華氏451度

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お嬢様のご来駕を(強引に)賜る・中編

2006-06-06 22:38:30 | ムルのコーナー

前編(6月4日付)を読んでおられない方は何のことかわからないだろうが、麗子お嬢さま(luxemburgさんのブログ「とりあえず」に登場して人気を博しているキャラ)を陋屋に強引にお招きしている(拉致監禁したわけではないので念のため)。お相手を務めておりまするは、この地域(の猫族の間)に隠然たる力を持つボス・牡猫のムル――。

ムル:お待たせいたしました~。 退屈だったでやんしょ。

麗子:ああら、そんなことございませんわ。でも、わたくしも暇を持てあましているわけではございませんのよ。ずっとここにお邪魔しているわけにはまいりませんの(こんな狭苦しい部屋で、何で猫と向き合ってなきゃいけないのさ、もう)。

ムル:……で、やんしょうな。何か、あちこち忙しそうだし(別荘で犬連れのキコリとルソーやホッブスの話をしたり、じろりと睨まれると怖そうなおばさまの所でフランスのニュースがどうのってえ話したり。あんた、テレポートしてんのかよ)。

麗子:え? 何かおっしゃいまして?

ムル:いや、こっちのことでやんす。で、何の話でしたっけか。若者の右翼化がどうの保守化がどうのっていう話だったけかなあ。

麗子:それもありますけどね、お待ちしている間に急に思い出したことがありますの。

ムル:な、なんでやんす?(また面倒臭いこと言い出すなよな)

麗子:ご招待下さったここの住人の方、「国家」とか「国」とかいうものに拒否反応がおありですわね? そりゃまあ麗子も「国、国」って言われるのはウザイ、じゃなかった、好きではございませんけれど、どうしてあそこまでお嫌いになるのかしら?

ムル:確かにしょっ中、ほざいてますわな。国を愛さないとか私も国家を否認するとか国家に恩はないとか、その他いろいろ。ま、あいつのは自己チューから来てるんでしょうがね。あいつ、この間、公園のベンチで独り寂しくぼそぼそとシャケ弁食べてやがるんでね、そーっと近づいてシャケに手ぇ出したら、思いっきし蹴飛ばしやがった。慈悲とか愛とかいうもんがからきし無いね、あいつには。

麗子:それはあなた、無茶苦茶な論理……(何よ、この猫。私だって食べてるもの盗られたら蹴飛ばすわよン)。

ムル:いや、まあ個人、じゃない個猫的な話は置いといて、と。住人のことも置いとして、オイラが思ってることを話しまひょ。さっきも言ったけど(前編)、国家なんつーのは「必要悪」じゃん。できれば無い方がすっきりするけど、無きゃ不便だから作ったんだ、という話をしたでやんしょう? 違うっていう人もいるだろうけど、オイラはそう思ってますねん。

麗子:どうでもいいけど、あなた、時々関西弁が混じりません?

ムル:西の方からはるばる流れて来た猫と付き合ってるうちに、伝染ったんでやんす。って、いちいち話の腰折るなよな~(まったくギャルは付き合いにくいぜ)。ともかくさ、大喜びで創りたいもんでもないし、人間にとって無条件で素晴らしいもんでもない。そりゃプラスもあるけどね、マイナスも大きいわけで、そこんとこをきちっとおさえてないとすぐ暴走するんさ。これは国家だけじゃないけどね。人間が集まって創った有機体っつうのかな、装置と言う言葉で説明する人もいるけど、何でもいいや。そういうものって大きくなればなるほど暴走しやすいし、暴走し始めた時に止めるのも難しいんでやんすよね。それと、国ってのはもともと砂の城だから、権威づけの「神話」や「伝説」を欲しがるんよ。神の国であるとか、オオカミに育てられた兄弟が建国したとか、約束の地であるとか、あるいは輝かしい伝統とか優秀な国民とか、何でもいいけど。そういうのがないと結束できないこと自体、もともとが蜃気楼だっていう証拠でやんす。もちろんさ、蜃気楼でも虹でも幻でもかまやぁしねぇよ。でも蜃気楼じゃない、血肉をそなえたモノだって言い出す奴が必ずいる。で、みんなそっちの方に流れていく。その方が気持ちが安定するのかね。

麗子:それって誰かの説ですの?

ムル:オイラは猫だすから、むつかしいことはわからんで。誰かエライ人が言うてるかも知れん、多分、言うてるやろね。もっときちんと、論理的かつ実証的に言うてはると思うよ。でも誰かが言ってるからってんじゃなくて、こういうのは誰でも直感としてわかるんやおまへんか~。生き物の直感て、馬鹿にできへんのやで。「国」の問題だけやない、何でもそうだっしゃろ(いかん、言葉が西方向へズルズルと……都の東北でバン張ってるオイラには似つかわしくないっ)。

麗子:知識や理屈をそぎ落として、直感からスタートしろっていうことね。私の親戚に音楽に詳しいおばあさまがいらして、音楽会に連れて行ってくださるたびにウンチクがうるさいの。でも「麗子さん、これはこうこうで、音楽史上の意義はこれこれで、ここが素晴らしいんです」なんて言われると、麗子、頭が痛くなっちゃって。それより麗子が自分で素敵だわと思うかどうかが一番よね。素敵って思ったら、きっちりお勉強したくなるし。

ムル:そっ。(音楽とか高尚な世界のことは知らんけど)

麗子:それも、ここの住人の方がしつこく言っておられますわね。

ムル:はあ、まあね(あいつは頭の構造が単純なので、同じことしか言えんのでやんす)。それはともかくですね、国家っつうのは自らを神話や伝説で箔づけしないとなかなか保たないんよ。その箔づけがシャレですむ程度のものなら可愛いもんだけど、肥大してくるにつれて妙に尊大になってね、「まずは国家ありき」になっちまう。学芸会で王様の役をした子供が、本気で威張り出すみたいなもんで。くだらねぇよね。

麗子:国家というものは、性悪説で見ろということかしら。

ムル:まっ、オイラはそう思うね。ここの住人はちょいと変だとしても(何せ負け組だからね、あいつ)、ろくでもないものだ、ぐらいに思っててちょうどいいんじゃないかなあ。少なくとも「すみません、必要悪なんす」という顔で肩身狭く存在して欲しいやな。人間の上に覆い被さらせていちゃダメさ。国会議員のセンセイはじめ、公務員は「公僕」だし。いちいちウザイこと言う権利なんか、国家にはナ・イ・の。そういや最近、合計特殊出生率が1.25で、5年連続の過去最低更新とかって騒いでるじゃん。それで少子化対策をどうのこうの、と言ってるけど、そんなもん上からあれこれ言うこっちゃないよ。将来の労働力がどうの、年金がどうの、だから「産めよ増やせよ」って? 人間も、少し怒った方がいいでやんす。 

麗子:あなたも国家がお嫌いみたいですわね。

ムル:てか、猫に国境はないからね~。

 (まだ続く)

 

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