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皆さんへのお願い:10月30日から始めたこの連続講座「スウェーデンの脱原発政策の歩み」(私の理解では「エネルギー体系修正のための政策」という表現のほうが適切だと思う)がカバーする範囲は、1960年代から1990年頃までです。その頃を振り返りながら読んでください。その後のスウェーデンのエネルギー政策は「緑の福祉国家22~30:エネルギー体系の転換」を参照してください。
(1)なぜ、スウェーデンは日本や他の工業先進国がこれまで進めて来たエネルギー供給システムやこれから進めて行こうとするエネルギー供給システムにあまり積極的でないのでしょうか?
(2)その理由はスウェーデンが他の工業先進国に比べて、科学技術力が劣るからなのでしょうか?
(3)それとも、スウェーデンは他国から石炭などのエネルギー源や、“日本が世界に誇る”高価な公害防止機器を輸入できるだけの経済力がない経済小国だからなのでしょうか?
(4)あるいは、逆に、スウェーデンは現実を直視していない理想主義に走り過ぎた国だからなのでしょうか?
もし事実がその通りであるなら、私にもスウェーデンのエネルギー政策に対する日本の論調が理解できます。けれども、私はこのいずれもが正しい理解だとは思いません。もっとはっきり言えば、いずれもが間違っていると思います。
スウェーデンの科学技術力や経済力については、日本のまとも専門家はそれを正しく理解しているはずですし、スウェーデンの「原発技術」にいたっては、日本の原子力専門家をはじめ世界の原子力の専門家がその技術レベルの高さを最もよく知っているはずです。それでは、なぜ、スウェーデンは、日本のジャーナリズムや原子力関係者の一部の言葉を借りれば、エネルギー政策で「迷走」したり、「苦悩」したりしているのでしょうか?
それはスウェーデンが「現実を重視する国」であって、エネルギー問題の現実を直視し、それを基に将来のエネルギー体系のありかたを長期的に真剣に考えているからなのです。残念ながら、日本は「目の前の現実」の対応に追われ、現実を直視してこれからの数世代が必要とするエネルギー体系のことまで考える余裕がないように思えてなりません。
あえて、「苦悩」という言葉を使うとすれば、スウェーデンは、日本のように、現在および近未来のエネルギーの「供給量」で苦悩しているのではなく、自らに厳しい条件を課して2010年以降の「エネルギー供給の質と量」を修正するために苦悩していると言えるでしょう。
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