見ないフリ

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寿式三番叟

2022-01-23 | 本と漫画と映画とテレビ
とうとうたらりたらりら、
たらりあがりららりとう
ちるやたらりたらりら、
たらりあがりたたりとう
ー文楽『寿式三番叟』より


年末に生まれて初めて文楽を鑑賞し思ったことは、物語を楽しむ段より、踊りを愛でる段の方がわかりやすくて好きということ。
『仮名手本忠臣蔵』でいうと、切腹の段より道行嫁入りの方が好きだった。

ちなみに、文楽の作品は以下の3種類に大別されるのだそう。

1. 時代物:歴史上の人物や事件を扱った作品。(例:義経千本桜、仮名手本忠臣蔵)
2. 世話物:江戸時代の町の人々の生活や風俗などを背景とした作品。(例:曽根崎心中、心中天網島)
3. 景事(けいごと/けいじ):能狂言、歌舞伎などから独立・発展したもので、音楽的で舞踊の要素がつよい作品。(例:釣女、五条橋)


ということは、「景事」の演目を狙って鑑賞すると自分の趣向に合ってより楽しい。
はず。

そんなわけで「景事」の演目『寿式三番叟』を目当てに、お正月の帰省がてら、大阪の国立文楽劇場へ。




『寿式三番叟』
能楽で特別な演目とされる『翁(おきな)』を文楽へ移した「景事」。正月や劇場の柿落としなど特別な行事の祝賀として上演される。
前半は、若者の象徴・千歳(せんざい)による露払いの舞と、神の面を被った翁の厳かな舞。一転、後半は農民の象徴である二人の三番叟(さんばそう)が、力強く躍動的に舞う。五穀豊穣、天下泰平、国土安穏、長久円満、息災延命…などなどありとあらゆることを寿ぐ祈祷の舞。とにかくめでたい踊り。



国立文楽劇場は、東京の国立劇場・小劇場とは違い、かなり広くてびっくり!
上手の竹本スペースには鏡餅が飾ってある。めでたい。
人形を近くで見ようと、前から4列目を予約したら前すぎてちょっと後悔…始終首を左右に振っていないと舞台全体が見えない…その代わり人形がめちゃ近くてよかった。

開幕前に幕開き三番叟が踊るかと思い、早めに着席していたけれど出てこなかった。
これから本家?が踊るから幕開きはいらないのか。

前半の千歳と翁の舞はゆるゆるとしていて、多少ウトウトしかけるものの、千歳は首を左右にフリフリ、一生懸命唄っているし、翁の首(かしら)は年末に見た大星由良之助と同じ孔明だったので、重要な役ばかり大変だなぁと思いながら応援する。



↑真面目そうな千歳(左)が頭につけている紅白の梅?の飾りが、お正月だから浮かれてしまった感が出ていてかわいい。翁(左)も小さな顔に、さらに小さくて精巧なお面をつけているところがかわいい。

そして何より、後半の三番叟。
この2人の舞がめちゃくちゃかわいい。



↑見るからにおとぼけ顔(左)と、ちょび髭がかっこいいEXILE顔(右)の2人。(モモの漫才風)
この2人組のことを「三番叟(さんばそう)」というらしい。農民、人間の象徴だそうです。
舞だけでなく、横を向くと赤い丸がよく見える烏帽子も派手な着物も裏と表で柄の違う扇子も黄色の足袋もめちゃくちゃかわいい。

EXILE顔の方は、塩谷判官と同じ首(検非違使)だそうだけれど、髭はあるし、眉毛も動かないしで、確実に別人だと思うのですけども?如何?
ついでに、EXILEなのだから絶対踊りはうまないとあかん顔なのに、おとぼけ顔の方が踊りがキレキレでうまいという…
そして、おとぼけ顔(首の名前は又平)は、期待通り?途中で何度かスタミナが切れてゼーゼー息を切らし客の笑いを誘う。それをEXILE顔がツッコミに行くという漫才のような構図。万歳楽。

NHKの『にほんごであそぼ』でも、2019年の首相夫妻主催の晩餐会でも、出演していたのはおとぼけ顔の方だったから、この子の方が優秀なんだと思う。(まゆげも口も動くし。ちゃんと歯もあるっぽい)

兎にも角にも、二人の踊りと音楽が最高。
特に千歳から鈴を託されてからの踊りは伴奏と相舞ってノリノリ。
つられてこっちも身体が揺れてしまう。
アストロノウツの『太陽の彼方に』的なリズム。日立ののっけて冷蔵庫。

ちなみに、2019年の首相夫妻主催の晩餐会では、狂言の野村萬斎と歌舞伎の市川海老蔵と文楽の三番叟(おとぼけ顔のみ)が同じ舞台に立って同じ演目を舞っているので、これ必見。YouTubeにあるはず…

この晩餐会のような伝統芸能間の横の広がり、影響したされたみたいなことを詳しく知りたくなり、国立博物館の展示「体感!日本の伝統芸能 歌舞伎・文楽・能楽・雅楽・組踊の世界」を見に行ったのだけれど、そこはイマイチよくわからなかった…

『寿式三番叟』は2/2まで配信もあるはず。
治まる御代こそ目出度けれ〜


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