東京さまよい記

東京をあちこち彷徨う日々を、読書によるこころの彷徨いとともにつづります

茗荷坂

2011年04月04日 | 坂道

茗荷坂付近の地図 茗荷坂手前 深光寺前 深光寺 左の写真は、茗荷谷駅の近くに立っている地図であるが、これまで巡った釈迦坂・蛙坂・藤坂、これから向かう茗荷坂の各位置がよくわかる。右上端に庚申坂ではない切支丹坂が示されている。

藤坂下を右折し、地下鉄のガード下に入りここを通り抜ける。このあたりを右折し別のガード下を通ると、釈迦坂方面で、左折すると、蛙坂方面である。直進し西へと進む。左から二番目の写真は、その途中の道であるが、このあたりが茗荷谷であろう。江戸切絵図を見ると、このあたりの南側に小日向茗荷谷町がある。

正面突き当たりに拓殖大学があり、右手に右の写真のように深光寺がある。ここには滝沢馬琴の墓があり、寺の中に下左の写真のように、その説明板が立っている。

滝沢馬琴墓説明板 茗荷坂下 茗荷坂下 茗荷坂下 深光寺の前のあたりが茗荷坂の坂下であろう。深光寺を右に、拓殖大学を見て進むが、すぐ右に説明板が立っている。緩やかに右に曲がりながらかなり緩やかに上る坂である。説明板には次のようにある。

「茗荷坂(みょうがざか)
 茗荷坂は、茗荷谷より小日向の台へのぼる坂なり云々。」と改撰江戸志にはある。これによると拓殖大学正門前から南西に上る坂をさすことになるが、今日では地下鉄茗荷谷駅方面へ上る坂をもいっている。
 茗荷谷をはさんでのことであるので両者とも共通して理解してよいであろう。
 さて、茗荷谷の地名については御府内備考に「・・・・・・むかし、この所へ多く茗荷を作りしゆえの名なり云々。」とある。
 自然景観と生活環境にちなんだ坂名の一つといえよう。
 文京区 昭和51年3月」

 (茗荷谷の地名の由来については、以前の記事でも紹介した。)

茗荷坂中腹 茗荷坂中腹 茗荷坂中腹 上記の説明にあるように、『改撰江戸志』は、大学正門前から南西に上る坂を茗荷坂とするようであるが、その全文が『御府内備考』の小日向の総説に次のようにある。

 「茗荷坂は茗荷谷より小日向の臺(台)へのぼる坂なり、左の方は戸田家の下屋敷なり、」

尾張屋板江戸切絵図を見ると、傳明寺(藤寺)から西へ向かって進むと、右手に深光寺があり、その先で北へ大きく曲がり、その隣に林泉寺がある。この深光寺から先が現在、茗荷坂とされる道筋である。近江屋板も同様であるが坂マークはない。林泉寺の道を挟んで向かい側に戸田淡路守の広い屋敷がある。

一方、深光寺の先を左折し、南西へ向かう道があり、近江屋板に坂マーク△があるが、ここが上記の説明板がいう南西に上る坂と思われる。しかし、この坂は「左の方は戸田家の下屋敷なり」の説明とあわない。「上る坂」と説明してから、「左の方は」とすれば、坂の上りに向かって左の方とするのが自然と思われるが、切絵図ではこの坂の右側が戸田家の屋敷で、「左の方」ではないからである。

林泉寺前 しばられ地蔵 茗荷坂林泉寺前 林泉寺向かいの坂 横関は、茗荷坂を、文京区小日向三丁目拓殖大学と小日向四丁目深光寺との間を北へ地下鉄茗荷谷駅のほうへ上る坂、としている。石川も岡崎も同様である。岡崎は、坂下近くを右に入り大学横の塀に沿う坂を無名坂として紹介しているが、これが上記の南西に上る坂である。今回は、この坂に行けなかったが、次回以降の課題である。

やがて林泉寺前に至るが、ここは、縛られ(しばられ)地蔵で知られているところらしい。階段わきに説明板が立っている。切絵図に、林泉寺 シバラレ地蔵、とある。同じく切絵図には、林泉寺の門前から西へ上る坂があり、近江屋板に坂マーク△があるが、この坂は、上りに向かって左の方に戸田屋敷がある。坂上も小日向の台地といえそうであるから、ここが上記の『改撰江戸志』でいう茗荷坂であるともいえそうな気がするがどうであろうか。

林泉寺前まで来たとき、左に続く上り坂があり、ここが茗荷坂の先と勘違いしたが、この坂が上記の林泉寺の門前から西へ上る坂で、右の写真は、この坂を寺の階段上から撮ったものである。坂上側で右に曲がりすぐに左に曲がってクランク状になっているが、切絵図もそうなっている。坂上の先は、上の地図のように、小日向三丁目と大塚一丁目の間へ延びている。

茗荷坂上側 茗荷坂上側 茗荷坂上側 茗荷坂上側 林泉寺前から坂道は急に狭くなって小路のような雰囲気となる。かなり暗くなってきて、飲み屋などに灯りがともっている。これまでと同じようにかなり緩やかな上り坂を上るとやがて茗荷谷駅である。

携帯による総歩行距離は13.6km。

参考文献
横関英一「江戸の坂 東京の坂(全)」(ちくま学芸文庫)
山野勝「江戸の坂 東京・歴史散歩ガイド」(朝日新聞社)
岡崎清記「今昔 東京の坂」(日本交通公社)
石川悌二「江戸東京坂道辞典」(新人物往来社)
市古夏生 鈴木健一 編「江戸切絵図 新訂 江戸名所図会 別巻1」(ちくま学芸文庫)
「嘉永・慶応 江戸切絵図(尾張屋清七板)」(人文社)

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