環境問題スペシャリスト 小澤徳太郎のブログ

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進化してきた福祉国家④ 70年代の「旧スウェーデン・モデル」への批判

2007-08-16 07:05:43 | 社会/合意形成/アクター

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20世紀のスウェーデンの福祉制度を支えた「高福祉・高負担」が成り立つためには、高い経済水準が維持される必要があります。スウェーデンの一人当たりのGDPは1960年には世界3位(日本22位)で、この時点で、すでに世界の最貧国から十分に豊かな国に変身していました。70年は2位(日本18位)、80年は3位(日本17位)、90年は5位(日本8位)でした。

高負担に耐えながら、20世紀のスウェーデンはこのように、高い経済水準を維持してきました。しかし、いつも順風満帆であったわけではなく、70年代に入り石油ショックによって高度成長をつづけてきた日本経済にブレーキがかかり始めると、当時の日本の主流の経済学者、エコノミスト、経済評論家、ジャーナリズムから、 「旧スウェーデン・モデル」に対する批判が相次ぎました。

早稲田大学の岡沢憲芙さんは、『スウェーデンの政治――デモクラシーの実験室』(早稲田大学出版部、1994年)で、「つぎのような批判が1979年代にさまざまに表現を変えて何度も繰り返されることになった」と分析しています。

①過剰福祉は競争原理を否定する傾向があるので、国際市場での競争力が低下する。
②官僚機構が肥大化し、息詰るような官僚主義が社会のすみずみまで行きわたっている。
③過剰福祉が勤労意欲を低下させ、貯蓄意欲をそいでいる。
④高負担政策のゆえに企業から経営インセンティヴを奪い、企業の国外脱出を加速する。産業空洞化の恐れもある。
⑤平等主義の徹底はサービスの画一化につながりやすい。また、選択肢を制限することになるので、選択の自由は実質的に剥奪されてしまう。
⑥平等なサービスを提供するために国民総背番号制度などが導入され、それが管理社会化を促進している。
⑦パブリック・セクターの超肥大がサービス精神を低下させている。また、民間活力が低下する。
⑧胎児から墓場までの人生のあらゆる段階で、過剰福祉が提供されるため、特に青年層で怠感が拡散し、ヤル気を失った青年は麻薬の乱用にはしったり、アルコール依存症になるかもしれない。
⑨重税政策は地下経済を繁殖させる。
⑩高負担のため青年の国外流失が止まらない。

およそ30年を経た今日、あらためてこれらの批判を検証してみますと、70年代から90年代初めにかけてのスウェーデンは、現象的には「苦悩する生活大国」の様子を呈していたかもしれませんが、総じてそれらの批判が杞憂にすぎなかったばかりでなく、今となっては逆に、 “結果論”として、むしろ日本の世論をミスリードした元凶となっていたことがわかります。

ミスリードをしたのは、当時の日本の主流の経済学者、エコノミスト、経済評論家、ジャーナリズムであり、その情報を信頼した政治家らであることは明かです。彼らは「お金の流れ」だけで、経済活動を判断し、経済活動を支えている「資源やエネルギーの流れ」や「社会制度」など、お金に換算できない要素を判断基準に入れてこなかったからです 

21世紀に入って日本は閉塞感に覆われ、現在では社会のほとんどすべての分野で「倫理観の喪失」を裏付ける問題が起きています。逆に、スウェーデンは国際比較の可能な分野で高い国際評価を受けています。






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