったりこっち行ったり、忙しいですわね~。でも、ひとを呼んでおいて1週間もほったらかしなんて、ちょっと礼儀にはずれません?

ムル:(お互いフィクションのキャラだからね~って、それ言っちゃあ身も蓋もない。)面倒な話はやめましょうや、ネエちゃん。

麗子:ね、ねえちゃん……(こ、こいつどんどんガラが悪くなる……)。

ムル:それよか、もうちょいまともな話しましょうよ。

麗子:そうですわね。あら、何見てらっしゃるの?(猫がパソコンいじってるところなんて、始めて見たわ)

ムル:ちょい、気になってることがあってね。……ハムニダ薫ネエちゃんのとこで、「安倍晋三内閣官房長官、統一教会主催合同結婚式に祝電」って話が書いてあったんすよ。知ってる?

麗子:と~うぜんッ! 知っておりますわ。それこそ1週間前にブログ界を震撼させたニュースじゃございませんの。あなた、遅れてますわね。

ムル:ほっといてくれ。オイラだってそれなりに忙しいんだから。飼い猫と違って餌は自分で探さなきゃなんねぇしね、つい世の中の動きに遅れるのっ! 

麗子:(あら、むくれちゃったわ。やあね、すぐ沸く小さいポットって。)まあまあ、そうとんがらなくてもよろしいんじゃありません? 何かやましいことがあるみたいに見えますわよ。ちょっと遅れたかも知れないけれど、でもキャッチなさったのは感心だと思いますわ。

ムル:(ふん。調子のいいギャルだぜ。)ともかくさあ、ひでぇよな。いや、もちろんね、誰だって信教の自由、思想の自由ってのはあるスよ。天皇は神だと思うのも、弱い人間は殺した方がいいと思うのも、思って主張するだけならご自由にどうぞ。何を信じてもいいよ、神道でもカトリックでも創価学会でも天理教でも。アレフや人民寺院でもね。ついでに言うと、誰と付き合ってもいいよ、戸塚ヨットスクールのおじさんと付き合っても、山口組の組長とオトモダチでもさ。ただ、そういう人間が「公僕」としてどうか、っていう段になりゃ、話が別。

麗子:そうですわね。うちのばあやあたりが山口組の方とお付き合いしても、そのこと自体はどうこういう問題ではありませんものね。まあ、私は嬉しくございませんから、やめてちょうだいって言うと思いますけれども。でも、公僕ともあろう方の場合は話が違いますわねえ。

ムル:そう。コーボクがどんな思想持ってて、何を信じてて、どういう人間や組織と付き合ってるかっていうのは、国民と言えばいいかな、選ぶ側にとっては大きな問題なの。安倍の晋さんも、統一教会のシンパなら、堂々とみんなの前でそう言うべきなんでやんす。

麗子:そんなこと国民の前で大声で言ったら、支持者がドドドッと減りますわよ~。石投げられるかもですわ。

ムル:そっ。だから言わない。こそこそやってる。ずっるいよな~。って、狡いのはわかってるけどさあ。

麗子:あの人、ポスト小泉の大本命、だそうですわね。

ムル:そうだってね。ほんとオイラ、人間じゃなくてよかったと思うでやんす。「再チャレンジできる社会」だの何だのって言ってるけどさ、あの人が考えてる再チャレンジって、要するに「何度でも競争しろ」っていうだけじゃん。「イチ、抜~けた」ってのはダメ。負けても負けても、立ち上がれって。スポ根ドラマじゃねえ、っつーの。で、「チャレンジし続けている限り、あんたは負け組ではないのですよ~オーホホホ」なんて、適当にひとをなだめようとしてるんだよな。こんなイヤったらしい飼い慣らしを嬉しがるなんて、人間てほんとバカだよな。

麗子:どうでもいいですけど、あんまり人間の悪口、言わないでいただけません?(あら、私の方がむくれちゃいけないわね)

ムル:へいへい、すんません。でもさ……教育基本法改正案を「21世紀にふさわしい、日本の香りがする改正案」とかさ(※)。どーっこが、日本の香りなのかね~。
中身のからっぽな、キレイキレイな言葉をずらずら並べただけじゃん。漂ってくるのは嘘っぽい香りだけ。

※「(現行法との)最も大きな違いは、現行法では抜け落ちていた、『公共の精神を尊ぶ』『伝統・文化の尊重』『郷土や国を愛する気持ち』『生命や自然の尊重』『道徳心』『自律の精神』などを書き込んだこと。21世紀にふさわしい、日本の香りがする改正案だと思う」(夕刊フジ・6月2日インタビュー記事より)

麗子:キレイキレイな言葉?

