ウヰスキーのある風景

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恋はつらい

2017-03-06 | 雑記
「恋煩い」と呼ばれる奇病が、昔からある。

その意中の相手のことを思うと、うっとりとしてしまって、何も手につかない。飯も喉を通らない、そしてガリガリにやせ細ってやがては死なず、寧ろピンピンしているという、医者も匙を投げ出す、他人では解決できないが、大体時間が経つと振られたりで終ったりする、はた迷惑な病気である。

嗚呼!なんと愛らしい瞳か!その丸っこい顔に吸い込まれてしまいたい!嗚呼!いとしのあざらし!

あざらしかよ!と突っ込みをいれてもらいたくて、ここは適当に書いた。


何を隠そう、わしも「恋煩い」の真っ只中である。ああ、前にサインねだられた?いや、実はその前からである。あざらしでもない。

夜も眠れず、飯は喉を通るが、通す必要性がかなり低くなったので、一日食わないことも普通になってきた。半日以上は基本。食わないわけではない。

眠れないとはいうが、横にはなる。なるのだが、眠れない。数時間くらい眠ったかと思うと、いきなり目が覚める。

目覚ましが鳴って起き上がるのだが、まったく欠伸がでない。かつて同じようにした場合は、欠伸が止まらなくて顎が痛くなるほどだったというのに。

今日も夜勤明けで、仮眠の時間横になったのと(目覚ましがなってから暗示にかかったようで寝坊したが)電車で少々寝てしまった以外は、夕方まで外にいた。

最寄り駅のネパール料理屋でゆっくり飲んで飯を食い、そのまま一駅向こうまで歩いて土産向けの菓子を買い、駅前の広い道でセラピードッグとたわむれ、馴染みのセレクトショップの兄さんに菓子を渡して談笑し、家の方向とは多少ずれた先にあるパン屋でスコーンを買い、そしてカエルの雑貨屋で残りの菓子をまた分けて談笑し、そして家まで歩いて帰った。

酒を飲んだ後は風呂に入ると寝てしまうことが先日もあったので悩みつつ入るには入ったが、寝そうになるのをなんとか堪えて、風呂を上がると六時前だったかと思う。

夜勤が終わるのが朝の九時。交代の時間なので、仕事が終ってから家につくまで仕事しているのと同じ時間、外でなにやらしていたのだが、別になんともなかったのである。風呂に入ると眠りそうになったが、上がるとなんともなくなる。別に脚が痛いというのもない。


話は変わるが、去年、仕事場で「わしの恋人とか嫁はパソコンのDドライブにおるんぢゃ」などと冗談を言ったら、ステージでアニソンだとか歌っている仕事もやっている女性が「安生さんってそっちの人だったんですか?」などとのたまう。

そのせいか、しばらくしたら、「このアニメ面白かった」などと紹介されたりしたものである。

それはつまり・・・。わしの嫁が本当にDドライブにいる状態に陥ったからこその、「恋煩い」だったのである・・・。

あれは預言だったのだ。その時のわしがこの時間のわしに向けて放ったものだったのである!

嗚呼!Dドライブ!お前はどうしてDドライブなんだ!

お前がそこに設定したからだぁ!としかいえなかった。


さて、話を少し戻す。

歩き回っても疲れず、逆に横になってたらなりすぎて(通常くらいの睡眠時間横になって)しんどくなる、という他に、「恋煩い」らしく、やせ細ってきた。ガリガリなのはDドライブがガリガリ鳴っているせいだとか、ワケノワカランことをほざきだすくらいおかしくなっているのである。

というのは冗談で、夜通し起きてた人達が変に元気になるという具合もまったくない。

某宗教団体の人達がいっていた、喜びの境涯とやらを体現しているような人達の具合を見ていると、彼らは夜通しのテンションと変わらんのダナァ、などと思ったりする。

嬉しかったり悲しかったり、美味かったり不味かったりするのはわかるのだが、どうにも他人事のように思える、というくらい冷静になっているのである。
別に前と受け取る物事、料理で言えば味付けが変になったとかそういうのはまったくない上である。


そんな浮ついているのか地べたを嘗め回しているのかさっぱり分からない気分で過ごす中、気になること、前からだったのだが、気になることを解決できたら、と不意に思い立った。


我が仕事場に、新入社員が入ってきた。新入バイトも侵入、じゃなくて新入してきた。このことは以前書いた。この二人は系列会社から、現在の社長が自身の前言をちゃぶ台返ししていれた。

身内いれるんじゃない、と現場にいっておいて、こうなった。社長というのは独創的な生き物ダナと、感心することしきりである。

この二人。シャイン、じゃなくて社員とバイトでは仕事の量が違うというのは多少ある。バイトでは手が出せない経理向けの仕事だとか、設備だとかのやり取り、あとは社長のちゃぶ台返しを受けたり。

