バネの風

千葉県野田市の「学習教室BANETバネ」の授業内容や、川上犬、ギャラリー輝の事、おもしろい日常を綴ります。

窓のバッタ

2013-09-29 23:31:04 | 感動
 大学のリーグ戦を応援しに、市川へ行く。
 道中は土手道。気温は25度。カラリとしていて気持ちがいい。空気が透明で、土手の緑が鮮やかに見えるなと思い窓を見ると、いつからそこにいるのか、バッタがはりついていた。
 家を出る時からそこに居たのだろうか。今ここで風に飛ばされたり、ヒョイッと飛び降りたらそこは見知らぬ街。もう家族とも友達とも永遠の別れになってしまうではないですか。
 しばらく走りふと見るとまだそこに居る。まったく飛び降りる気配はない。どこまでも、どこまでもそうやって車に張り付いている。
 で、観察を続けると、ヤツはただ張り付いているのではない。飛ばされないように、必死になっている。前足、後ろ足、4本足をしっかり広げ、関節をくの字に曲げ、力を込めている。時折風に流されそうになり数センチずり落ちると、元の位置に戻ろうとする。触覚は風に飛ばされ続けているから、頭頂部毛が2本のハゲオヤジみたいにフリフリしている。大事な触覚、飛ばされそう。その触覚の先は枝毛状に別れている。風が吹き付けているうちに、触覚の先乾燥して割れちゃった? いや、ずーっと見ていると、それは4本あるように見える。一つの毛穴から2本ずつ生えているかのよう。触覚って本当は4本?
 途中左の手で顔を数回拭う。汗? その間3本足で体を支える。続いて右後ろ足を窓から外し、ブラブラさせている。足つった?
 土手沿いの道はずーっと信号ないから飛び降りるチャンスがない。車のスピードも落ちないから、休む事もできない。
 ようやく最初の信号で止まる。ほら、飛び降りるなら今だ、と言えど、ヤツは大きなため息ついている。あー、生きた心地しなかったといわんばかり。
 車はまた走り出す。慌てて四肢に力を入れる。
 土手沿いの道は終わり、往来の激しい道に出た。車の速度は落ちた。しかし今ここで飛び降りてはいけないよ。トンネルに入る。すると動きが活発になった。たたんでいた体の大きさくらいある巨大なあと2本の足を伸ばし、そのとっておきの足でガラスをグイッと蹴り、いきなり移動。まずーい、ここで降りちゃ。と思うがトンネルを抜けたら,カッチャンと巨大足を元の位置にたたみ、また4本足でガラスに張り付く図に戻った。さっきとは違う右手で顔を拭う。

 こんな1時間のドライブの後、目的地駐車場に着いた。また大きなため息をついた。やれやれか?
 もうここで降りた方がいいと思うが、放心状態なのか動こうとしないので、前足をツンと触る。なにすんの、と足を除ける。もう一度ツンとすると。グッタリしているその姿からは想像できない元気な跳躍を見せ、ピーンと1メートル程跳ねた。しかし駐車場のアスファルトに飛び降りたまま動かない。もう一度ツン、更にもう一度ツンとすると、草むらに飛び込んだ。
 ほんと、やれやれ。

 

つながるっていいね。

2013-09-28 23:16:54 | ライフスタイル
 カナダにスーパーおじいさんがいる。
 93歳。
 デジカメで撮影する、たちまち写真にしてその場で差し出してくる。デジカメ操作することだってビックリなのに、パソコンを使いこなし、すぐに写真をプリントアウトするなんて。うちの母なんか、電話機は使いこなせるけど、FAXは無理。パソコンはまったくだめだけど、マウス教室通ったから、「マウス」の使い方だけは知っている。父なんかは、多分FAXが出始めた頃だろうけど、「ついていかれねえ、俺もう死にてえよ」って度々言ってたらしい、本当に死んじゃったけど、親世代だとこのあたりで戸惑うっていうのに、93歳のおじいさんがカチャカチャ使いこなしている様はびっくり。
 そのおじいさんからメールが届く。
 すごいなー、って思う。
 メールっていいなー、って思う。