ムル:うん。どれも言葉だけ聞けば、別に文句のつけようはないことじゃん。ま、オイラなんざ「郷土や国を愛する気持ち」とか「道徳心」とかのあたりは、ちょいとゲゲゲだけどね。まあ、ごく素直に「いいんじゃないすか?」と思う人は多いだろうし、それはそれでかまわないと思うんだよねっ。でもさ、こういうキレイな言葉ほど、中に汚いものを詰め込めるんだよな~。汚いものを隠せる、っつうか。たとえばさ、「愛する」なんてすっごくキレイな言葉でしょ。でも、そういう言葉で嗜虐心とか支配欲とか、その他いろんなものにフタしちまう奴が世の中、いっぱいいるじゃん。バラの花には棘がある、じゃないや、桜の樹の下には死体が、でもない……ええい、何でもいいや。ともかくキレイな言葉ほど気をつけた方がいい、とオイラは思ってんの。腐りかけた食べ物をそのまま出されたら誰でも眉ひそめるけど、いっぱい香料ふりかけて、豪華な皿に盛って、ついでに綺麗なトッピングでもされて出されたらさ、わかんなかったりするじゃん。オイラたちは嗅覚が利くからそんなことないけどね、人間は鼻が鈍いからな~。そう言や、ここの住人なんかその典型でね。昨日なんか、賞味期限切れのハムを半分ぐらい食べたとこで、「ありゃ。やっぱり傷んでる……」なんて言ってたよ。あいつ、やっぱし折り紙付きのアホだね。けへへ。そういうアホまで、(本でも読み散らして遊んでりゃいいのにさ)わかりもせんくせに政治に口出さずにおれないこと自体、世の中おかしいくなってることの証明だよな~。

麗子:あなたの言葉が汚いのは、そういう思想が背景にあるからですの?

ムル:うっ……(また変な突っ込みをする)……そ、それはあんまし関係ないけど。腐った食べ物を食べさせようと思う連中は、必要以上に美味そうに見せかけるってこと。とにもかくにも、ああいう男が次期総理の本命とはねえ。

麗子:じゃあ、ほかの候補のほうがよろしいの? 私は名前の挙がっている方、どなたを見ても五十歩百歩って気はしますけれど。

ムル:それが辛いとこなんだよな~。麻生の太郎君はアメリカのパシリになるのが日本にとって一番いいなんて意味のこと言ってるし、谷垣禎一っつぁんもなあ……何つうか、誰が出て来ても同じって感じはするよね。そう思ってる人、多いんじゃない? 自民党ってほんとにマイナスの人材が豊富だよなあ。薫ネエチャンじゃないけど、これが最低だと思ったら、げげ。まだ下がいたぜ~てなもんで。百鬼夜行の世界だね、ほとんど。日本はまだ世紀末が終わってねぇらしいや。日本人は谷底へ谷底へ連れてかれてるね、それも綺麗に飾った馬車連ねてさ。

麗子:なんか暗いお話になりましたわね……。でも、 「まだ間に合うかも知れない」んでしょう?

ムル:間に合うか間に合わないかは、お嬢さんたち、ここで暮らしているニンゲン様次第。「イヤだ!」という声が少しずつ増えるかどうかってとこかな。オイラは高みの見物させてもらうかンね~。

麗子:若い人の右翼化がどうの、というお話をするつもりだったんですけど、逸れっ放しでしたわね。( 類似品がたくさん出回るようになる始末と言われていることですし)麗子、そろそろ失礼いたしますわ。

ムル:えっ? もう帰っちゃうの??

麗子:ですから、忙しいと申しましたでしょ。何せ、今週はUnder the Sunの皆さまとお話することになっておりますし。では、御免下さいませ~。

ムル:せっかく仲良くなりかけたのになー。また来てよなッ。今度はどっかでクッキーでも拾って……じゃない、手に入れとくからさあ。

麗子:(もう来るか、こんな狭いとこ)

――いったん、おしまい――

コメント (4)
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