非天の笑み

a suraのえみ
  

腕時計の重み

2009年12月24日 | 
腕時計はずせば腕の温みごとすべり落ちたり今日を逃れて





ひと昔ほど前から、腕時計というものを全くしなくなりました。

していたころは、この歌のように、家に帰るとまっさきに時計をはずすのが常でした。

外では感じないのに、不思議と、靴を脱ぐと条件反射のように腕にかかっている重みが気になりはじめるのでした。



腕時計はしなくなったけれど、ブレスレットは好きで色々とよく嵌めます。


そして、腕時計もブレスレットも、よく落としてなくしました。
いつ落としたかもわからないほどするりと。
逃げたのでは?と思われるほど。





たったあれだけの重みがあるだけでリラックスできないかとおもえば
あってもなくてもわからないほど失念していたりもする。



不思議な心理です。



先日、わりと高価なブレスレットをして外出し、帰宅。その瞬間に、本来重く感じるはずの手首が軽いのに気付き、「あちゃ~、また落としたか・・」と
即刻、着替えもせず、心当たりを問い合わせまくりました。


落ちるとしたらこのへんしかない・・と自分の足でも一時間ほども探し回り、結局諦めてとぼとぼと帰ったのでした。


二度目の帰宅をして、さて、とセーターを脱いだら。。。

するりと手首に降りて来た「馴染みある重み」

どうやらセーターの内側の肘のところに引っかかっていたらしいのです。


おのが身につけたまま、「これこれこういうブレスレットの落し物、届いてませんか」などと訊き合わせて回っていたのだわ・・





なくなってもわからないほど、重みなんて何ほどのこともない、というわけでは
ない。らしい。

その逆、、外で一瞬なんだかしれない解放感をふっと感じたら、それは
きっと、時計やらプレスやら落とした瞬間なんではないか、と思う。


それなのに、なんで手もとに集めて、着けたがるんだろう。


何かとの関係に似てるなあ・・。

たとえば・・友人。

たとえば・・子供

たとえば・・恋人

たとえば・・・ペット。



















しゃらんしゃらん

2009年12月18日 | 相聞
相聞歌というのは、なにも男女の恋のやりとり歌だけではなく

たとえば、姉妹や親子 のあいだで取り交わされたものもある。

そこにはたしかに恋愛に劣らぬ濃い情が存在するのだろうけれど、

歌友のあいだで往き来する歌も
相聞と読んでもよいのではなかろうか。

人と人ではなく、歌と歌どうしの 友情。

そんな「返歌」を集めてみたい。


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蓮根の穴を覗いてみやしやんせ空しいあしたしゃらんしゃらん   なおひこ(さん)




あさって穴には日が射してくぐりぬければしゃらんしゃらん手づまの娘は繭になる


これは、みそひとではないけれど

定型詩か童謡ふうに。

この本歌には、このかたちが、いちばん添いそうな気がして。


レトロロマン。



「歌」には性別がないから、歌が歌に惚れても、「恋愛」はないです。笑

「共感」というより やっぱり「共鳴」かな。














SAYURA百人一首 四十三

2009年12月07日 | 百人一首


冬薔薇(そうび)点して雪降る妻の庭かくもやさしき無念もあるを    田中あつ子







                            


なんの手入れもほどこさず、放りっぱなしの小さな庭のすみの薔薇の木に
何おもいけん、いまごろ薔薇の蕾がひとつ。


蕾とはいえ、初々しさもみずみずしさもなく、とても咲き開くとは思われない。葉っぱもいじいじと虫食いだし。


けれど、咲いている。なるべく日向の方に首を伸ばすように。



・・・なんだかなあ。



自己投影してしまうのです。

傍目に見て、とうていひらくとも思えないのに

希望にだけは萌えて、場違い・・とき違いな美しくもない蕾をつけようとするって・・・


これは、もしかしたら称賛ではなく、憐憫の的ではないのか。



しかし、傍目がどうみようとなんら意に介さずただ、ただ咲こうとする

それは意地ではなく、ただ無心。


この無心は薔薇の矜持にふさわしい。





・・・・それ以外に、生き方があろうか。




さて、挙げたお歌ですが。

この歌人さんの経歴と照らし合わせますと、意に染まぬ結婚生活を詠ったもののようです。


この冬薔薇は純白の雪に滴る血のようにみずみずと鮮やかです。

「無念」の一語がしたたかに。

あ、当然、離婚なさいまして、花のバツ一として、名を変え、私の好きなたくさんのお歌を詠まれました。