野田時間はもうない

2013-09-28 22:00:49 | NPO法人アルファバドミントンネットワーク
 野田のNPOの集まりに出かけてきた。
 中央公民館の奥の奥の部屋。路地を2回ほど曲がるような位置にその会議室はあった。
 野田に来たばかりの頃、「野田には野田時間がある」とよく言われた。時間通りには始まらない。皆少し遅れてやってくるのが普通だと。確かにジュニア始めた頃そうだった。集合時間になると保護者の車がボツボツ校門をくぐり始める。集合時間は練習開始時間と思っていたのに、ダラーッと始まり、そしてダラーッと終わるのが常だった。そんな時間の使い方にいらつき、それじゃ誰よりも先に行き、ネット張り待っていればそのうち皆早く来るようになるだろうと思い数年経った頃、自然に皆遅れなくなった。
 そんな野田時間はもう今は通用しないのかもしれない。
 定刻より5分前に着いたのに会場はびっしり。席がほとんど空いていない。そもそも、NPOの集まりって数人でやるのかと思っていたら、こんなに大勢。こんなに野田にNPOあった?名簿を確認してわかったのは、この集まりはNPOだけでなく、市内のボランティア団体が対象であるということ。 ボランティア団体をサポートする機関が、団体間のコミュニケーションの場を作ろうと企画した、センター初の試みだったのでした。
 代表する3団体が活動紹介の後、出席する34団体が自己紹介することとなった。与えられた時間は1団体1分。1分間スピーチなのです。時間になると「チーン」と音が鳴らされる。しゃべっている途中あの「チーン」で遮られる様は、前の代表団体が皆披露してくれた。ああならないために、1分以内で言うべきことを言うのだ。
 我が団体アルファバドミントンネットワークは「ア」で始まるから50音名簿のトップバッターになっている。さて1分で何が言えるか。代表団体が発表する間にスピーチを書き出す。シナリオにすれば400字原稿用紙1枚分が1分間の映像になる。その感覚。
 確か先日誰だかが講演会で、「ラ」の音で話せば人の心に届くと言っていた。ドレミファソラのラ。ちょっと高い。マイクを持ちラ音で話し始めるけど、あれ、マイク入っていない? しゃべりながら、1分間を気にしながら、指でマイクスイッチもぞりながら、しゃべる。無事、「チーン」がなる前に話し終える。その後、チーンが無情にも続く。しかし皆チーンとともに話をやめる。たいしたもんだなー、と思う。1分きっかりに話すのは難しいけど、ルールを皆が守るのです。
 そして34団体の紹介を聞き、名刺交換のフリートーク時間を終え、事務局の挨拶は予定通りの3:30に終了した。
 すごいですね。始まりも、運営も、終了も計算通りに進められ、時間ぴったりに終わる。
 ちっとも野田時間なんかじゃない。




