見ないフリ

一時的な対応策にしかならない現実逃避をずっとするブログ

鵞鳥湖の夜

2020-10-12 | 本と漫画と映画とテレビ
この世では神の慈悲でなく自力で生きねば
ー映画『過去のない男』(監督:アキ・カウリスマキ)より


予告の『ブエノスアイレス』感というか『花様年華』感というか,,,
要するに、ウォン・カーウァイ感に惹かれて映画館へ。

『鵞鳥湖(がちょうこ)の夜』
(2019年 中仏合作)
監督・脚本:ディアオ・イーナン
照明監督:ウォン・チーミン
出演:フー・ゴー、グイ・ルンメイ

2012年7月の中国南部を舞台に、裏社会で生きる男とリゾート地の鵞鳥湖で水浴嬢(娼婦)として生きる女が織りなすノワール・サスペンス。




ヤダ、なにこれ。
めちゃくちゃ面白いんですけど…!

『テネット』のように深く考える必要もないし、『ミッドナイトスワン』のように深く落ち込むこともない。

ただただ、画面を見つめるだけでいい。
映像がステキ。
川村亘平斎みたいなクスッとかわいい影遣いと、蛍光ネオンが印象的な照明遣いがとても魅力的。

ディアオ・イーナン監督の2作目映画だそうで、
まだ何かと試行錯誤中の監督なのか、やりたいことが沢山ある人なのか知らないけれど、いい意味でツギハギだらけというか、未完成な感じが逆に完成されてていい。

ファッション用語でいうところの「はずし」とか「抜け感」ってやつ?

ハリウッド大作のように、カメラが人物をギュイーンと動きながら捕らえたかと思えば、これぞフィルム・ノワール!というような退廃感をガンガン出してきたり。
傘で殺害する場面は、ちょっとかなり芸術的。

撮影場所はコロナ前の武漢なのだそうだけれど、
あえて開発されていない場所を選んでいるのか、やたらと古めかしい。
後半登場するアパートなんかは九龍城ってこういう感じだったんだろうなぁと思ったり。

2012年という時代設定の割には、洋服や小道具もなんだか古くさくて、全体的に80年代っぽい。アキ・カウリスマキ的なあれなのかな?
水浴嬢と呼ばれる人たちだって、現代でも普通に海辺にいるものなのだろうか。謎。

あと、水餃子と牛肉麺がめちゃくちゃ美味しそう。
水餃子は『台北の朝、僕は恋をする』という台湾映画でもめちゃくちゃ美味しそうだったけれど、牛肉麺に関しては、ホントこれ、映画館近くの中華料理店はイチオシ料理として目につくような場所に出しておいた方がいいと思う。映画を見た人は、絶対足を運ぶはず…!

んで、ラストがこれまた素晴らしく、
フィルムノワールの流儀に則って、みんな不幸に終わっていくのかと思いきや
タランティーノの『デス・プルーフ』級のスッキリ感。
きゃー、大好きこの感じ。