「新・雨月 戊辰戦役朧夜話 下卷」
船戸与一 2010/2 読了 ☆☆☆☆☆
史実とフィクションが融合して、今まで年表のうえでしか知らなかった
戊辰戦争の実態がおぼろげながら鳥瞰的にわかり架空の人物たちの言動も大いに楽しめた。今年度国内NO1候補本。
あたかも春の夜空に滲むおぼろな月影のごとく明治という国家の相貌をぼんやりとうかびあがらせるように終章で戊辰戦争にかかわった主要人物のその後が書かれている。
皇族・公家、薩摩藩、長州藩、土佐藩、佐賀藩、旧幕府関係者および佐幕派、長岡藩および新発田藩、棚倉藩・二本松藩・三春藩、庄内藩・米沢藩、秋田久保田藩・盛岡藩、仙台藩、桑名藩、会津藩。
さらに明治期の日清、日露戦争に戊辰戦争の人脈をがみられ、建国にかかわった日本陸軍の歴史が全9巻を予定する『満州国演義』にかかわっていくようだ。
「いまも、君を想う」 川本三郎 2010/5 読む
家内あっての自分だった。七歳下の君が食道癌で逝ってしまうとは。落涙、感泣の追想記。
とめどなく思い出される。手料理の味、おしゃれ、猫好き、旅したところ、他愛もない会話。婚約中、私が会社を辞めざるをえなくなっても「朝日新聞社と結婚するのではありません」と大学生の君は揺るがなかった。連れ添って三十五年、そして三年にわたる苛酷な闘病……。文芸・映画評論でつとに知られる著者の哀惜の随想。(出版社)