バドミントン観戦三昧

2013-09-23 07:54:31 | Badminton
 先週の台風で順延となり、日程変更して行われた大学のリーグ戦を見に行く。玉川学園は遠い。2時間半もかかる。経路はいくつかあるけど、春日部、北千住経由コースを使う。電車に乗って気づいたのは、玉川学園の隣の駅は町田ってこと。町田なら大会で何度か行っているからなじみがある。なんだ、町田の近くか。行き慣れない街に向かうことでよそ行き気分だったけど、漠然としていた位置がクリアになって「なんでもない」気分になる。
 いつものことながら往年のOB,OGの皆さんが応援に駆けつけていて、当時の学生時代の部活の話しをうかがいながら、遠慮がちに声だして応援する。昼には終わったので、公園みたいな学園内の道を下り駅へそそくさと向かう。それはYONEX OPEN JAPANが行われている東京体育館へ向かうため。
 新宿で総武線に乗り換えると、車内変な格好の人がどんどん増えてきた。膝上丈の浴衣姿で派手な髪飾りをつけた集団。どっと千駄ヶ谷で降りる。皆歩く方に一緒に歩く。この人たちみんな東京体育館か?
 改札を出るとズラーッと人が立ってる。皆それぞれに何か書いた紙を胸の前に掲げている。
 「アラフェスチケット1枚ゆずって下さい。」
 あたりはアラフェスゆずってだらけ。ヨネックスオープンならチケット余分にあって、さっき譲ってきたばかりなのに、アラフェスってなんだ?
 中に「アラフェス(嵐)チケット」と丁寧に説明入れている人がいたから、そうなんだって事情がわかった。「鹿児島から出てきました」なんて懇願調の人もいる。若者だけじゃない。同世代の人もいた。こうして立っていてゲットできる可能性ってあるのか?と思うけど、これだけいるんだから0ではないのでしょうね。違う文化を生きている人たち。
 東京体育館へ向かう人の流れは少ない。受付は閑散としている。中は静か。しかし一歩中に入ってびっくり。満員。
 男子シングルス1ゲーム目、16-18の攻防中で場内は静まりかえっていた。ラリーに息をのんで。
 この後の女子シングルスでは16歳の高校生が優勝し、史上最年少かつ日本人初優勝という日本のバドミントン界にとってはセンセーショナルな時を皆で共有した。
 体育館を出るとまだ駅前にはアラフェスチケットの人並みがあった。その人たちが立ち並ぶ中、花道を引き上げる気分をほんの少し味わいながら駅へ向かった。


ふんだりけったりな1日

2013-09-18 09:52:23 | ライフスタイル
 まったく今日って日は。
 昨日はそんな1日だった。

 サタデークラブの事で相談があり川間小に行く。調度その時体育館に居た子たちが「あー、バドミントンの先生だ!」って手を振る。ここまではよかった。そしてその足で市役所へ。NPOの市民税均等割減免申請申し込むものの、申請期限過ぎているとの事で却下。これに関しては設立当初いろいろ問い合わせした結果、後日書類が届くからそれから申請すれば良いと言われていた。こちらの勘違いもあり、連絡を待つばかりではなくもっと早く問い合わせすべきだったとガックリきてしまった。
 その足で郵便局へ。先日カナダでいただいたカナダドルによるNPOへの寄付金を両替することにした。窓口の人は何やらあちらこちらに問い合わせしている。どうやら差し出した100ドル紙幣のチェックでもめているらしい。1時間近く待つが、結局両替できず。なんでもこれは新紙幣のため登録がないからできない、とのこと。「全国どこの郵便局に行ってもできませんよ」
 次は、昨日台風で運航中止になり乗れなかったJRチケット払い戻しに南流山駅へ。するとみどりの窓口がある駅に行って下さいと。該当駅までの往復チケット出すからこれで行くようにと有無を言わさない雰囲気でわら半紙に印字された紙を渡された。車は南流山駅前に止めているし、めったに電車乗らないからいきなり電車に乗るという状況に少々躊躇したけど、促されるまま改札を通ってしまった。
 ホームに出ると、人身事故の影響で電車が遅れているとのアナウンス。しばらく待ってきた電車に乗りみどりの窓口へ。
 大会で金沢に行った10人分の帰りのチケットを払い戻す。このチケットは先日千葉駅のみどりの窓口で買ったもの。その時の担当女性は優秀な人で、レールアンドレンタカーでの購入を申し出たら、こちらの組合せで購入すればさらにお得ですと言って複雑な方法で、事前にえきネットで予約したチケットを一旦キャンセルして、その女性が進める組合せに取り直してくれた。回数券、乗車券、特急券、周遊券。いろいろなチケットが複雑に出された。これが払い戻しに災いした。複雑なチケットの組合せを窓口の人に理解してもらい、さらに計算し返金処理してもらう。そう簡単にいくわけないと思っていたけど、窓口はその悪い予想を遥かに上回る大慌て状態。そもそも自分の順番が来るまでに30分は待った。そして自分の払い戻しの処理にもうすでに30分は過ぎている。後ろに並ぶ人たちの不満は窓口担当者ではなく、「この人なんなんだ」と私に向けられ始めている。後ろ振り向き、申し訳ないといっても全員目が殺気立っていて誰も笑わない。あーあ、って感じ。そのうちお腹痛くなってきた。そんなピンチを解消すべく奥から若い職員が出てきて、機転効かせて別枠で奥で処理する事になって後ろの人に殴りかかられずに済んだ。
 もうこの時点で夕方からの授業の事で頭が一杯になる。今日は教室混んでいる。準備取りかかりたいのにこれじゃいつ帰れるんだ。お腹痛いし、お腹はすくし。
 待っている間にだめ元で駅前の千葉銀に入る。カナダドルの両替確認すると、まったく問題なくできた。なんだったのさっきの郵便局。