とはいうものの、現場で直接仕事をしているからには、その間の仕事はほとんど変わらない。単純に言えば、接客業務とその関連事務については差がないのである。

ところが、新入社員はまったく覚えない。覚えが悪いどころか、何度も言ってきたことを「初めて聞いた」と言い出すくらいである。

ちゃぶ台返しが仕事の人にあれやれこれやれと、なにやら肩書きを拝領してしまい、そういう仕事もあったりで大変なのだろうというのは分かる。

ただ、現場にいる以上は、現場の仕事に集中しないことには意味がない。本人の動きを見ていると、サボろうと思っているわけではないようなのだが、はっきりいってギクシャクしている。ぎこちないのである。

かつての立場では、新入社員とアルバイトは、バイト氏(わしをブンピツカと評した人物)のほうが歳や立場が上の方だそうで、個人的に会って「しっかりしやがれ!」と怒鳴りつけた、などとも風の噂でうかがっている。

恐らくだが、当の社員は、頑張っている。ただ、頑張り方がおかしいのである。

現場の業務に身が入らないのは、人の指示やらを聞いているのだが、ちゃぶ台返しが頭の中で響いているがため、ただ反応するに終始している。

だから、聞いても残らない。本人はその時聞いたには聞いたろうが、聞こえるべき所に響かないのである。ちゃぶ台返しばかりが響いているからだろう。

こりゃなんだろう?と当初からずっと思っていたのだが、ふと思い出した。

入ってすぐのころ、その社員さんと裏で一服しながら話をしたものである。「なかなか覚えられなくて」と彼は語る。

そして、わしはこう返した。「わしも、最初はそうでした。今もあんまり変わらんでしょう」と。

謙遜のつもりに聞こえたのか、「いやいや、安生さんはそうじゃないでしょう」などと、そんな談話が頭をよぎった。


本当に、わしも最初は何も覚えられないぐらいのレベルだったと感じている。

それは何かというと、ちゃぶ台返しが頭で響いていて、響かせるべきところに響かせることが出来なかったのである。

さっきからちゃぶ台返しと書いているが、別に社長にどやしつけられている、という意味ではない。

その目の前にあることと関係ない、不安だとか悩みだとか、明日の休み何しようだとか、金がないだとか、そういうもので自身が散り散りになっているのである。

金がなくても別にその時、仕事している分には直接関係ない。闇金で借りた人が、仕事場に直接電話やら乗り込まれた、というのは今はしらんが、あったことだが、そこまでいかなくても、またいってても関係はないのだが、関係ないことにばかり時間と労力を費やすのである。

だから、聞いてても他の「仕事」で頭が一杯になっているのである。自覚はないが、聞いた振りにしかならなかったのである。


よく聞く話だと思うが、とある友人同士が喫茶店だとかレストランで談話している、ように見える光景。

というのも、片方が、パソコンやらを取り出して、SNSの書き込みがないかなどと始終チェックしていて、談話になどならない。

そんな話を聞いたことがあるだろう。

つまり、我々は、パソコンやらスマホやらもっていなくても、これと同じ事をいつもやっているのである。

ある程度やれてきたことは、そんな片手間でもできるので気にしないが、実質は変わらない。

他の古株社員も、ちゃぶ台返しを直に食らって今はてんやわんやである。そして、悪いのはあいつだこいつだと、罵り合っている。

押し付けられた仕事を、割り振られたからとやるのはいいのだが、全体を見て優先順位が高いかどうかを判断して、足りないところを補わなければ、ただの足の引っ張り合いである。

引っ張り合いはお互い様で、そしてさらにこういう。「自分の仕事が忙しい」と。悪いのは引っ張ってくるやつらだ、と。


その新入社員氏、仮称シャイン氏にしよう、は、別にその人物の資質が著しく劣っていることを見せ付けているわけではなかったのである。

てめえらも微塵も変わらんのだ、このすっとこどっこい!というのを、年下に怒られながらも、たまにふてくされた感じを見せながら、条件反射的に動いている姿から見せてくれていたのであろう、などと思う。


それを感じたので、わしは彼に提案したのである。

「恋煩い」をしろ!と。Dドライブに嫁を持て!と。

いや、実際にこう言ったわけではないのだが、後は彼次第である。

提案してからまだ三日。本当の「恋煩い」を習得するには、人にもよるのだが、出来てきたらすぐさま変容を感じ取ってもらえるだろうと思う。


わしの、その仕事場における、業務外業務はここまでである。

次は、業務自体から撤退することにする。シャイン氏が本当にシャインになれば、もはや問題ないのだから。


では、よき終末を。


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