すっかり映画館から遠ざかったこの夏。
見逃した映画をDVDで観て暮らしました。
「善き人のためのソナタ」
アカデミー賞の外国語映画賞を受賞した作品です。
今はない、東ドイツが舞台だということしか知らなかったので
きっと、この東ドイツの「彼」が、ふとしたことで「西側」の音楽に触れて
そこから何か感動的な物語が始まるのだと思っていました。
とんだ勘違いでした。
「彼」がヘッドフォンで聴いているのは音楽ではありません。
「彼」は盗聴しているのです。
「彼」の名前はヴィスラー(ウィルリッヒ・ミューエ)。
東ドイツのシュタージ(国家保安局)の忠実な局員です。
家族がいるのか、友達はいるのか、
彼の周りには温かな人の気配は感じられず、ただただ国家の体制を守るために
働く日々です。
当時、東ドイツでは「国家の体制」にそむくものは、徹底的な処罰を受けました。
軽いジョークさえも、運が悪ければ命取りになります。
「反体制」を疑われると、極秘にシュタージの監視がつけられます。
優秀な局員のヴィスラーは、劇作家のドライマン(セバスチャン・コッホ)の監視を命じられます。
ドライマンと恋人で女優のクリスタ(マルティナ・ケディック)が暮らす家に忍び込み
盗聴器を取り付け、24時間体制の盗聴が始まります。
盗聴するヘッドフォンから聴こえてきたのは
今までヴィスラーが触れたことのない世界でした。
愛の言葉、音楽、熱く語られる文学。
この息苦しい体制の中で、なんとか自分の言葉を発したいと葛藤する
芸術家達の声でした。
ヴィスラーの内面に少しづつ変化が出てきました。
表情にこそ出しませんが、行動が全てを語ってます。
東西の冷戦の時代は突然の「壁の崩壊」で終わりを告げます。
でも、その終わりはあまりにも唐突で
突然、解放された人々は、戸惑いを隠せないようです。
事故で足を失った人が
失ったはずの足が、まだあるかのような錯覚に陥るように
あの暗黒の時代に失った大切なものを
宙ぶらりんのまま、心の中に住まわせているような状態です。
劇作家のドライマンは、なにも書けなくなり
体制側の人間だったヴィスラーは、今はチラシ配りをしています。
時代に取り残されたような二人に転機をもたらしたのは
過去の記録でした。
ドライマンは、その転機で華々しい再スタートをきりました。
ヴィスラーには、どうだったのでしょう。
相変わらず、はっきりと表情には出しませんが
ラストシーンの言葉が、心の全てを語ってました。
そのひと言は。。。ほんのひと言なんですけど
明かりが灯るような言葉でした。
暗いトンネルの中から出口の光を見つけるような明るさじゃなくて
ぼわっと
心の奥のほうから、にじみでてきたような明るさでした。
その明かりは
余韻になって
長く、続いています。
ウィルリッヒ・ミューエってつい最近亡くなったのよね。
ニュースで配信されていて、ちょっと衝撃的だったので覚えてます。
「旧東ドイツ出身のミューエは、この作品で国際的な評価を受けたが、役柄に反して実生活では自分の妻に密告され、10数年間もシュタージの監視下にあった。」
なんだか、映画も彼の人生も
複雑だわね~。
そうなのよ。。
7月の末でしたか。。亡くなったのは。。
監視されてたとは知ってたけど
奥さんの密告だったなんて。。(驚)
いったい誰を信じたらいいのか分からなくなりますよね。
シュタージの監視下に置かれたのは
「反体制」の人間だけじゃなくて
西側に亡命されたら困るような、優秀な人材も、だったそうです。
そうまでして守る「国家」っていったいなんなんでしょうね。。。。
(記事はかけませんでしたが・苦笑)
思いテーマだったけど
ものすごく引き込まれました~!
監視しながらヴィスラーも、自分自身の
行動の変化に戸惑うこともあったでしょうね。
けど、最後の一言に
彼の一握りの、誇りが感じられたような気がしました。
偶然ですね♪
Pamyさんも観てたなんて♪
どちらかというと、地味で重い映画ですからね。
(今では死語でしょうが)「東側」の世界を描いた社会派の映画だったのかもしれませんが
「社会派」というよりも、息苦しい体制の中で生きた「人間」の物語だったように思います。
私の思い過ごしかもしれないけど
ヴィスラーはクリスタに恋をしていたのではないでしょうか。。
ヴィスラーも気づかないほどの淡い恋だったかもしれないけど
舞台のクリスタを見つめる目や
クリスタのベッドにそっと触れる手に
ヴィスラーの気持ちが表われていたように思えます。
このラストの数分間は、映画史で長く語り継がれていくと思いますね。
こんばんは。
TB&コメントありがとうございます。
ほんとに、余韻の残るラストでした。
あのひと言が効いてましたね。
今年の夏は、可愛くミニなチョコさんですね~。
ところで、カメトラですぅ~☆
で、びっくり・・・。
亡くなっていたのですか>彼・・・。
しかも、監視下・・、奥さんの密告・・・。
ほんとに、生々しい現実を感じちゃいます。
ほんの少し前の話で、私から見たら、ドイツも、他のヨーロッパとあまり変わらず、自由な空気が既にあると思いがちなのだけど、内情は違うのでしょうね。
そうだね、確かに、自由を得た不安感も、漂っていましたね。
うんうん、ラストの言葉に、私も、ジワっときたの!!
チョコさんの的を得たレビューに、またいつもの感動を受け、カメトラの甲斐がありました。
この感触、結構病みつきですぅハハハ・・・。
なので、また、頑張ってレビュー書くわ!
最近、どうも、書くことがめんどうになる時もあってね~。
いっぱい映画(DVD)見てるのに、書く気力が・・。暑いからか~。
そうそう、息子がドイツにワーホリで行くとか言ってますが、果たして旅立てるのか心配ですぅ。また、報告しますね~♪
TBありがとうございます。
暑いですねぇ~
口に出しても涼しくなるわけでもないのに
一日に何度も、つい、口に出してしまいます。
レビューを書く気にならないのは
ワタシも同じで~す。
でも、そんな中、わざわざ書かれたレビュー。
よほど心に留まる何かがあったのでしょうか。
自由って、難しいですよね。
ずっと籠の中に置かれていたものを
さあ、今から自由!と籠を取り払っても
どうしたらいいのかわからないんじゃないでしょうか。
自分で自分のことに責任を持つ。
自分の自由が、人の自由を妨げないようにする。
これって、子供が親の元を出るときに
出てくる問題と同じみたいですね(苦笑)
親も、子供にとってはある時期、シュタージみたいな息苦しい存在なんでしょうかね。
ぼふさんの息子さん、きっといろんな経験をして
たくましくなって帰ってきますよ。
若い行動力がうらやましいなぁ~