 みどりの窓口に戻ると、すでに返金処理は終わっていて、長い行列を全部ワープしすぐに返金してもらえた。

 電車ちゃんと来るのか不安な気持ちでホームに上がり、南流山駅に戻り、無事車はあり、飲まず食わずでダッシュで帰宅。
 こういう日は事故に気をつけようと思い、いつもより慎重に運転。


バネ、一斉集合

2013-09-18 09:04:04 | バネ
 月曜が休みになること多し。でもこの時期そうそうバネ休むわけにはいかないから、月曜分を火曜に振り替えた。
 ということで、昨日の火曜は月曜クラスと火曜クラスが重なるから混雑。2クラスが重なると言う事は、教室内の学年幅も広がる。
 前半は小学1年生と6年生が一緒に学習する。
 「へー、バネには1年生もいるんだ」とか「そっちの問題がいいな」などと6年生は1年生にチラチラちょっかいを出す。一方1年生は、上級生の前でいい格好見せたいのでしょう、いつになくハイペースで問題解き、45分間きっかり集中できた。そしていい格好見せたいのは6年生も一緒。
 月曜クラスを火曜に振り返るということは、1年生と6年生が一緒の時間になる。これが作戦だった。もしかしたらこれを切っ掛けに1年生がまた1歩成長するであろうし、6年生にとっても良い効果があると考えていた。
 そして中学生クラスも混在となる。それぞれに内容が異なる。一斉の説明がしにくい分、演習時間が増える。あっちで質問に答え、こっちで進み具合を確認し、手が止まっている子に説明し、プリント追加し、と大忙し。
 単一学年,同レベルが揃ったときは説明に時間をかけられる。板書して、例題、演習と進め、こちらは高揚感と達成感に包まれる.そして決まってそんなときは、子どもたちの疲労感が見える。更には期待する程の成果が上がらないときがある。あれだけ説明したのに、時間かけたのに、理解できていない、定着していない。先生の独り舞台になってしまったのかもしれないと反省すること度々。そして案外こんな日みたいに、あっちで呼ばれ、こっちで個別に説明しそんな日の方が定着しているときがある。

 おっと、奥の席に高校生もいるではないですか。質問って手を挙げてる。こういう日もまた楽し。



久しぶりの大会観戦

2013-09-16 13:12:36 | Badminton
 昨日は大学のリーグ戦応援に市川まで行って来た。
 台風が近づいているから行くの行かないのって迷いながら出発。

 最近うちで作るアイスコーヒーはうまい!なじみの豆やのおじさんに「こちらの豆で入れたコーヒーは美味しくって。もう喫茶店のコーヒーより美味しいですよ!」なんて自分でもビックリするくらいのセリフを言ってしまい、ちょっと媚びてて嫌だなと思いながら精算すると、おじさんは別にうちのマメが特別ではない、きちんと入れれば皆同じ味になるくらいの素っ気ない言葉を返してきた。あーあ、やっぱりちょっと見透かされたみたいだなと少々自己嫌悪に陥る。と、おじさんは「アイスコーヒーの美味しい入れ方教えてあげますよ。」
 
