ぼくらのありのまま記

ぼくらは
こんな大人になりました。

鈴木創 小笠原自然文化研究所の仕事

2014-04-07 11:00:44 | ぼくらのありのまま記
第6話 ミズナギドリがやってきた!


都会には悪い奴、だますやつが沢山いる
から気をつけろ。眠らない街、東京には
悪魔が住んでる。悪魔と取引すのるのか、
おまえ。でもあいつ魅惑的なんだよ、、。

すみません、よくわからない説明で。
巣立つミズナギドリの気持ちになって
いました。今日もよろしくお願いします。

目次はこちらから。



鈴木
保護っていうと「助けましょう」っていう
気持ちの問題だと思われがちだけど。
技術や生活をどう変えるか、ということが
大切だって具体的に見えたことがあって。


たら
具体的な暮らし方が見えてきたの?

鈴木
うん。例えば村の街灯なんだけど。
僕が一番最初にきた97年が、一番
明るかった。水銀灯の電灯があちこちに
あって、その白いライトにめがけて
ぶつかったり不時着する鳥が多かったの。




たら
そういうのはどう知ったの?

鈴木
支庁の時に鳥が落ちてると電話がきて
保護しに行ってた。それを地図に書き
出して印つけて行ったんだよね。
そうすると、事故る場所が重なることが
見えて来て。明かりがある場所だな、
交差点がある場所だなとか見えて
来ちゃったわけ。


たら
へぇ~。

鈴木
一緒に音楽やってたサーファー連中にさ
「あのー、やめたほうがいいよ助けるの、
自然は自然のままのほうがいいよ」って。



たら
うん。

鈴木
それってなにかすごい説得力あるじゃない。

たら
サーファーって自然な生き方選んでるぜ!
っていう感じだもんね。波乗って自然と
ひとつになってるぜ。っていう感じする。

鈴木
そう言われて。俺も「自然のままのほうが
いいよなぁ」って悩んじゃって。今もその
葛藤の繰り返しなんだけど。


たら
うん。

鈴木
でも、地図に落として行くと「これ、自然
じゃねーよな」とも思うんだよ。保護した
鳥を観察すると、なんらかの人間との
トラブルに巻き込まれている。





たら
うん。

鈴木
無人島に行ったら、不時着はトラブルに
ならない。同時期に別件で無人島の調査に
入って、ライトアップしてたら200羽
くらい鳥が降りて来ちゃって。


たら
そんな来るんだ。

鈴木
でもその時は朝になったらそれぞれ浜に
行って、勝手に飛び立っていなくなった。


たら
うん。

鈴木
あいつら、翼が長いから海の上で
羽ばたくか、風が強い所じゃないと
飛び立てないのね。


たら
コンクリートの上じゃ羽ばたけないんだ。

鈴木
その後父島は、水銀灯からナトリウム灯に
変ったのね、オレンジ色の。それで
ミズナギドリの事故はすごく減って。



(2004年発行のハンドブック。この頃は
不時着はまれ。となっています。)

たら
そういうアイディアや技術が必要なんだ。

鈴木
ハートロックの竹ちゃんも相談に乗って
くれてて。クリスマスのイルミネーション
あるでしょ。




たら
イルカかわいいね。

鈴木
ミズナギドリっていうのがさ、南島とかで
真夏に卵を産んで、一羽の親鳥から一羽の
ヒナしか巣立たない。半年かけてようやく
その子ども達が大きくなり、12月に
巣立つのね。巣立ったら、明かりを頼りに
飛ぶんだよね。


たら
うん

鈴木
ここ4~5年で、島のクリスマス
イルミネーションが増えて明るく
なっちゃって。父島に不時着して車に
轢かれたりネコにやられたりっていうのが
ぶりかえして。




たら
うん。

鈴木
あいつら半年かけて育てた子どもを置いて
いくんだよね。飛び方も教えずに。ある日
突然ごはんが来なくなり、腹減って
堪らなくて、ばたばたやって飛び立つ。


たら
へー。

鈴木
時々島に不時着するんだけど、それは
ちょっとした休憩なの。若者がちょっくら
バックパッカーでもしようか、って旅行
するような感覚かな。無人島なら死に
結びつく話じゃなくて。


たら
それが父島だと飛び立てる場所がない。



鈴木
うん。で、その話とイルミネーションを
なるべく灯さないで!っていう話をどう
着地させようかって思ってるときに。


たら
うん。ルールにしちゃうかどうか。

鈴木
それが人間のささやかな楽しみの
クリスマスを奪うって話しにもなる。で、
そういう話しを竹ちゃんに相談したら。
じゃあさ、「小笠原のクリスマスは
ミズナギドリが運んでくる」っていう
ストーリーにしちゃえば?って



(クリスマスフラ!)

たら
うん。

鈴木
「巣立ち期が12月半ばまでだから、
ミズナギドリが巣立ったから、うちらの
クリスマスもきたよ」っていうストーリー
はどう?って。それならこっちも話する
のも楽しくて。


たら
楽しいね。

鈴木
「ご協力ありがとうございました。」って
ミズナギドリがサンタの格好したキャラも
つくって。チラシ配った。まだ何件か
なんだけど。このイルカの大きい電飾も
村が協力してくれて。


たら
守るっていうより
一緒に生きてるっていう雰囲気がするね。

鈴木
ミズナギドリも島っ子なわけじゃん。
せっかく半年生き抜いて、ようやく
旅立つの。どこかの島に不時着って
子どもの冒険の一ページなのに。それを
人の生活で事故らせてるっていうのは、
どうにか伝えたいとって思ってる。





たら
うん、うちらのころはそういうこと
教えてくれる人いなかったなー。

鈴木
あいつらも生きながらえたら、また島に
子どもを産みに戻ってくるんだよ。



今日はここまで、
読んでくれてありがとうございます。

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arinomamaki@gmail.com
今井たら竜介

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(写真引用「小笠原ハンドブック‘歴史、文化、海の生物、陸の生物’」
(ダニエル・ロング/稲葉慎 編著 南方新社)


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