車内には空席がひとつ。乗るが早いかそこを目指して一目散。だけど向こうから
初老の男性がキャリーケースを牽きながらゆっくり座席に近づいて行く。
やばい。タッチの差で男性がゲットするだろう、と諦めかけたとき、
手前で立ち止まり吊り輪に手をかけた。重い荷物と足が痛かった夏木は二足、
三足進んで腰かける。
ほ~っと一息してそっと男性を伺うと何事もなかったように車窓から遠くを見ている。
彼もきっと疲れている。
嬉しいですね、こんなさりげない親切。きちんと手入れされた銀髪が素敵!
自意識過剰かも?でも自分が満たされていく。
待ち人来らず、いや遅れたる。そわそわ、イライラし始めたころ犬の散歩らしき老婦人が
「どちらへ?」と話しかけてくる。どうやら道に迷ってこまっているとでも思ったらしい。
苦笑まじりに首を振ると連れていたワンちゃんが足元にまとわりついた。婦人が謝りながら
慌てて引き離そうとする。それを制しながら「この仔は抱いても大丈夫ですか」と問うと
「喜びますが、服が…」とおっしゃる。
構わず抱き上げると真っ黒い瞳がくるくるして愛らしい。腕に抱きながら婦人とおしゃべり。
ワンちゃんはおとなしく抱かれている。友人が近づいてくる。ワンちゃんを下し、
婦人にお礼を言って友人と合流した。
友人は遅刻の言い訳と犬が持つ?ウイルスについての講釈をたれる。「それは根拠のない
偏見よ!人間だって無菌というわけじゃないでしょ!」と返す言葉を呑み込み、
ワンちゃんと婦人がくれた至福の時間を反芻する。
ふっふっふ、ふふふふふ!なんだか心楽しい。
~~~夏木 友~~~
火・木・土に更新しま~す
初老の男性がキャリーケースを牽きながらゆっくり座席に近づいて行く。
やばい。タッチの差で男性がゲットするだろう、と諦めかけたとき、
手前で立ち止まり吊り輪に手をかけた。重い荷物と足が痛かった夏木は二足、
三足進んで腰かける。
ほ~っと一息してそっと男性を伺うと何事もなかったように車窓から遠くを見ている。
彼もきっと疲れている。
嬉しいですね、こんなさりげない親切。きちんと手入れされた銀髪が素敵!
自意識過剰かも?でも自分が満たされていく。
待ち人来らず、いや遅れたる。そわそわ、イライラし始めたころ犬の散歩らしき老婦人が
「どちらへ?」と話しかけてくる。どうやら道に迷ってこまっているとでも思ったらしい。
苦笑まじりに首を振ると連れていたワンちゃんが足元にまとわりついた。婦人が謝りながら
慌てて引き離そうとする。それを制しながら「この仔は抱いても大丈夫ですか」と問うと
「喜びますが、服が…」とおっしゃる。
構わず抱き上げると真っ黒い瞳がくるくるして愛らしい。腕に抱きながら婦人とおしゃべり。
ワンちゃんはおとなしく抱かれている。友人が近づいてくる。ワンちゃんを下し、
婦人にお礼を言って友人と合流した。
友人は遅刻の言い訳と犬が持つ?ウイルスについての講釈をたれる。「それは根拠のない
偏見よ!人間だって無菌というわけじゃないでしょ!」と返す言葉を呑み込み、
ワンちゃんと婦人がくれた至福の時間を反芻する。
ふっふっふ、ふふふふふ!なんだか心楽しい。
~~~夏木 友~~~
火・木・土に更新しま~す