 早速家でおじさんの言う通りにアイスコーヒー作ったら、うまい、うまい、とにかくうまい。

 そのアイスコーヒーをリーグ戦会場に持っていこうと思った。
 家を出ると、ちょっと肌寒い。長袖を取りに戻る。こんなんじゃホットコーヒーの方が良かったかな。
 県道を右折すると、進行方向に真っ黒な厚い雲が。嫌な予感。時折ザーッと強い雨が降るけど、進行方向が左にそれるうちに巨大な黒雲は右へ後ろへと移動していき、前方の空は少し明るくなってきた。市川方面に行くときは野田橋を渡り埼玉側に出てそのまま土手沿いをグイグイ走れば、うまくすると50分程度で到着する。しかしこの道は対面通行であるにも関わらず道幅狭く、側溝空いていたり路肩が危険な道だから、今回は安全パイの通常経路を選択。
 とその時、突然目の前に落雷。あちらこちらで雷鳴轟いたりピカピカしているわけでもないのに、突然「ドッシーン」という地響きとともに目の前が明るくなった。そしてその途端土砂降り。とにかく走るのをやめ、コンビニ駐車場に止める。
 行こうか、行くまいか。引き返すか。帰るということは、このままあの黒雲の中に突っ込むということになる。防災メールで野田市の警報が届く。ラジオでは竜巻注意とか言ってる。そもそもこんな日に試合やるのかな。会場に先着いているだろう人に確認すると、現地は今雨降っていないとのこと。じゃ、出発するか。
 
 いつものコースと違う通常コース使ったから、逆に道わからなくなり、増水しそうな川沿いの道を避けながら走っているうちに試合開始時刻15分程過ぎて会場到着。
 何のことはない。現地は雨は上がり、むわんとしている。そして会場は、暑い、むわわん状態。首からいきなり汗が流れる。バッグの中を探ると、やっぱり扇子は入っていない。雨用に持ってきたタオルで扇ぐ。
 暑いぞ。今日はアイスコーヒー活躍するぞ、が。
 ここに到着する事が究極の目的みたいになってしまい、試合観戦グッズ持って来なかった事にあらためて気づいた。ビデオカメラなし、うちわなし、クーラーバックなし。なにやってんだか。

  




成長にハイタッチ

2013-09-13 23:18:40 | バネ
 昨日は小学生の時の修学旅行の切ない話しを思い出し、それを文にする事でどんどん記憶が明確になって、そう言えばあの後、「あまりにもひどい」とお母さん達が憤慨していた事まで思い出した。困ったような先生の顔も。そんな思いを引きずりながら今日の授業の生徒を出迎えるために駐車場に立ち、夕方の風に吹かれていた。

 その子はいつも通り自転車でやってきた。
 子どもだっていろいろ大変なんだよね、っていつになく子どもサイドの理解ある物わかりの良い大人になっちゃってる私。
 そうして始まった小学1年生の授業。これはできるかな、ここまでできるかな、と手探りで進め、夏休み中は家庭学習の課題を出してきた。その子が夏休み終え、9月に入った途端急激な進歩を見せてきた。音声を聞き,書き取りができる。文章がスラスラ読める。もちろん、意味も理解している。文章問題から式をたてる。暗算で答える。
 「こんな幼稚園みたいな問題!」って言いながらスラスラ答えを書き込んでいる。
 ここまで来たら、作文に入ろう。様子を詳しく書く練習を始めよう。まず今日はいきなり書くのではなく、詳しく説明する練習から始めよう。
 家を出てからここに来るまでのことを教えて、と切り出し、細部を聞き出し、その理由を聞き、そのやりとりを全部書き出す。すると「すごいいっぱい書いたね」って他人事みたいに感心している。
 お互い達成感に包まれた感じがした。
 こういう事があるから、やめられないね。
 45分の授業を終え、自転車で帰る背中を見送った。

修学旅行の思い出話

2013-09-13 15:04:19 | バネ
 いつも絶好調!ならいいんだけど、なんだか気が乗らない、やる気が起きない、集中できない、こんな時誰だってあるでしょう。こんな状態は子どもにだって当然あるわけです。

 その子は教室に入った瞬間から、ヌベーッとした空気を漂わせていた。話しかけると気のない応答が返ってくる。何かあったな、と思う。つい「どうした?」と聞いてしまうと、おきまりの返答「別に。」
 これじゃ親子の会話みたいでしょ。それだけこの子は私に気を許しているのかと思い直しながら、アンニュイな空気をあえて無視して授業を続ける。

 この子に限らず,こういう状態で授業に来る子たまーにいるけど、たいていは「先生の無駄話」を披露すると途中で元気になってくれる。この日もそう。ひょんなことから小学生の時の修学旅行の話になった。話しながら当時のことを思い出し,引き出しを一つずつ開いているうちに、ある感情をはっきり思い出した。

 それは、こう。

 6年生の時の修学旅行先は新潟の海辺の町。市内の小学校で調整するらしく、日程が重なり同じ旅館に宿泊することになったのは,市内中心地にある大規模小学校。先方は何クラスもある学校だから、山奥の1クラスで30人に満たない我が小学校が組み合わされたのでしょう。
 せっかく同宿になるのだから、夜食堂で2校交流会を開こうと先生方が企画したのでしょう。そのために私たちは発表会の準備をした。私は司会者となった。全体の流れを皆で考えた。壇上での挨拶は誰がする,学校紹介は誰がする。みんなでリコーダーで演奏しよう,等。そして本番に向け練習した。海を見るのが初めてという子がいるくらい、海に行くことそのものが一大イベントだった子もいるだろうけど、何度も交流会のリハーサルしただけに徐々にこの会は、特に司会者だった私にとっては、修学旅行で大きなウエイトを占めていた。

 宿の廊下で大きな小学校の子とすれ違う。少し緊張する。皆都会の子で大人びて見えた。今は緊張感あるけど、でも交流会を終えれば距離が縮まるのではという期待もあった。
 5年生の時に学校を代表して市内水泳大会に出場した。教頭先生の運転で学校代表の数名が市内プールに行った。更衣室はごった返していて、着替え棚のある場所はすでに町中の大きな学校の子達に占領されていた。学校だけでなく,皆体も態度もでかい。それだけで私たちは萎縮してしまい,おまけに市民プールの水は真緑色で気持ち悪くて、記録は惨憺たるものだった。帰りの車で教頭先生から「おまえらなー」と慰めともあきらめともとれる言葉をかけられたけど、「みんな男みたいなしゃべり方するんだよ。おっかねーし」って私は更衣室での顛末を披露し、「そうか、そうか」と教頭先生に頭をなでられた。
 そんなおっかない子達だけど、交流会やれば仲良くなれるという期待があった。よその学校の子にあったら元気よく挨拶するようにと事前の指導があったこともあり、「こんにちはー」と言ったときの相手の反応が微妙であったことに一抹の不安はあったが。
 そして迎えた夜。
 先生はこう言った。
 「○○小学校の皆さんは夜勉強会を開くことになったので,交流会は中止になりました。」

 とてもくやしかった。
 田舎もんと見下された感じがした。
 せっかく練習したのだからと先生の提案で、その夜相手校のいない食堂で練習したとおりの発表会を私たちだけでやることになった。
 なかには怒ったままの子がいる。そんな意味のないことやらないと言う子もいる。しばらくやるやらないの話し合いがあり、司会者である私は先生に促され渋々先陣を切ることになった。
 「皆さん、と言ってもみなさんはいませんが、こんばんは。」といちいち言い訳を付け足し,用意した台詞を取り繕いながら,泣きたくなりながら続けた。

 この時のことを思い出してしまった。もう何十年も心の奥にしまっていたのに。話しながら泣きそうな自分がいる。子どもだって毎日精一杯なんだよな、と改めて思い そうして気づいたら,目の前の子が元気になっていた。
 
 これで残り時間は楽しい授業ができるね。